米国がイラン核施設を空爆 国連は自制要求、世界各国は賛否分かれる
アメリカがイランの核施設3カ所を空爆し、中東の緊張が一気に高まっています。国連は自制と外交による解決を呼びかける一方で、各国・地域の反応は賛否で大きく割れました。
米国がイラン核施設を攻撃 何が起きたのか
アメリカは現地時間の日曜日、イラン国内の核関連施設3カ所を攻撃し、イスラエルが続けてきた爆撃作戦に加わりました。数日間にわたり、アメリカがどこまで関与しているのかをめぐって憶測が広がっていましたが、今回の攻撃でその姿勢が明確になった形です。
トランプ米大統領はホワイトハウスからテレビ演説を行い、イランの主要なウラン濃縮施設は『完全に破壊された』と主張しました。さらにイランを『中東のいじめっ子』と呼び、今こそ和平に転じるべきだと訴えています。
大統領は今回の軍事行動が、イランの核開発を止め、地域の『繁栄と平和』につながると強調しましたが、その見方には各国から賛否両論が上がっています。
イラン側の反応 『主権と国際法の重大な侵害』
イランのアッバス・アラグチ外相は、今回の米軍の攻撃を『言語道断』と非難し、自国の主権を守る権利があると強調しました。外相はSNSプラットフォームのXに投稿し、アメリカは国連安全保障理事会の常任理事国でありながら、国連憲章や国際法、核不拡散条約(NPT)に対する重大な違反を犯したと主張しました。
アラグチ外相は『今朝起きた出来事は永続的な結果をもたらす』『今回の攻撃は無法で犯罪的な行為だ』とも述べ、国連憲章が認める自衛権に基づき、イランは主権と国益、国民を守るためのあらゆる選択肢を留保するとしています。
イラン原子力庁も声明を発表し、米軍による空爆を『国際法に反する野蛮な行為』と表現しました。そのうえで、イランの核産業は『核分野で命を落とした人々の血によって築かれた国家的な事業』だと強調し、今回の攻撃によっても開発の道は止まらないと国民に向けて訴えました。
イスラエルと中東の武装勢力 評価と警告のギャップ
イスラエル首相は『歴史を変える決断』と称賛
イスラエルのネタニヤフ首相はビデオメッセージで、トランプ大統領の決断を称賛しました。首相は、イランの核施設を標的とした今回の攻撃が『中東とその先の地域を繁栄と平和の未来へ導く』と述べ、大統領の『大胆な決断』が歴史を変えると評価しました。
ネタニヤフ首相はイスラエル国内に向けても、かねてから掲げてきた『イランの核施設を破壊する』という自らの約束が果たされたと強調しています。
ハマスとフーシ派は『危険な戦争の始まり』と非難
一方、パレスチナの武装組織ハマスは、今回の空爆を『イランの領土と主権に対するあからさまな米国の侵略』だとして強く非難しました。声明では『残忍な侵略行為』であり、国際法に対する明白な違反であるとしたうえで、国際の平和と安全に対する直接の脅威だと警告しています。
イエメンで活動するフーシ派(フーシグループ)の幹部モハメド・アルファラ氏も、衛星放送局アルジャジーラの取材に対し、米軍によるイラン核施設への攻撃は『戦争の始まり』だと述べました。地域の緊張が一段と高まることへの懸念がにじみます。
国連と各国政府 共通するキーワードは『エスカレーション回避』
国連のグテーレス事務総長は、今回の一連の攻撃について『すでに危機的な状況にある地域における危険なエスカレーションだ』と強い懸念を示しました。声明では『この危険な局面で、混乱の連鎖を避けることが極めて重要だ』『軍事的な解決は存在しない。前進する唯一の道は外交であり、唯一の希望は平和だ』と訴えています。
米議会からも相次ぐ懸念の声
アメリカ国内でも、今回の軍事行動をめぐり議論が高まっています。下院の民主党トップであるヘイキム・ジェフリーズ議員は声明で、トランプ大統領が意図を国民に誤解させたと批判し、議会の事前承認を得ないまま軍事力を行使したことで、中東で破局的な戦争に巻き込まれる危険を高めたと指摘しました。
カリフォルニア選出の民主党議員サラ・ジェイコブズ氏もXへの投稿で、イランへの攻撃は合衆国憲法に反するだけでなく、アメリカを『終わりのない致命的な戦争』に引きずり込むおそれのあるエスカレーションだと懸念を表明しました。
ニュージーランドとオーストラリア 『外交こそ持続的な解決策』
ニュージーランドのピーターズ外相は、中東情勢は『極めて憂慮すべき状況』だと述べ、緊張を高めるさらなる軍事行動を避けるよう各当事者に呼びかけました。外相は、トランプ大統領によるイラン核施設への攻撃発表に言及しつつ、『外交による取り組みこそ持続的な解決をもたらす』として、全ての関係者に対話のテーブルへ戻るよう促しています。
オーストラリア政府の報道担当者も声明で、『地域の安全保障環境は極めて不安定だ』とし、対話と外交を通じた緊張緩和を改めて求めました。そのうえで、イランの核・弾道ミサイル計画は国際の平和と安全に対する脅威だとの認識を示しつつ、米大統領が『今こそ平和の時だ』と述べた点に言及しています。
メキシコ・ベネズエラ・キューバ 米軍の行動を厳しく批判
メキシコ外務省はXへの投稿で、中東の当事者間での平和に向けた外交対話を緊急に求めると表明しました。憲法に基づく外交原則と、国家としての平和主義の立場から、地域の緊張緩和と事態の沈静化を重ねて呼びかけています。
ベネズエラのギル外相はSNS『テレグラム』に、アメリカによるイランへの軍事攻撃を『断固として非難する』と投稿しました。声明は、イスラエルの要請に基づき、アメリカ軍がイランのフォルドウ、ナタンズ、イスファハンの各核施設を爆撃したと述べ、即時の敵対行為停止を求めています。
キューバのディアスカネル国家主席もXで、イランの核施設に対する米軍の空爆を『中東における危険なエスカレーション』だとして強く非難しました。今回の攻撃は国連憲章と国際法に深刻に反し、人類を取り返しのつかない危機へと追い込むものだと主張しています。
EUは核開発阻止と対話再開を重視
欧州連合(EU)の外交・安全保障政策担当トップであるカヤ・カラス氏は、イランに核兵器を保有させてはならないと強調し、それは国際安全保障への脅威になると述べました。そのうえで、全ての当事者に対し、一歩引いて交渉のテーブルに戻り、さらなるエスカレーションを防ぐよう呼びかけています。EU加盟国の外相らは、情勢について早急に協議する予定だとしています。
なぜ今回の攻撃が世界の懸念を呼んでいるのか
今回の米軍による攻撃の標的は、イランの核関連施設でした。核開発や核不拡散をめぐる問題は、通常の軍事衝突以上に国際社会の神経をとがらせるテーマです。イラン側は、あくまで平和目的の核利用だと主張する一方、多くの国々は核兵器開発への転用可能性を懸念してきました。
軍事力で核施設を叩くという手段は、短期的には能力を削ぐ効果があるとみられる一方で、長期的に見れば報復の連鎖や地域紛争の拡大、国際的なルールへの信頼低下など、多くのリスクを伴います。国連や各国がそろって『危険なエスカレーション』と表現している背景には、こうした連鎖反応への不安があります。
今回の反応を整理すると、立場の違いは大きく二つに分かれます。ひとつは、イスラエルやトランプ政権のように、武力行使を通じてイランの核能力を断ち切ろうとする考え方。もうひとつは、国連や多くの国々が示したように、軍事行動は紛争の解決にならず、むしろ外交による枠組みこそが持続可能な道だとみる見方です。
これからの焦点 エスカレーションか、外交回帰か
イランのアラグチ外相は『あらゆる選択肢を留保する』と述べており、今後、イランがどのような形で対応するのかが最大の焦点になります。軍事的な報復に踏み切れば、地域全体を巻き込む衝突に発展するおそれがあり、自制と対話を求める国際社会の声との間で緊張が続きそうです。
同時に、アメリカ国内では、議会の承認を経ない大統領の軍事行動や、『終わりのない戦争』への懸念が改めて浮上しています。今回の事態は、中東だけでなく、民主主義国における安全保障政策の決定プロセスそのものも問う出来事になりつつあります。
世界の多くの国が共通して発しているメッセージは、『これ以上のエスカレーションを避け、外交に戻るべきだ』という点です。中東情勢や国際ニュースに関心を持つ私たち一人ひとりにとっても、武力による抑止と外交的解決のどちらが本当に安全と安定につながるのか、改めて考えるタイミングと言えそうです。
Reference(s):
World reacts to U.S. attacks on Iran with UN calling for de-escalation
cgtn.com








