ハーグNATO首脳会議で何が議論されるのか 防衛費5%案の行方
2025年6月24〜25日にオランダ・ハーグで開かれる予定のNATO首脳会議を3週間後に控えていた当時、加盟国は防衛費目標5%案をめぐる激しい議論のまっただ中にありました。本記事では、その首脳会議で何が争点と見込まれていたのかを整理します。
ハーグNATO首脳会議の位置づけ
NATO首脳会議は、ロシアとウクライナの紛争が3年以上続き、複雑な対外安全保障上の課題が山積する中で開かれることになっていました。各国は、こうした重大な脅威にどう対応し、どう抑止していくのかについて、しばしば相いれない見方を抱えています。
そうした中で、ハーグでのNATO首脳会議は、同盟としてどこまで防衛体制を強化するのか、そのためにどの程度の防衛費を共通目標として掲げるのかをめぐって、大きな節目となると見られていました。
最大の焦点は「防衛費5%目標」
今回のNATO首脳会議で最大の議題とされていたのが、同盟として新たな防衛費目標を設定することです。とりわけ、加盟国の国内総生産(GDP)の5%を軍事・安全保障分野に充てるという高い水準をどう扱うかが、詰めの協議の中心となっていました。
ブリュッセル国防相会合で見えた「おおむね合意」
首脳会議の約3週間前、NATOの国防相はブリュッセルで会合を開き、防衛費をGDP比5%へと大幅に引き上げる方針について、おおむね合意したとされています。
しかし、いつまでにこの水準に到達するのかというタイムラインや、どの費目を「防衛費」に含めるのかという定義をめぐっては、加盟国の間で大きな溝が露呈しました。
NATOのマルク・ルッテ事務総長は会合後、記者団に対し「幅広い支持がある。合意に非常に近づいている」と述べ、次の首脳会議までに合意に達することへの「完全な自信」を示しました。ただし、その合意の中身をどう設計するかは、首脳会議の重要な焦点として残されていました。
ルッテ事務総長の妥協案:3.5%+1.5%
ルッテ事務総長が提示したのが、いわば折衷案です。各国の防衛費目標として、まずGDP比3.5%を「中核的な軍事支出」に充て、さらに1.5%をインフラなど広い意味での安全保障関連分野に投じるというものです。
この案では、道路・港湾・通信網といった重要インフラの強化や、軍事行動を支える民生インフラへの投資も、安全保障の一部として位置づけられます。ルッテ案は2032年までにこうした配分を実現することを目標としており、ハーグでの首脳会議で正式に議論・最終決定される見通しとされていました。
一方で、従来の「純粋な軍事支出」を重視する国にとっては、インフラ投資などを含めることに慎重論もあり、妥協案がどこまで受け入れられるかが注目されていました。
トランプ大統領の圧力と、依然残る「2%未達」組
アメリカのドナルド・トランプ大統領は、かねてからNATO同盟国に対し、防衛費をGDP比5%まで引き上げるよう強く求めてきました。ロシアとウクライナの紛争勃発以降、加盟国の防衛費は全体として増加傾向にありますが、それでもいまだに約3分の1の国は、現行の目標である「2%」さえ達成していません。
その意味で、5%という数字は、単に目標の上方修正というレベルを超え、財政面・政治面で大きなハードルを伴う提案だと言えます。ハーグでの首脳会議は、これまでの2%目標を維持するのか、あるいは5%に向けた段階的なステップを取るのかをめぐって、同盟全体の覚悟が試される場になるとみられていました。
スペインの立場:2.1%で「ノーモア、ノーレス」
こうした議論の中で、とりわけ注目されているのがスペインの姿勢です。スペインは日曜日、NATOとの間で自国の軍事支出をGDP比2.1%に上限設定することで合意しました。
ペドロ・サンチェス首相はマドリードのモンクロア宮殿での記者会見で、スペインは、新たな脅威や課題に対応するために同盟から求められている人員・装備・インフラを獲得し維持するには、GDPの2.1%を充てれば十分であり、多すぎる必要も少なすぎる必要もないと強調しました。
サンチェス首相はそのうえで、GDP比5%という目標を正式に拒否し、その水準にコミットする意図はないとはっきり表明しています。スペインの立場は、加盟国の間で防衛費拡大に対する温度差が依然として大きいことを示すものと言えます。
首脳会議で問われる3つのポイント
こうした状況を踏まえると、ハーグでのNATO首脳会議では、少なくとも次の3点が焦点になると見込まれていました。
- 5%目標をめぐる基本線:トランプ大統領が求める5%水準をそのまま掲げるのか、それともルッテ事務総長の3.5%+1.5%案のような妥協案に収れんしていくのか。
- 達成期限の設定:2032年までという長期的なタイムラインを採用するのか、あるいはより短期の節目を設けるのか。期限次第で各国の予算編成や装備計画への影響は大きく変わります。
- 何を「防衛費」と見なすのか:兵器調達や兵士の人件費などの軍事支出だけを対象とするのか、それともインフラや広義の安全保障関連投資も含めるのかという定義づけ。
これらの論点は、単なる数字合わせではなく、NATOが今後どのような安全保障戦略をとり、どこまでリスクを分担するのかという根本的な方向性に直結します。
日本の読者にとっての意味
NATOの防衛費をめぐる議論は、日本にとっても無関係ではありません。防衛力の強化と財政負担のバランス、何を安全保障関連の支出と位置づけるのかといった問題は、多くの国が共通して直面しているテーマです。
ハーグのNATO首脳会議を前に浮かび上がったこうした論点は、日本でも「どのような安全保障環境に備え、社会としてどこまで負担を引き受けるのか」を考えるうえで、一つの手がかりとなりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








