イスラエルがシリア南部に部隊派遣 今年最大規模空爆に国際的非難
イスラエル軍がシリア各地に今年最大規模とされる空爆を行い、続いて南部のドルーズ系住民が多い地域に部隊を派遣しました。安全保障と主権、人道支援をめぐる緊張が一気に高まっています。
イスラエルが南部シリアに部隊派遣 ドルーズ地域の保護を強調
イスラエル軍は土曜日、シリア南部に部隊を展開したと発表しました。目的は、ドルーズ系住民が多数を占める地域に敵対勢力が入るのを防ぐことだと説明しており、直前に行われた大規模空爆とあわせて、現地の緊張は急速に高まっています。
イスラエル国防軍によると、今回の展開は「地域のあらゆる脅威を排除する」という方針の一環で、今後もイスラエルの安全保障を守るための作戦を継続するとしています。
金曜夜に大規模空爆 6州20カ所以上を攻撃
イスラエル軍は現地時間の金曜夜、シリア各地の少なくとも6つの州で20カ所以上を一斉に攻撃する空爆作戦を実施しました。関係者の間では、今年シリアで行われた空爆の中で最大規模だと受け止められています。
イスラエル国防軍は、12機の戦闘機が作戦に参加し、防空砲や地対空ミサイル発射装置など、イスラエルにとって脅威となりうる軍事インフラを標的にしたと説明しました。同軍は、地域の「いかなる脅威も排除する」と強調し、安全保障を最優先する姿勢を示しています。
シリア人権監視団は、今回の空爆が今年に入って最も激しい攻撃だと評価し、ダマスカス郊外のカシウン山やバルゼ、ハラスタなどが標的となったと伝えています。同団体によれば負傷者は数十人に上るものの、死傷者の全容はまだ明らかになっていません。
ドルーズ系住民の州に支援物資と負傷者搬送
一方で、イスラエル空軍のヘリコプターは、シリア南部のドルーズ系住民が多いスウェイダ県に支援物資を届けたとされています。イスラエルの公共放送カンによると、この支援はイスラエルの政治指導部が承認したもので、ここ数日で15人のドルーズ系シリア人が負傷治療のためイスラエルに搬送されたといいます。
イスラエル政府は、スウェイダで政府寄り勢力との激しい衝突が起き、100人以上が死亡したとされる中で、ドルーズ社会からの要請を受けて支援に踏み切ったと主張しています。
しかし、レバノンの著名なドルーズ指導者ワリード・ジュンブラット氏は、このような動きを「シリアの内政へのイスラエルの干渉」として退けるよう呼びかけました。ベイルートでドルーズの関係者と会談したあと、ジュンブラット氏は「シリアのドルーズの兄弟たちを守ることは、イスラエルの干渉を拒否することを意味する」と述べ、コミュニティが外部勢力に依存することへの懸念を示しました。
同じドルーズ系住民の安全をめぐっても、イスラエルは保護と支援を強調し、周辺の指導者は介入とみなすという、視点の違いが浮き彫りになっています。
国連・アラブ諸国が一斉に非難
今回の空爆については、国際機関やアラブ諸国から非難の声が相次いでいます。国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、とくにダマスカスの大統領宮殿周辺への攻撃を問題視し、イスラエルに対しシリアの主権や領土一体性、独立を尊重するよう強く求めました。報道官のステファン・ドゥジャリック氏は「攻撃を直ちに停止し、シリアの主権、統一、領土保全、独立を尊重することが不可欠だ」と述べています。
シリア問題を担当する国連特使ゲール・ペデルセン氏も、イスラエルによる攻撃を直ちにやめるよう呼びかけ、事態の緊迫化に懸念を示しました。
サウジアラビアは金曜日、ダマスカスの大統領宮殿周辺を標的とした空爆を非難し、シリアの主権と安全、安定を損なうイスラエルの攻撃を断固として拒否するとの立場を改めて表明しました。
アラブ連盟も今回の空爆を強く批判し、国際社会と国連に対し、イスラエルがシリア国家に対して繰り返しているとされる違反行為に立ち向かうよう求めました。
イラク外務省も、イスラエルの行動を「断固として拒否する」と表明し、こうした攻撃はシリアの安全と安定を脅かすものだと強調しました。
イラン外務省のエスマイル・バガイー報道官は、今回の空爆を「最も強い言葉で」非難し、イスラエルがシリアの防衛・経済・インフラ能力を破壊しようとしており、より広い地域的野心を追求していると非難しました。また、国際社会に対し、イスラエルの「侵略」を止めるために「即時かつ効果的な行動」を取るよう呼びかけています。
主権と安全保障、人道支援のはざまで
イスラエルは今回の作戦について、自国の安全保障を守るために地域の脅威を排除し、ドルーズ系住民の保護にも応じていると説明しています。一方で、国連やアラブ諸国、多くの地域の関係者は、シリアの主権と領土一体性が損なわれていると警鐘を鳴らしています。
軍事行動が「脅威の除去」と「人道支援」という名目で語られるとき、それがどこまで認められるのか。国家主権と、特定のコミュニティの安全、そして国際法のあいだで、優先順位をどう考えるのかが改めて問われています。
今回のケースでは、空爆の規模が大きいことに加え、特定の宗派コミュニティへの支援と介入が重なっている点が、議論を一段と複雑にしています。表向きの説明だけでなく、当事者や周辺国の思惑、住民の安全や人道状況など、多層的に見ていく必要がありそうです。
注目したい3つのポイント
ニュースを追ううえで、特に押さえておきたいポイントを3つに整理しました。
- イスラエルは自国の安全保障とドルーズ系住民の保護を前面に出しているのに対し、国連やアラブ諸国はシリアの主権侵害を強く批判していること。
- ドルーズ系住民への支援や負傷者搬送が、人道支援として評価される一方で、内政干渉との受け止めもあり、宗派対立をさらに複雑にしている可能性があること。
- 空爆の規模が今年最大級とされ、今後の報復や連鎖的な衝突により、地域全体の緊張が一段と高まるリスクがあること。
中東情勢は一つの事件が連鎖的に波及しやすく、今回の空爆と部隊派遣も、その一コマにすぎない可能性があります。情報が限られる中でも、誰が何を根拠にどのような主張をしているのか、丁寧に見比べていくことが求められています。
Reference(s):
Israel sends forces to southern Syria as airstrikes draw outrage
cgtn.com








