フランス・英国・カナダが示すパレスチナ承認 国連総会が焦点となる理由
フランス、英国、カナダの3カ国がパレスチナ国家承認の意向を示し、今年9月の国連総会を重要な節目とみなした動きは、中東情勢と国際秩序の今後を考えるうえで見逃せない出来事です。
なぜ国連総会が「勝負の場」と位置づけられたのか。そしてイスラエルはどのように動こうとしているのか。中国・寧夏大学中国アラブ研究院の牛新春(Niu Xinchun)教授が、中国メディアグループ(CMG)のインタビューで語ったポイントをもとに整理します。
フランス・英国・カナダが示したパレスチナ承認の意向
牛教授によると、フランス、英国、カナダという3つの主要な西側諸国が、最近になってパレスチナ国家を承認する意向を相次いで表明しました。これらの国々は、国連総会の場でパレスチナ国家を正式に承認する方向で準備を進めていると受け止められています。
牛教授は、こうした動きは単なる象徴的なジェスチャーではなく、「国連という舞台で政治的メッセージを最大化しようとする試み」と見ています。とくに、9月の国連総会での発表は、世界に向けた発信力が大きいと指摘します。
なぜ9月の国連総会が「勝負どころ」だったのか
牛教授は、国連は今も世界で最も権威ある国際機関であり、とりわけ毎年9月の国連総会は、各国の首脳が出席し、世界情勢に対する自国の立場を演説という形で示す、最も注目度の高いイベントだと説明します。
その場でパレスチナ国家承認を表明することは、次のような意味を持つとみられます。
- 世界中の首脳とメディアが注目するタイミングでの発信となる
- 「パレスチナ国家承認」が国際議題の中心に押し出される
- 国内世論だけでなく、広く国際世論に向けたメッセージとなる
牛教授は、「9月の国連総会で承認を表明すれば、政治的な重みは最大限まで高まる」と強調します。
安保理ではなく国連総会がパレスチナ問題の主舞台に
国連には、安全保障理事会(安保理)と総会という二つの主要な意思決定の場がありますが、パレスチナ問題をめぐって主戦場となってきたのは総会だと牛教授は指摘します。
その背景として、牛教授は次の点を挙げます。
- 安保理では、特にアメリカなど一部の西側諸国の反対により、パレスチナに有利な決議がたびたび行き詰まってきた
- 拒否権がない国連総会は、多数の国の意思を反映しやすく、パレスチナ側が国際社会に訴える主要な場となってきた
実際に国連総会は、長年にわたってパレスチナ国家承認を支持する決議や、パレスチナ人の権利を支持する決議など、多くの関連決議を採択してきました。牛教授は、「パレスチナにとって国連総会は、国際的な承認と権利を求めるための最も重要なフォーラムだ」と位置づけています。
ガザ情勢の悪化と「かつてない」イスラエルへの圧力
インタビュー時点で、ガザ地区の状況は依然として深刻で、停戦協議は行き詰まり、人道危機は「最も深刻な段階」に達していたと牛教授は述べています。そうした中で、「イスラエルに対する国際社会からの圧力は、これまでにない水準に達している」と分析しました。
牛教授の見立てでは、圧力を高めている要因として、たとえば次のような点が重なっています。
- 停戦交渉の停滞と先行きの不透明さ
- ガザ地区での深刻な人道危機への懸念
- 紛争の長期化が地域全体の不安定化につながるとの危機感
こうした状況が、パレスチナ国家承認を検討する国々の判断にも影響を与えていると考えられます。
イスラエルはどう動くのか:牛教授の読み
牛教授は、イスラエルが今後どのような決断を下すのかについても、イスラエルのメディア報道を引用しながら分析しています。
報道によれば、アメリカの中東担当特使スティーブ・ウィトコフ氏とイスラエルのネタニヤフ首相が数時間にわたって協議を行った後、イスラエルはガザをめぐる「最終的な立場」を発表する準備を進めているとされています。
牛教授は、その内容について次のように整理します。
- イスラエルはもはや、ハマスとの「段階的な交渉」に応じる意思はない
- ハマスに対して、人質全員の一括解放を求めている
- ハマスがこれを拒否した場合、ガザ地区全域を対象とする大規模な軍事作戦を開始する可能性がある
つまり、イスラエル側は交渉の条件を大きく引き上げる一方で、軍事行動の選択肢も維持していると見られます。
二つの帰結:恒久停戦か、軍事行動のエスカレーションか
牛教授は、イスラエルへの国際的な圧力の高まりは、最終的に二つの方向のどちらかに向かう可能性があると指摘します。
- 一つは、恒久的な停戦に至るシナリオ
- もう一つは、イスラエルがガザでの軍事作戦をさらに拡大するシナリオ
そして牛教授は、インタビュー時点では後者、つまり軍事行動のエスカレーションの方が起こりやすいように見えると述べました。
国際社会からの圧力が強まるほど、停戦への道が開かれる可能性もある一方で、当事者が「譲歩ではなく力」を優先すれば、情勢はさらに悪化しかねないという緊張したバランスが続いていることがうかがえます。
私たちはこの動きをどう受け止めるか
パレスチナ国家承認をめぐる動きは、ガザの現地状況をすぐに劇的に変える「魔法の解決策」ではありません。しかし、国連総会という場で複数の西側諸国が承認に踏み出そうとすることは、国際社会の力関係や、紛争当事者の計算に影響を与えうる強い政治的シグナルです。
牛教授の分析を踏まえると、私たちが考えておきたい論点は次のように整理できます。
- 国連総会という場での「承認」は、どこまで実質的な意味を持ちうるのか
- 安全保障理事会が機能不全に陥ったとき、国連はどのような形で役割を果たせるのか
- パレスチナ問題をめぐる各国の立場の変化は、今後の中東秩序にどのような影響を与えるのか
欧米の一部がパレスチナ国家承認に踏み出そうとする背景には、ガザ情勢の悪化だけでなく、自国世論や国際世論の変化もあります。国連総会の場でどのような議論と決定が積み重ねられていくのか。中東だけでなく、国際秩序全体の行方を左右しうるテーマとして、今後も注視していく必要がありそうです。
Reference(s):
Experts: Why more Western countries to recognize Palestine at the UNGA
cgtn.com








