前独外相ベアボック氏が国連総会議長に選出 第80回会期を率いる
前ドイツ外相ベアボック氏が第80回国連総会議長に
ドイツのアナレーナ・ベアボック前外相が、国連総会の第80回会期の議長に選出されました。国連という多国間協調の中心が政治的・財政的な圧力にさらされるなかでの選出であり、その意味合いは小さくありません。
秘密投票で167票を獲得 193加盟国の「誠実な仲介役」を約束
選出は月曜日に行われた秘密投票によるもので、投票総数188票のうち、ベアボック氏は167票の賛成を得ました。14の加盟国が棄権し、第80回会期の議長に正式に選ばれました。
ベアボック氏は、カメルーン出身の現国連総会議長フィレモン・ヤン氏の後任となるとされています。議長として第80回会期を率いることになります。
選出後に国連総会で行った演説で、ベアボック氏は、すべての加盟国に対して公平で誠実な仲介役として臨む姿勢を強調しました。
- 193の加盟国すべてに奉仕する「オネスト・ブローカー(誠実な仲介役)」になると約束
- 「すべての加盟国と、信頼に基づく対話を進めていく」と強調
対立が深まる国際社会のなかで、「誰の側に立つか」ではなく「全加盟国の間をどう取り持つか」を前面に打ち出した点が、今回の演説の特徴といえます。
「第80回会期は決定的な瞬間」 圧力下にある国連
ベアボック氏は、第80回会期の国連総会を「国連にとって極めて重要な局面」と位置づけました。多国間システムの中心である国連が、政治的にも財政的にも強いプレッシャーにさらされていると指摘しています。
演説では、世界で続く武力紛争の多さに触れ、「120を超える武力紛争が存在する現状は、国連憲章の原点である『戦争の惨禍から将来の世代を救う』という使命がいまだ達成されていないことを思い起こさせる」と述べました。
また、持続可能な開発目標(SDGs)の達成についても、現状の延長線上では実現が難しいとし、次のような行動の必要性を訴えました。
- 大胆で野心的な取り組み
- スピード感のある加速
- 公正かつ変革的な行動
これらは、各国が合意した「未来のためのパクト」で示された約束を実行に移すために不可欠だと位置づけられました。
一方でベアボック氏は、国連そのものの存在意義にも触れ、「もし国連がなかったら、状況は決して良くならない」と述べています。1945年の創設以来、国連が積み重ねてきた成果を守りつつ、現在の危機と将来の新たな課題に対応できるよう、組織を適応させる必要があると訴えました。
グテレス事務総長「難しい時期の就任」 キーワードは「Better Together」
アントニオ・グテレス国連事務総長も演説し、ベアボック氏の選出が「多国間システムにとって難しく不確実な時期」に行われたことを指摘しました。
グテレス氏が挙げた現在の主な課題は次の通りです。
- 各地で続く武力紛争
- 気候危機の深刻化
- 貧困と格差の拡大
- 国際社会に広がる不信と分断
- SDGsの進捗の大幅な遅れ
- 人道支援や開発資金の減少
- 国連機関や制度が「過去の世界」を反映したままであること
こうした状況のなかでグテレス氏は、「今こそ団結し、共通の解決策を見いだし、行動を起こすときだ」と呼びかけました。そのうえで、ベアボック氏が掲げるビジョン「Better Together(共にあってこそより良く)」を、今日の世界と国連の役割を象徴するスローガンとして高く評価しました。
また、グテレス氏は、ベアボック氏が国連総会議長として通算5人目の女性となる点を、「歴史的な意義がある」と強調しました。80年にわたり、国連総会はコンセンサスづくりや解決策の模索を通じて、より平和で平等な世界を築く役割を果たしてきたと述べています。
ベアボック氏の横顔 環境政党出身の国際派政治家
ベアボック氏は1980年12月15日、ドイツ北部のハノーバーで生まれました。ハンブルク大学で政治学を学んだ後、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)で法学修士号を取得しており、国際政治・国際法に通じた経歴を持ちます。
2013年からはドイツ連邦議会(ブンデスターク)議員を務め、2018年から2022年までは環境政党である同国「緑の党」の共同党首として党運営を担いました。
連邦外相には2021年12月に就任し、2025年5月まで務めました。その間、気候変動やエネルギー政策、人権問題など、幅広い国際課題に関与してきたことでも知られています。
多国間協調の岐路で問われる「つなぐ力」
今回の選出は、国連が大きな期待と厳しい制約の両方に直面するなかで行われました。武力紛争の頻発や気候危機、貧困と格差、資金不足など、課題のリストは長くなる一方です。
その中で、ベアボック氏が繰り返し口にしたのは、「すべての加盟国のために働く」「信頼にもとづく対話」「Better Together」といった言葉でした。対立の構図を前提とするのではなく、どうやって溝を埋め、共通の土台を見いだすかに焦点を当てているとも受け取れます。
国連総会議長というポジションは、直接的な決定権を持つ役職ではありませんが、議題の設定や議論の進め方、各国の橋渡し役として、国際世論の方向性に少なからぬ影響を与えます。
多くの課題が同時多発的に噴出する2020年代半ば、国連総会の場でどのような議論を生み出し、各国の距離をどこまで近づけられるのか。ベアボック氏の「つなぐ力」が試される局面が続きそうです。
Reference(s):
Former German FM Baerbock elected president of UN General Assembly
cgtn.com








