イランがホルムズ海峡封鎖なら何が起きる?エネルギー市場への衝撃
イラン議会が戦略要衝ホルムズ海峡の封鎖を支持する決議を可決し、米国によるイラン核関連施設への空爆で中東情勢が一段と緊迫するなか、世界のエネルギー市場と日本経済への影響が現実味を帯びています。
何が起きているのか:ホルムズ海峡封鎖の可能性
イラン議会は日曜日、ホルムズ海峡を閉鎖することを支持する法案に賛成票を投じました。最終決定権はイランの国家安全保障最高評議会にありますが、同国が実際に海峡封鎖に踏み切る可能性が国際社会の大きな懸念となっています。
この動きの背景には、米国が同じく日曜日にイランの主要な核関連施設3カ所に対して空爆を行い、中東の緊張が急激に高まったことがあります。テヘランは自衛権の行使としてあらゆる選択肢を検討する権利があると主張しています。
さらに、イスラエルとイランの大規模な武力衝突により、すでに地域全体の安全保障環境は不安定化しています。世界有数の海運団体であるバルチック国際海運評議会(BIMCO)は、こうした状況を受けて多くの船舶がホルムズ海峡通航を避け始めており、通過船舶数が減少していると指摘しています。
ホルムズ海峡とは:世界のエネルギー動脈
ホルムズ海峡は、イランとオマーンの間に位置する狭い海峡で、世界の海上輸送される原油・天然ガスの約2割がここを通過するとされています。中東の産油国から世界各地へ向かう大型タンカーの多くがこの海域を通るため、「世界のエネルギー動脈」とも呼ばれます。
この海峡が一時的にでも封鎖されたり、通行が大きく妨げられたりすれば、世界の石油・ガス供給に即座に影響が及び、エネルギー価格や輸送コストが急激に変動する可能性があります。
封鎖されたら何が起きるか:3つのインパクト
1. 原油価格の急騰リスク
国際金融機関の試算では、最悪のケースとしてイランの石油輸出が完全に止まり、ホルムズ海峡が封鎖された場合、原油価格が1バレル120ドルを超える水準まで上昇する可能性が指摘されています。ドイツ銀行の為替調査責任者であるジョージ・サラベロス氏は、このような事態は世界経済全体に巨大な影響を与えるため、海峡封鎖はあくまで「最後の手段」として使われるとみています。
原油価格が急騰すれば、ガソリンや軽油だけでなく、発電燃料や石油化学製品など、幅広い分野のコストが押し上げられます。日本を含むエネルギー輸入国にとっては、企業の収益圧迫や家計負担の増加という形で直撃する可能性があります。
2. 海運・物流の混乱
ホルムズ海峡を避ける船舶が増えると、航路は長くなり、燃料費や保険料が上昇します。すでにBIMCOは、多くの船舶が安全上の理由から同海峡を回避しており、通過隻数が減少していると報告しています。
もし本格的な封鎖が行われれば、原油や液化天然ガス(LNG)の輸送遅延が頻発し、スポット市場(短期取引市場)での価格変動がさらに大きくなる恐れがあります。これは、エネルギーだけでなく関連産業のサプライチェーンにも波及しかねません。
3. 世界経済への打撃
保険大手アリアンツのチーフ経済顧問であるモハメド・エル=エリアン氏は、BBCのインタビューで、ホルムズ海峡が封鎖される事態は「すでに脆弱な世界経済に対する大きなショックになり得る」と警告しました。
エル=エリアン氏は、短期的にも長期的にも悪影響が出るとしたうえで、すでに圧力が高まっている米国主導の世界経済秩序にとって、さらに大きな打撃となると指摘しています。エネルギー価格の高止まりは、インフレ再燃や金利の高止まりを通じて、企業投資や個人消費を冷やす要因となり得ます。
なぜホルムズ封鎖は「最後の手段」とみなされるのか
サラベロス氏が強調するように、ホルムズ海峡の封鎖は、世界中の国々だけでなくイラン自身にとってもリスクの高い選択です。エネルギー輸出はイラン経済にとって重要な収入源であり、海峡封鎖が長期化すれば、自国の外貨収入にも大きな打撃となります。
また、中東の他の産油国や主要なエネルギー消費国も、海峡の安全な航行を死活問題として捉えています。そのため、実際に封鎖が行われる前に、外交的な圧力や仲介が強まり、緊張緩和に向けた動きが出てくる可能性もあります。
日本とアジアにとっての意味
中東からのエネルギー輸入に依存する日本やアジアの国々にとって、ホルムズ海峡の行方は自国のエネルギー安全保障と直結します。仮に封鎖や大規模な混乱が起きれば、以下のような影響が想定されます。
- ガソリン・電気料金などエネルギーコストの上昇
- 企業の輸送費や原材料費の増加による物価上昇圧力
- 企業収益の悪化を通じた賃金や雇用への下押し圧力
- 市場の不安定化による株価や為替の変動拡大
同時に、再生可能エネルギーの導入拡大や省エネ投資の重要性が、あらためて意識される局面にもなり得ます。エネルギー調達先の多様化や、需要そのものを抑える取り組みは、中東情勢が不安定化するたびに浮かび上がる長期課題です。
今後の焦点:何に注目すべきか
現時点でホルムズ海峡は完全には封鎖されていませんが、状況は流動的です。今後、世界の市場関係者や各国政府が注目するポイントは次のような点です。
- イラン国家安全保障最高評議会が海峡封鎖を正式決定するかどうか
- イスラエルとイランの軍事的緊張がさらにエスカレートするか、外交的な緊張緩和の動きが出るか
- BIMCOなどが報告する船舶の航行状況や保険料動向
- 原油・ガス価格の変動と、それに対する各国の備蓄放出や政策対応
中東発の地政学リスクは、距離的には遠い日本の生活や企業活動にも直接影響を及ぼし得ます。ニュースを追いながら、自分の生活や仕事とのつながりを意識しておくことが、これからの不確実な国際情勢を読み解くうえで重要になってきそうです。
Reference(s):
Analysis: What would happen if Iran blocked Strait of Hormuz?
cgtn.com








