CNNザカリア氏「米中デカップリングで米国は貧しくなる」警告の中身
米中関係の緊張が続くなか、CNNアンカーで外交評論家のファリード・ザカリア氏が、米中の経済デカップリング(意図的な分断)が米国を貧しくしかねないと警告しました。米国の国内総生産(GDP)が1.4%押し下げられるとの試算も示され、米中関係をめぐる国際ニュースとして注目されています。
本記事では、ワシントン・ポストへの論説でザカリア氏が示した論点を日本語で整理し、2025年の世界経済を考える手がかりとして紹介します。
この記事のポイント
- 米中経済のデカップリングで、米国のGDPが1.4%低下する可能性
- 関税や技術規制は、インフレや生産性低下など二次的な悪影響も招きうる
- 中国の技術制限が、逆に中国のイノベーションを加速させる可能性があるという指摘
- 米中緊張の「コスト」をどう受け止めるかが、2025年の重要な論点に
ザカリア氏が示した「1.4%のGDP損失」
ザカリア氏は、ワシントン・ポストに最近寄稿した論説で、世界の二大経済である米国と中国の緊張は、トランプ政権の関税政策をきっかけに高まってきたと振り返ります。そして、二つの経済を切り離す米中デカップリングが進めば、米国は確実に貧しくなると警告しました。
論説の中で同氏は、調査会社オックスフォード・エコノミクスの分析を引用し、米中経済が分断された場合、米国のGDPはおよそ1.4%押し下げられる可能性があると紹介しています。これは、毎年失われる富が数千億ドル(数十兆円規模)に達しうることを意味します。
ザカリア氏は、こうした損失額について、米国にとっては決して小さくない犠牲であり、米中対立の「価格」を直視すべきだと強調しています。
数字に見えない「二次被害」も
さらにザカリア氏は、問題はGDPの数字だけではないと指摘します。米中デカップリングが進めば、次のような二次的な影響が広がる可能性があるといいます。
- インフレ(物価上昇)の圧力
- 企業の生産性低下
- 新たなビジネス機会を逃す「機会費用」
単に貿易量が減るだけでなく、サプライチェーン(供給網)の再編やコスト上昇を通じて、家計や企業の負担がじわじわと増す構図です。ザカリア氏は、こうした見えにくいコストを含めて考えると、米中経済の分断は想像以上に高くつきかねないと問題提起しています。
関税から半導体へ、広がる米中緊張
論説によれば、現在の米中緊張は、トランプ政権の関税政策によって加速しました。その後、対立は貿易の枠を超え、先端半導体などのハイテク分野における輸出制限や投資規制など、技術をめぐる競争へと広がっています。
2025年5月には、米オハイオ州の鉄道ターミナルで、コンテナが列車やトラックに次々と積み込まれる様子が撮影されています。こうした物流の光景は、米国と中国を含む世界のサプライチェーンが、今も物理的には密接に結びついていることを象徴しています。
その一方で、政策レベルでは、経済や技術の分断を志向する動きが強まっているというギャップが存在します。ザカリア氏は、このギャップにこそ、米中関係の難しさと将来のリスクが表れていると見ています。
技術制限は中国を「加速」させるのか
ザカリア氏が特に踏み込んだのは、中国の技術発展を制限する試みについてです。なかでも、高性能の半導体チップなどハイエンド技術の輸出や供給を制限する動きに注目しています。
一般的には、こうした技術制限は、中国の高度な産業発展を抑え込む狙いを持つと理解されています。しかしザカリア氏は、ここに逆説的な可能性があると指摘します。それは、技術や部品の供給が絞られることで、中国側が海外への依存から脱却し、自前の技術開発を急ぐ強い動機を与えられてしまうのではないか、という見方です。
その結果、中国が最新技術を素早く取り入れて追いつく「ファスト・フォロワー」として、むしろ規制がなかった場合よりも強い立場に立つ可能性すらあるのではないか──。ザカリア氏は、こうしたシナリオが全くの空想と言い切れるのか、問い直すべきだとしています。
氏は、ワシントンが導入してきた高価で複雑な技術規制や制限措置が、本当に米国にとってプラスになっているのか、それとも意図せず中国のイノベーションを促しているのかという、不都合だが避けて通れない問いを投げかけています。
2025年の私たちへの問い:対立の「コスト」をどう見るか
米中関係をめぐる今回の議論は、米国と中国という二つの大国だけの問題にとどまりません。両国の経済と技術が世界と深く結びついている以上、その緊張は、他の国や地域の投資、サプライチェーン、物価動向にも影響し、私たちの日常生活にも間接的に波及しうるテーマです。
ザカリア氏の論説は、次のような問いを読者に投げかけているとも言えます。
- 安全保障や価値観を守るために、どこまで経済コストを許容できるのか
- 技術規制は、本当に相手の技術発展を抑え込むことにつながるのか
- デカップリング(分断)と、リスク分散や供給網の多様化との線引きをどう考えるべきか
米中緊張が今後どのように展開していくかは、2025年12月の時点でも不透明です。しかし、対立には必ず「価格」が伴うという視点を持つことは、各国の政策を読み解き、自分なりの判断軸を持つうえで重要になってきます。
感情的な対立や単純な勝ち負けの図式だけではなく、どの選択がどの程度のコストとリスクを伴うのかを冷静に見極めること。その必要性を、ザカリア氏の警告は静かに突きつけています。
Reference(s):
CNN's Zakaria warns U.S.-China tensions could 'make U.S. poorer'
cgtn.com







