アメリカ法曹協会がトランプ政権を提訴 弁護士への「威嚇政策」を巡り対立激化
アメリカの法曹界を代表する団体であるアメリカ法曹協会(American Bar Association/ABA)が、トランプ政権を相手取り、弁護士や大手法律事務所への「威嚇」をやめさせるよう求める訴訟をワシントンD.C.の連邦地裁に起こしました。司法の独立と表現の自由をめぐる国際ニュースとして、法の支配のあり方が改めて問われています。
トランプ政権を相手取った訴訟の中身
訴状によると、ABAはトランプ大統領が発した複数の大統領令が違憲だと主張しています。これらの大統領令は、大手法律事務所やその弁護士を標的にしているとされ、具体的には次のような措置が含まれます。
- 弁護士のセキュリティー・クリアランス(機密情報へのアクセス資格)の剥奪
- 法律事務所およびそのクライアントに対する連邦政府との契約の打ち切り
- 連邦政府の庁舎への立ち入りの制限
- 特定の法律事務所に所属する弁護士を連邦政府職員として採用しない方針
ABAは、こうした一連の措置をトランプ政権による「威嚇キャンペーン」と位置づけ、弁護士や法律事務所に対する報復を通じて、政権と対立する立場の人々への法的支援を押しとどめる狙いがあると訴えています。
法曹界に広がる「萎縮効果」
訴状は、政権の攻撃が法曹界全体に「萎縮効果」を生み、司法制度そのものに深刻な影響を与えていると指摘します。
具体的には、
- 連邦政府を相手取る訴訟を引き受けようとする弁護士が大幅に減っている
- すでに受任していた事件を途中で辞任するケースが出ている
- 検討段階の訴訟から撤退したり、長年の依頼関係にあったクライアントの案件を断る例もある
こうした判断は、案件の法的な妥当性ではなく、「トランプ政権から厳しい報復を受ける危険が高い」と見なされたためだとされています。その結果、政権と対立する個人や団体が適切な弁護士を見つけにくくなり、「司法へのアクセス」が損なわれている、とABAは主張しています。
違憲とされるポイント:表現の自由と市民の権利
ABAは、トランプ政権の対応がアメリカ合衆国憲法修正第1条(いわゆる「表現の自由」を保障する条項)に反すると訴えています。訴状が問題視している点は主に次のとおりです。
- 政権に批判的な訴訟を起こさせないための「政府による圧力・威嚇」
- 弁護士や法律事務所が持つ政治的・法的な見解に基づく「差別的な扱い」
- 市民が自由に集まり、政府に対して請願(要望や不服の申し立て)を行う権利の侵害
訴状は「ABAが会員とその職業、そして法の支配そのものを守る必要性が、これほど緊急だったことはこれまでなかった」と強い表現で危機感を示しています。約40万人の会員を抱えるABAは、全米最大の任意の弁護士団体であり、その動きは法曹界全体に大きな影響を与える存在です。
トランプ政権とABA、深まる対立
今回の提訴は、ABAとトランプ政権の緊張関係が一段と高まったことを示す動きでもあります。トランプ政権はこれまで、ABAへの連邦政府資金の提供を削減し、連邦裁判官候補を評価するうえでABAが担ってきた長年の役割を制限しようとしてきたとされています。
また、同じ大統領令をめぐって、これまでに4つの法律事務所が別個の訴訟を提起しており、そのうち3件では原告側に有利な判断が出ています。残る1件は現在も係争中とされています。今回ABAが本格的に訴訟に踏み切ったことで、政権と法曹界の対立は新たな局面を迎えた形です。
日本の読者にとっての意味:法の支配と専門職の独立
今回のアメリカの動きは、日本を含む他国にとっても他人事ではありません。政府に批判的な立場をとる弁護士や法律事務所に対し、権力側が契約やアクセス権で圧力をかけることが常態化すれば、
- 市民や企業が「政府と争うこと」をためらう
- 弁護士が独立した専門家として行動しにくくなる
- 結果として、民主主義の前提である「法の下の平等」と「権力のコントロール」が弱まる
といった懸念につながりかねません。
政権と対立する立場の人々にも、適切な法的助言と代理人へのアクセスが保障されることは、どの社会にとっても重要な課題です。今回のABAの提訴は、国際ニュースとして、法曹界の役割や司法の独立を改めて考えるきっかけを提供していると言えます。
Reference(s):
cgtn.com







