米国シューズ76社がトランプ氏に関税除外要請 ナイキなど参加
米国のシューズメーカー76社が、トランプ米大統領に対し、新たな報復関税から靴を除外するよう求める書簡を送りました。すでに高い関税がかかる「靴」に、さらに負担が上乗せされれば、企業だけでなく消費者の家計も直撃しかねないためです。
76社が連名でトランプ氏に要請 ナイキ、アディダス、スケッチャーズも
米国の業界団体「フットウェア・ディストリビューターズ&リテーラーズ・オブ・アメリカ(FDRA)」は、2025年4月29日付の書簡で、トランプ米大統領に対し、靴を報復関税の対象から外すよう求めました。
この書簡には、次のような有力ブランドを含む76のフットウェア企業が署名しています。
- ナイキ(Nike)
- アディダス・アメリカ(Adidas America)
- スケッチャーズ(Skechers)
- デッカーズ・ブランズ(Deckers Brands)
- カプリ・ホールディングス(Capri Holdings)
- アンダーアーマー(Under Armour)
- VFコープ(VF Corp.)
FDRAは、トランプ氏が打ち出した「相互関税(報復関税)」のうち、靴を対象外とするよう強く訴えています。
すでに高い靴の関税 子ども靴は最大37%超
FDRAは書簡の中で、靴産業がもともと高い関税負担を抱えていると指摘しています。とくに子ども用の靴には、少なくとも20%、場合によっては37%を超える関税がすでに課されています。今回の新たな関税は、その上にさらにコストを積み増す形になります。
トランプ氏は主要な貿易相手国からの幅広い品目に対して関税を導入し、米国内では輸入品の価格上昇が懸念されています。4月初めには、中国(中国)からの輸入品に対し、最大145%という非常に高い関税を含む大規模な関税措置も打ち出しました。
書簡は、こうした追加関税が靴にまで広がれば、最終的には米国の消費者が価格上昇という形で負担を迫られると警告しています。
「存在そのものの脅威」 業界の危機感
FDRAの書簡は、米国の靴産業が直面するリスクを、かなり強い言葉で表現しています。
「米国のフットウェア産業の性質を踏まえると、これほど大幅なコスト増は、米国の靴ビジネスと家庭にとって『存在そのものへの脅威』となります。数百社におよぶ企業が、事業閉鎖の可能性に直面しています。」
靴産業は、原材料や製造の多くを海外に依存しており、関税引き上げの影響を受けやすい構造にあります。企業側は、仕入れ価格の急上昇をすべて吸収することは難しく、その一部は販売価格の上昇という形で、消費者に転嫁せざるをえない状況になりかねません。
アディダスとスケッチャーズ 業績見通しで慎重姿勢
関税をめぐる不透明感は、実際の企業行動にも表れています。アディダスは、好調な第1四半期決算を発表したものの、2025年通期の業績見通しの上方修正を「見送る」判断をしました。その理由として、米国の輸入関税をめぐる先行きの不確実性を挙げています。
同じくシューズ大手のスケッチャーズも、年間の業績予想そのものを取り下げました。スケッチャーズはその背景として、トランプ政権の予測しにくい貿易政策への懸念を示しています。
企業にとっては、関税の水準や対象品目が読めない状態が続くほど、投資や生産体制の計画が立てにくくなります。今回の書簡は、そうした「先が見えない状況」への危機感の表明でもあります。
求めるのは「戦略物資のみ」への的を絞った関税
FDRAの書簡は、全面的な関税引き上げではなく、「より的を絞ったアプローチ」を採用するようトランプ氏に求めています。
「基本的な消費財ではなく、戦略的な品目に焦点を当てた、よりターゲットを絞ったアプローチを取るべきです。」
ここでいう「基本的な消費財」には、靴のように日常生活に欠かせない製品が含まれます。FDRAは、安全保障などと直結する戦略物資と、一般家庭が日常的に購入する生活必需品を、関税政策のなかで分けて考えるべきだと訴えています。
日本の読者が押さえておきたい3つのポイント
今回の米国フットウェア業界の動きは、日本やアジアのビジネス・消費者にとっても、他人事ではありません。押さえておきたい論点は次の3つです。
- 1. 関税は最終的に「価格」として表れる可能性が高い
企業はコスト増の一部を消費者価格に転嫁せざるをえないため、関税は消費者の購買力に影響します。 - 2. 貿易政策の不透明さは、企業の戦略を揺さぶる
アディダスやスケッチャーズのように、業績見通しそのものが立てにくくなり、投資や雇用の判断も慎重になりがちです。 - 3. グローバルブランドの動きは、日本の店頭やオンライン価格にも波及しうる
世界で共通するブランドの商品は、主要市場でのコスト変化が、他の地域の価格や供給にも影響を与える可能性があります。
今回の書簡は、1つの業界団体による要請にすぎませんが、「関税」という政策手段が、企業の経営判断から私たちの日々の買い物まで、どのように波及しうるかを考える材料を提供してくれます。国境を越えて展開するビジネスが当たり前になった今、米国の関税政策は、日本を含む世界の消費と企業活動に、静かに影を落としていると言えます。
Reference(s):
cgtn.com








