「人道支援が人を殺している?」ガザGHFを巡り国連が批判 video poster
ガザ地区で開始された米国とイスラエル支援の新たな人道支援スキームGHFが、国連や国際医療団体から「人を殺している」「死のわな」などと激しく批判されています。国際ニュースとして世界の議論を集めるこの仕組みでは、食料を求める人びとが命の危険にさらされていると指摘されています。
本記事では、このガザ・ヒューマニタリアン・ファウンデーション(GHF)とは何か、そしてなぜ国連が参加を拒み、強い懸念を示しているのかを、日本語で整理します。
GHFとは何か:4カ所の軍事化された配給拠点
GHFは、米国とイスラエルが後押しする新しい人道支援の枠組みで、ガザ地区全体に物資を配る役割を担うとされています。運営は米国の警備会社が担い、イスラエル政府の承認を得ている仕組みです。
従来、国連やそのパートナー団体は、ガザ地区での支援物資を地域ごとのコミュニティを通じて分散して配布してきました。これに対し、GHFはガザ全体を対象にしながら、配給拠点をわずか4カ所に限定し、いずれも軍事化された区域に設置すると発表しました。
- ガザ全域で4カ所だけの配給拠点
- 拠点はいずれも軍事化された区域内に位置
- 米国の警備会社が運営し、イスラエル政府が承認
このモデルは、支援を受ける側にとって、銃撃などの危険を冒してでも拠点に向かわざるを得ない仕組みになっている、と批判されています。GHFはパレスチナ人を意図的に「尊厳を奪う」形で危険にさらしていると指摘する声も出ています。
「人を殺している」「死のわな」 国連トップらの強い言葉
国連のアントニオ・グテーレス事務総長は記者団に対し、GHFの作戦は「本質的に安全ではなく、絶望した市民を軍事化された区域に誘導するいかなる活動も、人を殺している」と警告しました。
イスラエルと米国は、国連に対しGHFを通じて支援を行うよう求めていますが、国連側はこの仕組みの中立性に疑問を呈し、支援の軍事化や住民の強制的な移動を招くとして参加を拒んでいます。
グテーレス氏は、国連主導の人道支援が「絞めつけられている」と表現し、支援活動にあたる職員自身も飢えに直面していると訴えました。また、イスラエルは占領権力として、ガザ地区内への支援物資の搬入と配布を認め、円滑にする義務があると強調しています。
さらに同氏は「人びとは、自分や家族のために食料を得ようとするだけで命を落としている。食料を探すことが死刑宣告になってはならない」と語り、ガザでの停戦に向けた政治的な勇気を求めました。
「死のわな」と批判する国連機関と医療団体
国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のフィリップ・ラザリニ事務局長も、GHFを「死のわな」と呼び、状況をディストピア作品さながらの「ハンガー・ゲーム」のようだと表現しました。
ラザリニ氏は、新たに作られた仕組みについて「絶望する人びとを辱め、尊厳を踏みにじる忌まわしいメカニズムであり、救う命より失わせる命の方が多い」と強く非難しています。
国連人道問題調整事務所(OCHA)は、GHFが設けた新たな配給拠点に人びとが殺到する中で、死亡例が繰り返し発生していると報告してきました。現地の住民からは、国連以外が運営する配給地点で食料を求めて並んでいたところ、銃撃を受けたとの証言も出ています。
国際医療団体の国境なき医師団(MSF)は、ここ数週間のあいだに、ガザ地区で食料を求める過程で500人以上が死亡したと指摘しています。
封鎖解除後も続く「援助を求める死」
イスラエルは今年5月19日に、11週間続いたガザへの支援封鎖を解除し、限定的ではあるものの国連による支援物資搬入を認めました。しかし国連によると、その後も支援を求める市民の死は止まっていません。
国連の集計では、封鎖解除後、国連およびGHFが関わる支援物資を求める過程で400人以上のパレスチナ人が命を落としたとされています。ある上級国連当局者は、その多くがGHFの配給拠点に向かおうとしていた人びとだったと述べています。
- MSFは、ここ数週間で食料を求める中で500人超が死亡したと指摘
- 国連は、5月19日の封鎖解除後だけで、支援を求める中で400人超が死亡したと報告
食料や支援物資を得るために行列に並ぶこと自体が、命を落とす危険と背中合わせになっている現状が浮かび上がります。
国連がGHFへの協力を拒む理由
国連やUNRWAなどの批判は、大きく次の点に集約されます。
- 軍事化された区域に絶望した市民を誘導するため、本質的に安全ではない
- 配給拠点がごく一部に限られ、人びとが危険を冒して移動せざるを得ない
- 支援が軍事的な管理と結びつき、中立性や人道支援への信頼を損ないかねない
- 食料を得るために命がけで列に並ばせることは、人間の尊厳を傷つける
グテーレス氏は「絶望した市民を軍事化された区域に集めるいかなる作戦も、本質的に安全ではない」としたうえで、現在の枠組みがまさにそのような構造になっていると警鐘を鳴らしています。また、国連側は、本来コミュニティ単位で行ってきた支援配布が、軍事的なゾーンを中心に行われる形に変わることで、事実上の住民移動や立ち退きを促すことにもつながると懸念しています。
国連主導の支援活動自体が「絞めつけられ」、現場の職員も飢えに苦しんでいるという声明は、人道支援の現場が極限状態にあることを示しています。
イスラエルとGHFの反論
こうした批判に対し、イスラエル外務省は、イスラエル軍は決して民間人を標的にしていないと強調し、国連が武装組織ハマスに肩入れしていると非難しました。
GHFの広報担当者も、GHFの配給拠点やその近くで死亡例が発生した事実はないと主張しています。さらに報道によれば、GHF側は国連が自らの活動について虚偽情報を拡散していると批判しているとされています。
支援の現場で何が起きているのか、事実関係をめぐって国連側とGHF・イスラエル側の主張は大きく食い違っている状況です。
問われる「安全な支援」と停戦への政治的決断
ガザ地区の人道状況をめぐる議論は、単に物資をどれだけ運び込むかという量の問題にとどまりません。今回のGHFをめぐる対立は、支援を届ける仕組みそのものが人命を危険にさらしていないか、人道支援の名のもとに人びとの尊厳が損なわれていないかという、根本的な問いを突きつけています。
グテーレス事務総長は「食料を探すことが死刑宣告になってはならない」と述べ、ガザでの停戦に向けた政治的な勇気が必要だと呼びかけました。支援の安全なルートを確保し、人びとが命の危険を冒さずに基本的な生活物資を得られる状況をつくることが、今後の焦点となりそうです。
国際ニュースを日本語で追う私たちにとっても、今回の問題は、人道支援とは何か、誰がどのように管理すべきかを考えるきっかけになります。SNSなどで情報が断片的に流れる時代だからこそ、現地からの証言や国際機関の声を丁寧に読み解きながら、自分なりの視点を持つことが求められています。
Reference(s):
'It is killing people': Why U.S.-backed Gaza aid operation is slammed?
cgtn.com








