ブラジルとインド、米国のロシア産原油圧力を拒否【国際ニュース】
ブラジルとインドが、ロシア産原油の輸入を巡る米国の圧力を相次いで退けました。エネルギー政策と経済制裁が交錯する国際ニュースを、日本語で整理します。
ブラジル:関税と引き換えの「条件付き要請」を拒否
米国は、ブラジルに対しロシア産原油の輸入削減を求める見返りとして、ブラジル産品への関税引き下げを検討する構えを示していました。米議会の一部議員は、最大50%に達する関税の引き下げを提案していたとされています。
これに対し、ブラジル大統領の首席補佐官を務めるセルソ・アモリン氏は、テレビ局のインタビューで次のように強調しました。
- ブラジルは、一方的な経済制裁には原則として反対であること
- 国連安全保障理事会が承認していない制裁には賛同しないこと
- 各国間の通常の経済・貿易関係は、政治的な干渉を受けるべきではないこと
アモリン氏は、関税をめぐる取引と引き換えに、ブラジルのエネルギー政策に条件を付けることは受け入れられないとし、地政学的な目的で経済的手段を用いることに反対する姿勢を明確にしました。
一方、米政府は新たに、ブラジルの輸出品に対して最大50%の関税を課すと発表しています。コーヒーや肉類などの主要輸出品が大きな影響を受けるとの見方が出ています。
インド:ロシア産原油の長期契約を維持
インドもまた、ロシア産原油を巡る米国の圧力に対し、独自の判断を示しています。ロイター通信によると、インド政府筋2人は、トランプ米大統領が制裁をちらつかせているにもかかわらず、インドはロシアからの原油輸入を継続する方針だと明らかにしました。
トランプ大統領は、インドからの輸出品に新たに25%の関税を課したうえで、先月には自身のSNS『Truth Social』への投稿で、ロシアの武器や原油の購入を続ける国に対し、追加的な制裁を科す可能性を示唆しました。さらに記者団に対しては「インドはもはやロシアから原油を買わないと聞いている」と述べましたが、インド側の複数の関係者は「直ちに政策変更を行う予定はない」としています。
インド政府筋の1人は、ロシア産原油の調達について「これは長期の原油契約であり、すぐに購入を止めるのは簡単ではない」と説明しました。別の関係者は、インドによるロシア産原油の輸入が、世界的な原油価格の急騰を防ぐ役割を果たしてきたと主張し、西側によるロシア産原油への制限が続く中でも、価格が比較的落ち着いている背景にはこうした取引があると述べています。
この関係者によれば、イランやベネズエラ産の原油と異なり、ロシア産原油には直接的な制裁は科されておらず、インドは欧州連合(EU)が設定した価格上限よりも低い価格で購入しているとされています。
ロシアは現在、世界第3位の原油輸入国・消費国であるインドにとって最大の供給国となっており、インドの原油輸入全体の約35%を占めています。インドは今年1〜6月にかけて、ロシアから1日当たり約175万バレルの原油を輸入しており、前年同期比で約1%増加したというデータも紹介されています。
もっとも、同じくロイター通信の取材によれば、インドの国営製油会社は、ロシア側の値引き幅が2022年以降で最も小さい水準に縮小した7月以降、ロシア産原油の購入を見合わせているといいます。ロシアの輸出量減少と安定した需要により割引が細り、純粋な価格要因が取引の見直しにつながった形です。
米紙ニューヨーク・タイムズも、複数のインド高官の話として、インド政府の基本方針に変更はないと報じています。インド外務省のジャイスワル報道官は定例会見で、ロシアとは「安定した、時間をかけて築いてきたパートナーシップ」を有すると述べ、エネルギー調達については「市場で何が入手可能か、どのような条件が提示されているか、そして世界全体の状況を踏まえて判断している」と説明しました。
共通する論点:制裁よりも自国のエネルギー安全保障
ブラジルとインドの対応には、それぞれの事情の違いはあるものの、共通するキーワードがあります。それは「一方的な制裁への慎重姿勢」と「自国のエネルギー安全保障の優先」です。
- ブラジルは、国連安保理が承認していない制裁には従わないとの立場を取り、関税を梃子にした政治的な圧力を拒みました。
- インドは、長期契約と価格安定を重視し、自国と世界のエネルギー市場を混乱させないことを重んじています。
一方、トランプ大統領は、ロシア産原油を購入し続ける国からの輸入品に対し、最大100%の関税を課す可能性に言及しており、ロシアのエネルギー収入を圧迫するため、同盟国だけでなく主要新興国にも圧力を強めています。
世界の制裁とエネルギー市場への影響
欧米諸国はここ数年、経済制裁や価格上限制度などを通じて、ロシアのエネルギー収入を制限しようとしてきました。しかし、ブラジルやインドのような大きなエネルギー需要国がロシア産原油の購入を続ければ、制裁の効果は限定的になりかねません。
同時に、これらの国がロシア産原油を割安で調達することは、世界全体の原油価格を一定程度抑える役割も果たしていると指摘されています。制裁を強めればロシアの収入は減るかもしれませんが、供給がさらに細れば、世界市場の価格高騰につながるリスクもあります。
各国が制裁への参加・不参加をどう判断するかは、単に「どの陣営に属するか」という話ではなく、自国のエネルギー安全保障、物価、国内世論といった要素を総合的に計算した結果でもあります。
日本の読者への示唆:価値観と現実の間で
日本もまた、エネルギー輸入に大きく依存する国として、ロシアを含む資源国との関係や対ロ制裁のあり方に悩ましい選択を迫られてきました。ブラジルとインドの判断は、日本にとっても無関係ではありません。
- 制裁とエネルギー安全保障をどう両立させるのか
- 国際秩序や法の支配と、自国の経済的利益をどうバランスさせるのか
- 新興国の視点をどこまで政策に織り込めるのか
今回の動きは、「どの国が正しいか」を単純に決める話ではなく、国際社会がそれぞれの立場から難しい計算をしている現実を浮き彫りにしています。読者のみなさんは、ブラジルとインドの選択をどのように受け止めるでしょうか。
Reference(s):
Brazil, India reject U.S. demands to stop buying Russian oil
cgtn.com








