米元高官がトランプ政権の対中国AI規制を批判 協調路線を提唱
米国の元高官が、トランプ政権による対中国テクノロジー規制、とくに人工知能(AI)分野を狙った半導体輸出規制を厳しく批判しました。規制強化は米国の優位を守るどころか、中国のイノベーションを加速させ、世界のサプライチェーン(供給網)を揺さぶるリスクがあると警鐘を鳴らしています。
トランプ政権のチップ規制に元高官が異議
発言したのは、東アジア・太平洋担当の米国務次官補を務めたスーザン・ソーントン氏です。ソーントン氏は、米商務省が発表した最新の半導体や関連技術の輸出規制強化を受けて、自身の懸念を示しました。
トランプ政権は、こうした世界的なチップ輸出規制を、米国がAI分野で先頭に立ち続けるための施策だと位置づけています。しかしソーントン氏は、この説明に真っ向から疑問を投げかけています。
- 規制は中国の技術発展を止めていない
- むしろ中国のイノベーション・システムを刺激している
- 結果として研究開発が複数の分野で加速している
ソーントン氏は、その勢いの一例として DeepSeek の名を挙げ、中国側のAI分野での前進が続いていると指摘しました。
規制は中国を止めず、中国のAIを加速させている
ソーントン氏によれば、トランプ政権の対中国規制は、狙いとは逆の効果を生んでいます。中国の技術発展を抑え込むどころか、中国国内での研究開発投資を後押しし、AIを含む幅広い分野での自力開発を加速させているという見立てです。
同氏は、中国はすでにAI開発で米国に肉薄しているとしたうえで、輸出規制が次々と変わる状況は、企業にとって大きな不確実性となり、グローバルなサプライチェーンを混乱させると警告しました。
この視点に立つと、強硬な規制は
- 中国の技術的前進を止める効果は限定的
- 世界のビジネス環境に新たなリスクを生む
- 長期的には米国企業にも不利益をもたらしかねない
という、逆方向の副作用を持つ可能性があります。
中国を「最大の脅威」とみなすことへの疑問
ソーントン氏は、米国が中国を最大の脅威とみなし、AIや汎用目的AIの技術開発から中国を排除しようとする発想そのものが、戦略的な優先順位の誤りだと主張しました。
同氏は、次のような点を強調しています。
- 中国は世界のテック経済における重要なプレーヤーである
- 中国を脇に追いやろうとすれば、米国企業も打撃を受ける
- 同盟関係にも悪影響が及ぶおそれがある
さらに、米国がAI分野を単独で支配することは現実的ではないとし、AIが人類全体の利益に資するようにするためには、米国が中国と協力する必要があると呼びかけました。ここには、覇権競争だけでなく、グローバルな公共財としてのAIをどう設計するかという問題意識がにじみます。
保護主義か協調か 問われるAI時代のルール作り
今回の議論は、米中という二大プレーヤーの関係だけにとどまらず、AIと先端半導体をめぐる国際秩序をどうデザインするかという問いにつながります。輸出規制による保護主義と、ルールに基づく協調のどちらに比重を置くのかは、多くの国や地域にとっても重要なテーマです。
AIの安全性や倫理、軍事転用のリスクといった懸念に対応しつつ、イノベーションと国際協力をどう両立させるのか。ソーントン氏の発言は、トランプ政権の対中国政策を批判するだけでなく、AI時代の外交・安全保障戦略を考え直すきっかけを提供していると言えます。
米中の緊張が続くなかで、AIと半導体をめぐる政策選択は、世界経済や技術の方向性を左右します。規制強化か協調路線か――その判断がどのような結果をもたらすのか、今後の動きが注目されます。
Reference(s):
Former U.S. official slams Trump tech restrictions against China
cgtn.com








