ハマス「包括停戦なら全人質解放」提案 イスラエルは応じず
イスラエルとハマスの衝突が長期化するなか、ハマスが「包括的停戦と引き換えに全人質解放」を提示し、停戦交渉の行方とガザの人道危機に改めて注目が集まっています。
ハマス「包括的停戦なら全員解放」 部分合意から「パッケージ」へ?
ハマスの軍事部門「アル・カッサム旅団」の報道担当者アブ・オベイダ氏は金曜日、イスラエルとの現在の交渉について、「暫定的な停戦」を模索しているものの、合意に至らなければ「一気に戦闘終結までを含む包括的な取引」を再び求める可能性があると表明しました。
オベイダ氏によれば、ハマスはここ数カ月にわたり、「ガザ地区で拘束しているすべての人質を解放する代わりに、恒久的な停戦に踏み切る」案を何度も提示してきたものの、イスラエル政府はこの提案を拒否してきたとしています。
同氏はまた、イスラエルが過去の停戦合意に違反し、この4カ月間にわたってガザへの軍事攻撃を再開していると非難しました。一方で、ハマス側は「長期戦」を想定しており、イスラエル軍に損失を与えることや、影響の大きい攻撃の実行、さらには兵士の追加拘束を試みる戦略を続けていると述べています。
「部分的交換案は見直す」可能性も示唆
現在進行中の交渉が決裂した場合、ハマスはこれまで検討してきた「一部の人質と一部の被拘束者を段階的に交換する」ような部分的合意には、今後は応じない可能性があるとも警告しました。交渉が不調に終われば、「包括的パッケージ」以外は受け入れない姿勢に傾くリスクがあるというメッセージです。
イスラエル側の立場と「60日間停戦案」
一方、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の事務所は声明で、イスラエル側は人質解放と60日間の停戦に向けた合意を目指しているものの、「ハマス側からはこれまでのところ応じる動きがない」と主張しました。
この交渉には、アラブ仲介役としてカタールとエジプトが関与し、米国がそれを後押ししています。すでに10日以上にわたり、60日間の停戦を軸とした米国支援の提案について協議が続いていますが、決定的な突破口は開けていません。
60日間で「10人帰還・18人の遺体引き渡し」案
提案されている案の一つでは、60日間の期間中に、ガザで拘束されている人質10人を段階的に解放し、さらに死亡した18人の遺体を返還することが盛り込まれています。その見返りとして、イスラエルは拘束している多数のパレスチナ人を釈放するとされています。
ただし、こうした段階的な取引は、ハマス側が示す「包括的停戦と全員解放」を前提とする案とは性格が異なります。どこまでを「暫定的措置」とし、どこからを「戦闘終結」につながる包括合意と位置づけるのかが、両者の溝となっています。
交渉が難航する理由:撤収地図と支援ルート、戦闘終結の保証
ハマス側の関係者2人は、ロイター通信に対し、交渉が停滞している背景として、次のような論点が未解決だと説明しています。
- イスラエル軍部隊をどの地域から、どの順番で撤収させるのかを示す「撤収地図」
- ガザへの人道支援物資をどのような経路・仕組みで搬入するのかという「支援メカニズム」
- 今回の停戦が、本当に最終的な戦闘終結につながるのかを誰がどのように保証するのか
これらの論点で合意に達しておらず、「決定的なブレイクスルーには至っていない」とのことです。単に停戦期間の日数や人質の人数だけではなく、「戦争の終わり方」そのものをめぐる駆け引きが続いていることがうかがえます。
ガザで悪化する人道危機 「日常化する大量の欠乏」
軍事的な駆け引きの裏側で、ガザの人道状況は深刻さを増しています。ガザの保健当局によると、これまでにイスラエルの軍事作戦により、5万8,600人以上のパレスチナ人が死亡したとされています。
国連人道問題調整事務所(OCHA)は、ガザで続く「日々の激しい攻撃」と「本来防げたはずの死」、「燃料不足の悪化」、さらには大規模な避難と絶望が、ガザの人々にとっての「大量の欠乏」を日常のものにしつつあると警告しています。
- イスラエル当局は、北部ガザの一部に対して新たな避難命令を出したとされる
- 病院では、栄養失調が疑われる子どもや大人が報告されているものの、医療資源は限られている
- 人道支援のアクセスは厳しく制限されており、OCHAによるとイスラエル当局との調整試行13件のうち、成功したのは7件にとどまる
この結果、燃料の回収や発電機の移設、衛生用品や医療物資の輸送といった、基本的な支援活動でさえ大きく妨げられているといいます。
2025年の視点:停戦はどこまで現実的か
2025年12月現在も続くイスラエルとハマスの対立の中で、今回の提案は次のような問いを私たちに投げかけています。
- 「人質の全員解放」と「恒久的な停戦」は、どのような条件がそろえば同時に実現しうるのか
- 当事者だけでなく、仲介役であるカタールやエジプト、米国など国際社会は、どこまで責任を分担できるのか
- ガザの人道危機をこれ以上悪化させないために、政治・軍事の交渉とは別に、最低限守るべき「レッドライン」は何か
交渉の中身は複雑で、どちらか一方だけの主張が通る単純な構図ではありません。しかし、人質の解放と住民の安全確保という、人の命に直結する課題については、交渉のテーブルから落としてよい条件は多くないはずです。
ガザの現状と停戦交渉の行方を追うことは、遠く離れた日本にいる私たちにとっても、「武力によらない紛争解決」をどこまで具体的に想像し、支持できるのかを考えるきっかけになります。今後、どのような形の合意が提示されるのか、そしてそれが現場の人々の生活をどう変えるのかを、冷静に見ていく必要があります。
Reference(s):
Hamas offers to release all hostages under comprehensive truce deal
cgtn.com








