平和か戦争か トランプ米大統領の対イラン攻撃を考える
米国は本当に平和を望んでいるのか――。2024年の大統領選で、ドナルド・トランプ氏は再選を目指し、「終わりなき戦争」を終わらせると繰り返し訴えました。しかし就任から5カ月後、イランの核関連施設への攻撃を命じたことで、その約束は大きな問い直しに直面しています。平和か戦争か。米国はどちらを選ぼうとしているのでしょうか。
選挙で掲げたのは「終わりなき戦争」を終わらせる約束
2024年の大統領選挙で、トランプ氏は再選を目指しながら、何度も次のようなメッセージを発信してきました。米国を終わりの見えない戦争から遠ざけること、そして一部の紛争は「とても早く」終わらせることができるという約束です。
この公約は、長年続く海外での軍事介入に疲れた有権者の心に響きました。多くの人が、米国はこれからもっと内政に力を入れ、外交では対話や協調を重視する方向に舵を切るのではないかと期待したはずです。
それでも下された対イラン攻撃の決断
ところが、就任から5カ月後、トランプ大統領はイランの核関連施設への攻撃を命じました。選挙期間中に掲げた平和志向のイメージとは対照的な、この軍事行動は、国内外でさまざまな受け止め方を生んでいます。
イランの核開発をめぐる問題は、国際政治でもしばしば議論の的となってきました。今回の攻撃は、その争点に対して、外交交渉ではなく軍事力を優先した選択だと受け止められています。
政権側には「米国と同盟国を守るための抑止措置だ」という理屈があります。一方で、武力の行使が新たな報復や緊張の連鎖を生み、かえって「終わりなき戦い」を長引かせるのではないかという懸念も根強くあります。
平和か戦争か、それともそのあいだか
「平和か戦争か。どちらを支持するのか」という問いは、一見すると二者択一のように見えます。しかし、現実の外交や安全保障の世界では、白か黒かでは割り切れないグレーゾーンが広がっています。
軍事力の行使を支持する人々は、次のように考えるかもしれません。
- 核開発の疑いがある相手には、はっきりとしたレッドラインを示す必要がある
- 限定的な攻撃であれば、大規模な戦争を防ぐための警告になる
- 力を見せることで、相手を交渉のテーブルに戻すことができる
一方、軍事行動に反対する人々は、別の点を重視します。
- 攻撃は相手側の強硬派を勢いづかせ、対話の余地を狭める可能性がある
- 誤算や偶発的な衝突から、意図しない全面的な紛争に発展しかねない
- 選挙で掲げた「戦争から距離を置く」という約束との矛盾が、政治への不信を深める
こうしてみると、「平和」か「戦争」かという単純なラベルだけでは、今回の決定を説明しきれないことが分かります。むしろ、平和を守るためにどこまで武力を使うのか、その線引きこそが問われていると言えるのかもしれません。
選挙のことばと政権の現実のギャップ
今回の対イラン攻撃は、選挙のスローガンと政権の現実のあいだにどれほど大きなギャップが生まれうるかを、改めて浮かび上がらせました。
なぜ、そんなギャップが生まれるのでしょうか。いくつか、一般的な要因を挙げてみます。
- 情報の非対称性:候補者の時点では知らされていなかった機密情報を、大統領として初めて知ることで、判断が変わることがあります。
- 安全保障環境の変化:就任後に、予想していなかった軍事的・外交的な事態が起きることがあります。
- 国内政治の力学:議会や世論、政権内部の力関係が、理想よりも現実的な選択を促すことがあります。
もちろん、だからといって公約と逆方向の決定がすべて正当化されるわけではありません。有権者に対して説明責任を果たせるかどうかが、民主主義にとって重要なポイントになります。
日本とアジアの読者にとっての意味
日本やアジアの読者にとって、今回の米国の動きは遠い世界の出来事に見えるかもしれません。しかし、世界最大級の軍事力を持つ国の外交姿勢は、国際秩序の安定や地域の安全保障に少なからぬ影響を及ぼします。
米国が「終わりなき戦争」から距離を取るのか、それとも軍事力を前面に出し続けるのか。どちらに振れるかによって、日本を含む多くの国の安全保障政策や世論の方向性も変化していきます。
また、選挙で掲げたメッセージと実際の行動のギャップをどう評価するかという問題は、日本の政治にもそのまま当てはまります。海外のニュースとして眺めるだけでなく、自国の政治のあり方を考えるヒントとして捉えることもできるでしょう。
「平和か戦争か」という問いを自分ごとにする
トランプ大統領が就任前に約束したのは、米国を「終わりなき戦争」から引き離すというものでした。そして今、イランの核関連施設への攻撃という現実の決断を前に、私たちは改めて問われています。
平和を守るとはどういうことなのか。武力による抑止と外交による解決のバランスをどこに置くべきなのか。選挙のことばと実際の行動を、どのような基準で評価すべきなのか。
「平和か戦争か。どちらを支持するのか」というシンプルな問いは、その背後にある複雑な現実を見つめる入口でもあります。ニュースを追うとき、誰かのスローガンを鵜呑みにするのではなく、そこにどんな選択肢とリスクが潜んでいるのかを、自分の頭で考え続けることが求められているのではないでしょうか。
Reference(s):
cgtn.com








