インドとパキスタンがカシミールで再衝突 パハルガム襲撃と紛争の背景
インドとパキスタンが、カシミールの停戦ラインを挟んで再び砲撃や空爆の応酬を続けています。2025年4月にインド側が実効支配するカシミールで起きたパハルガム襲撃をきっかけに高まった緊張は、長年くすぶってきたカシミール紛争の根深さを改めて浮き彫りにしています。
パハルガム襲撃後に何が起きたのか
2025年4月22日、インド側が実効支配するカシミールの観光地パハルガムで襲撃事件が発生し、26人の民間人が死亡しました。観光客が多数巻き込まれたこの事件は、インド支配地域のカシミールで「過去数十年で最悪の観光客への攻撃」とも形容されています。
この襲撃の数日後から、インドとパキスタンはカシミールを分断する停戦ライン、いわゆる管理ライン(Line of Control、LoC)を挟み、砲撃や銃撃を交わす事態に発展しました。双方が相手側の攻撃に応戦したと主張し、緊張が一気に高まっています。
インド政府は、その後の水曜日に、パキスタン側が実効支配するカシミールにあるとする9カ所の「テロリスト訓練キャンプ」を標的とした空爆を実施したと発表しました。インドのナレンドラ・モディ首相が、これらの空爆作戦を直接モニタリングしたとされています。
一方、パキスタン軍は、インドによるミサイル攻撃がパキスタン側カシミールの複数の地点を直撃し、少なくとも民間人8人(子ども1人を含む)が死亡、35人が負傷し、2人が行方不明になっていると発表しました。軍事的な応酬が、一般の住民に深刻な被害をもたらしていることがうかがえます。
カシミール紛争の原点にあるもの
今回の衝突の背景には、インドとパキスタンの関係を75年以上にわたり規定してきたカシミール問題があります。ヒマラヤの山々に囲まれたこの美しい谷は、少なくとも2度の大きな戦争と、数え切れないほどの武力衝突の火種となってきました。
現在、インドとパキスタンはそれぞれカシミールの一部を実効支配しています。どのような形でカシミールの帰属を整理し、住民の意思をどのように位置づけるのかという問題は、両国の関係にとって最も敏感で核心的な争点の一つです。
植民地支配の「負の遺産」としてのカシミール
インドとパキスタンは、長い期間にわたるイギリスの植民地支配という共通の歴史を持ちます。第2次世界大戦後、南アジアのサブコンチネント(亜大陸)が独立を迎えた際、イギリスは分割された地域を残しました。この分割のあり方こそが、その後の混乱と暴力の根本原因となったと指摘されています。
1947年、インドとパキスタンは独立直後にカシミールをめぐって最初の戦争を戦いました。この戦争は、国連の仲介による停戦で終結し、両国が実効支配する地域を分ける線が引かれました。
シムラ協定と管理ライン(LoC)の成立
その後、1972年7月にインドとパキスタンはシムラ協定を締結します。この協定により、現在の管理ライン(LoC)が定められ、両国は紛争を平和的な手段によって解決する方針を確認しました。シムラ協定は、それ以降の印パ関係の「基盤」とされてきました。
もっとも、協定の精神とは裏腹に、カシミールをめぐる対立は収束していません。管理ライン周辺では断続的に銃撃戦や砲撃が起き、そのたびにインドとパキスタンは互いに「相手が停戦に違反した」と非難し合ってきました。
「緊張緩和」と「散発的な衝突」が同居する現状
近年、カシミール地域の全体的な安全保障環境は、以前と比べれば幾分落ち着いてきたとも言われます。しかし、今回のような衝突からわかるように、緊張が再び高まる引き金は常に存在しています。
- 観光地パハルガムでの民間人襲撃
- LoCを挟んだ砲撃や銃撃の応酬
- パキスタン側カシミールへの空爆とミサイル攻撃
- 双方が相手の「停戦違反」を主張
こうした要素が重なることで、限定的な軍事衝突が一気にエスカレートし、より広範な危機につながるリスクが常に意識されています。
長期化する紛争が住民の生活にもたらしたもの
数十年に及ぶ流血の武力衝突と領土をめぐる対立の中で、カシミールの人びとの生活は大きな打撃を受け続けてきました。今回の一連の事件からも、その一端が見えてきます。
- パハルガム襲撃では、観光地を訪れていた民間人26人が死亡
- パキスタン軍の発表によれば、パキスタン側カシミールへの攻撃で8人の民間人が死亡、35人が負傷、2人が行方不明
観光地での攻撃は、地元経済の柱である観光業にも深刻な影響を与えます。観光客が足を遠のければ、ホテルや飲食店、ガイドなど、地域の多くの仕事が一気に不安定になります。また、LoC周辺の村や町では、砲撃や銃撃のたびに避難を強いられる生活が続き、子どもたちの教育や住民の健康にも長期的な影響が及びます。
対立の連鎖をどう断ち切るのか
シムラ協定は、インドとパキスタンが「平和的手段を通じて問題を解決する」と誓約した文書です。しかし現実には、政治的緊張が高まるたびに、軍事的な示威行動や報復が優先されてきました。
今回のパハルガム襲撃とその後の空爆・砲撃は、次のような問いを投げかけています。
- テロや襲撃への対応が、軍事一辺倒になっていないか
- 住民の安全と尊厳を中心に置いた対話の枠組みは作れるのか
- 過去の合意や協定を、どこまで実効性のある形で生かせるのか
インドとパキスタンの対立は、南アジア全体の安定と発展にも影響を与えます。同時に、その帰結を最も直接的に引き受けるのは、国境を挟んで暮らすカシミールの人びとです。
遠く離れた日本でニュースとしてこの地域を眺める私たちにとっても、カシミールをめぐる歴史と現在進行形の現実に目を向けることは、国際ニュースを「どこか遠い出来事」としてではなく、自分の視野を広げるきっかけとして捉え直すことにつながります。今回の衝突の行方とあわせて、長期的な和平の道筋がどのように描かれうるのか、注視していく必要がありそうです。
Reference(s):
cgtn.com








