国連グテーレス事務総長、文明間対話の国際デーで対話と連帯を訴え
文明の違いが衝突ではなく対話のきっかけになるようにするには何が必要なのでしょうか。国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、文明間対話の国際デー制定から1周年を記念する行事で、相互理解と世界的な連帯を強めるよう各国と市民社会に呼びかけました。
文明間対話の国際デー1周年で強調されたメッセージ
グテーレス事務総長は、文明間対話の国際デー制定1周年を記念して開かれたテーマ別対話の場で発言しました。この国際デーは、中国が提案し、80を超える国々が共同提案国となった決議に基づき、国連総会が昨年採択したもので、6月10日が記念日として定められています。
事務総長は、国連がそもそも「対話こそが平和への道だ」という信念の上に築かれたことを改めて強調し、文明の多様性は対立の源ではなく、相互理解と連帯を育む力になりうると訴えました。
対話が欠けるときに広がるものは
グテーレス事務総長が特に危機感を示したのは、対話の不在が生む負の連鎖です。対話がない空白には無知が入り込み、その無知が偏見や憎悪につながると指摘しました。
- 世界各地で、不寛容や排外主義の声が強まっていること
- そうした傾向が、オンライン空間での偽情報やヘイトスピーチによって増幅されていること
- 分断が深まる世界において、対話は「あると良いもの」ではなく、理解と信頼の架け橋を築くために不可欠な基盤であること
事務総長は、人類が直面する分断の時代において、対話は選択肢ではなく必須条件だと位置づけました。
ヘイトには人間性で応えるという呼びかけ
国際デーは、ただ祝うだけの日ではなく、行動を促す日だとグテーレス事務総長は位置づけました。メッセージの中心にあったのは、次のような呼びかけです。
- ヘイトにはヘイトでなく、人間性で応えること
- 心と頭を開いて、相手の話に耳を傾けること
- 分断ではなく対話を選び、尊厳と人権において平等な「一つの人類の家族」を目指すこと
文明間対話の国際デーは、互いに「聞く・話す・つながる」というシンプルだが難しい行為を、改めて意識するためのきっかけでもあります。
中国など各国と国連機関が共催
今回の記念行事は、中国、エジプト、ペルー、スペイン、ウズベキスタンの国連代表部と、国連文明の同盟が共催しました。国連加盟国だけでなく、文明間の理解促進を目的とする国際的な枠組みが連携し、対話の重要性を改めて世界に発信した形です。
文明間対話の国際デーを提案した中国を含む多くの国が、このテーマを優先課題として位置づけていることも示されました。多国間の枠組みを通じて対話の文化を根付かせようとする動きは、今後も続くとみられます。
多様性はリスクか、それとも資源か
国連総会のフィレモン・ヤン議長も、同じ場で文明の多様性について発言しました。地球には約80億人が暮らし、5000を超える民族と、7000を超える言語が存在します。この豊かな多様性をどう捉えるかは、21世紀の国際社会にとって大きな問いです。
ヤン議長は、多様性は対立の火種ではなく、共通の絆や価値を育てる土台になりうると指摘しました。そのうえで、次の点を強調しました。
- 異なる声やニーズが存在するからこそ、相互尊重と対話が不可欠であること
- 人類の進歩と平和を支えるため、共通の価値や結びつきを再確認し強めていく必要があること
- 文明の多様性と統一性をともに祝福しつつ、寛容、包摂、対話を重視する世界を目指すべきこと
分断の時代に個人としてできること
今回のメッセージは、国家間の対話だけでなく、私たち一人ひとりのふるまいにもかかわるテーマです。特にSNSが日常の情報源になっている時代には、オンライン空間でのやりとりそのものが「文明間対話」の最前線にもなりえます。
グテーレス事務総長やヤン議長の呼びかけを、日常レベルに引きつけると、例えば次のような行動につながります。
- 自分と異なる意見に出会ったとき、すぐに否定するよりも、背景や前提を聞いてみる姿勢を持つ
- SNSで見かけた情報をシェアする前に、出典や事実関係をできる範囲で確認する
- 民族、宗教、国籍、ジェンダーなどに関する固定観念に気づいたら、その根拠を問い直してみる
- ヘイトスピーチや露骨な差別表現に触れたとき、沈黙するか拡散するかだけでなく、事実に基づいて穏やかに異議を示す選択肢を検討する
文明間対話の国際デーが目指すのは、特別な1日だけの取り組みではなく、日々の対話の質を少しずつ変えていくことだと言えます。分断が語られがちな今だからこそ、対話と連帯をどう具体的な行動に落とし込むかが問われています。
なぜ今、文明間対話なのか
紛争や緊張が続く地域、移民や難民をめぐる議論、オンライン上の対立的な言説など、世界は多くの課題を抱えています。こうした状況の中で、文明間対話を前面に押し出すことは、国際社会に対して次のようなメッセージを示すものでもあります。
- 安全保障や経済だけでなく、価値観や文化のレベルでの対話が不可欠であること
- 異なる文明や文化を持つ人々が、対話を通じて共通の課題に取り組む余地があること
- 互いの違いを尊重しながらも、人権や尊厳といった普遍的な価値を共有できるという前提を改めて確認すること
文明間対話の国際デーは、こうした議論のプラットフォームを提供し、国連が掲げる平和と人権、持続可能な発展の目標と結びつけていく試みでもあります。世界各地で高まる不安や分断を前に、対話と連帯をどう回復していくのか。今回のメッセージは、その問いを私たちに静かに投げかけています。
Reference(s):
UN chief calls for promoting global solidarity through dialogue
cgtn.com








