米国全50州で「No Kings」デモ トランプ政権の移民政策に抗議
米国で、トランプ政権の政策に反対する大規模な抗議デモが全50州で一斉に行われました。約2,000件にのぼる集会や行進が同じ土曜日に重なり、移民政策の強化やロサンゼルスへの軍隊派遣などに対する不満が一気に噴き出した形です。
合言葉は「No Kings」 「反権威主義」の一日
今回の抗議行動のスローガンは「No Kings(王は要らない)」です。複数の市民団体が連携して呼びかけたもので、4月5日に行われた「Hands Off!」デモなど、これまでトランプ政権に反対する大規模抗議を組織してきた連合体と重なっています。
主催者らはこの土曜日を「反抗の日」と位置づけ、トランプ氏とその支持勢力による「権威主義的な越権行為」に対する抗議だと説明しました。計画は、連邦当局による移民の一斉摘発がロサンゼルスなどで新たな抗議を引き起こすより前から進められていたとされています。
ワシントンには集まらず 軍事パレードとの対比
興味深いのは、主催者が意図的にワシントンD.C.でのデモを呼びかけなかった点です。同じ日、首都ではトランプ氏主催による軍事パレードが行われました。これは、米陸軍創設250周年とトランプ氏の79歳の誕生日に合わせたものでした。
主催者側はこの軍事パレードを「力の誇示のための演出」だと批判。トランプ氏も、パレード会場で抗議行動を行おうとする者は「非常に大きな力」で対処すると警告していました。
全50州・約2,000件 各地の風景
今回の国際ニュースでも注目されたのは、その広がりです。デモは大都市だけでなく、人口の少ない地方都市や農村部のコミュニティにも及びました。
ニューヨーク:5万人が「No ICE」とコール
ニューヨーク市では、警察の推計で約5万人が街頭に出ました。参加者は「What do we want? No ICE! When do we want it? Now!(私たちが望むのは何? ICEはいらない! それはいつ? 今!)」と声を揃え、「No Deportation! Trump Must Go!」「No Justice, No Peace!」と書かれたプラカードを掲げました。
ロサンゼルスとカリフォルニア各地:「移民の不安」の震源地
移民取り締まりへの不安が高まるロサンゼルスは、今回の抗議行動の中心地の一つになりました。市当局は、これまでにない規模の人出になる可能性を警戒していたとされ、土曜日には少なくとも2万5,000人がデモに参加しました。
カリフォルニア州全体では、200を超える都市や町で、合計10万人以上が街頭に立ったとされています。人口約3,600人の山間の町アイドワイルドでも約600人が行進し、南カリフォルニア沖約35キロのサンタカタリナ島にまで抗議の動きが広がりました。
アトランタ、ナッシュビル:音楽と愛国心を交えた抗議
ジョージア州アトランタでは、数千人がリバティ・プラザに集まり、トランプ政権への不満を訴えるメッセージボードを掲げました。群衆は野球の応援歌として知られる「Take Me Out to the Ball Game」を、「Take Trump Out of the White House(トランプをホワイトハウスから出そう)」という替え歌にして合唱し、抗議の意思を示しました。
テネシー州ナッシュビルでは、千人以上が州議会議事堂近くに集結。参加者は、米国旗と共和国への忠誠をうたう「忠誠の誓い」を声を合わせて唱え、愛国心と民主主義の価値を重ねる形で抗議を行いました。
ヒューストン、マイアミ:多様な住民が参加
テキサス州ヒューストンでは、当局の推計で1万5,000人以上が平和的に集まり、その多くは若いラテン系の人びとでした。演説に立った一人は「No Kings! 今日も、そしてこれからも、ドナルド・トランプのような『王』は必要ない」と呼びかけました。
フロリダ州マイアミでは、市中心部ビスケーン・ブールバード沿いのトーチ・オブ・フレンドシップ(友情の炎)周辺がデモの舞台となりました。カリブ海やラテンアメリカとのつながりを象徴するこの場所で、多くの参加者が星条旗を振り、通りを走る車はクラクションで連帯の意思を示しました。周辺では鍋やフライパンを叩く音も響いたといいます。
地方都市や保守地盤でも
オハイオ州グリーンビルでは、民主党支持者が少ないとされる地域にもかかわらず、正午から市中心部のラウンドアバウト(ロータリー)に人びとが集まり始めました。参加者は旗を振り、手作りのプラカードを掲げ、そこで抗議を続けました。警察は、道路をふさぐ行為をすれば逮捕もあり得ると事前に警告していました。
ニュージャージー州では、ニューアーク市長のラス・バラカ氏がモントクレア、ピスカタウェイなど複数の抗議集会を掛け持ちしました。氏は、先月、民間の拘束施設デラニー・ホールでの衝突を受けて逮捕された際の経験を振り返り、「移民を守ろうとしない人たちは、私を守ろうともしなかった。だからこそ、その権利を強く守らなければならない」と語りました。
「暴力ではなく非暴力で」 主催者と当局が強調
今回の抗議デモでは、「平和的な行動」であることが繰り返し強調されました。カリフォルニアをはじめ、各地の選挙で選ばれた首長や治安当局は、参加者に対し落ち着いた行動を呼びかけました。
「No Kings」デモの主催者も、参加者に対し「非暴力の行動」に徹するよう求めています。ロサンゼルス市長のカレン・バス氏は、今回の抗議が破壊的な行動に転じれば、「街が混乱に陥っている」という根拠のないイメージを助長しかねないと警鐘を鳴らしました。
ヒューストンでスピーチをした参加者ミマ氏は、「ここは民主主義であって、王政ではない。移民当局の一斉摘発や家族を引き裂くような暴力的なやり方は許されない」と訴えました。
何が問われているのか:米国民主主義の「見せ方」
軍事パレードによる「力の誇示」と、全国各地での「No Kings」デモ。この二つが同じ日に並行して起きたことは、今の米国政治の緊張を象徴する出来事と言えます。
- 一方では、大統領が軍事力と国家の威信を前面に押し出す式典を主催
- もう一方では、市民が「王は要らない」と掲げ、移民の権利と民主主義の手続きの尊重を求める
ニュースを追う私たちにとって重要なのは、どちらか一方を選ぶことではなく、「権力の見せ方」と「市民の声の上げ方」が民主主義社会でどのように釣り合うべきかを考えることかもしれません。
日本からこの国際ニュースを見るとき、単に「アメリカは分断している」と捉えるだけではなく、市民がどのような言葉と方法で政治に関わろうとしているのかに目を向けることで、自分たちの社会での声の上げ方を考えるきっかけにもなりそうです。
Reference(s):
Protests against Trump administration's policies staged across U.S.
cgtn.com








