イスラエル軍、ガザ市「奪還作戦」開始 停戦案と軍事攻勢が同時進行
イスラエル軍がガザ市への大規模攻勢の「第一段階」に入ったと発表し、数万人規模の予備役招集と新たな停戦案の協議が同時進行する、緊迫した局面を迎えています。
ガザ市掌握へ「第一段階」の軍事作戦
イスラエル軍は水曜日、ガザ地区最大の都市であるガザ市の掌握を目指す軍事作戦について、「予備的な作戦と攻撃の第一段階を開始した」と明らかにしました。軍報道官のエフィ・デフリン准将は、イスラエル軍部隊がすでにガザ市の外縁部を押さえていると説明しています。
デフリン准将は、イスラエルと対立する組織ハマスについて「打撃を受けたゲリラ勢力」になっていると述べたうえで、「ガザ市でハマスへの攻撃を一層深めていく。そこは同組織にとって、政治と軍事の拠点だ」と強調しました。
数万人の予備役を招集 作戦タイムラインが前倒しに
イスラエル軍は同じく水曜日、ガザ市への本格的な攻勢に備え、数万人規模の予備役招集に踏み切りました。当初、軍幹部は予備役が招集に応じるのは9月まで待つと説明しており、その間に仲介役がイスラエルとハマスの溝を埋める時間が確保されるとの見方も示されていました。
しかし、その後ガザ南部カーンユニス近郊でイスラエル軍部隊とハマス戦闘員との衝突が発生。これを受けて、ネタニヤフ首相の事務所は、ハマスの拠点を制圧し、組織を打倒するためのタイムラインを前倒ししたと発表しました。ガザ市の掌握に向けた作戦に一気に加速がかかりつつあります。
停戦案をめぐる思惑 60日間の休戦提案も
軍事作戦が拡大する一方で、停戦をめぐる外交交渉も動いています。イスラエル政府は、新たに提示された停戦案について検討を進めているとされています。これは、約2年近く続く戦闘を一時停止することを目指したものです。
ハマス側は、アラブの仲介者が提案した60日間の停戦案をすでに受け入れたと表明。この案には、残る人質の一部と、イスラエルに拘束されているパレスチナ人の囚人を段階的に解放することが含まれているとされています。
一方、イスラエル政府は、およそ50人とされる残る人質全員の一括解放を要求しており、提案の内容を精査している段階だと説明しています。イスラエル当局は、そのうち約20人が生存しているとみているとされています。
ハマスは「停戦妨害」と非難 ネタニヤフ政権は板挟みに
ハマスは通信アプリ「テレグラム」で声明を出し、ネタニヤフ首相が停戦案を妨害し、「ガザ市の罪のない市民に対する残虐な戦争」を継続することを選んでいると強く非難しました。「仲介者の提案を無視していることこそ、あらゆる合意の最大の障害だ」とも主張しています。
一方で、イスラエルの安全保障閣議は今月、ガザでの軍事作戦を拡大し、ガザ市の掌握を目指す計画を承認したとされています。イスラエル軍は現在、ガザ地区全体の約75%を制圧していると説明されており、ガザ市は今後の焦点となっています。
イスラエルの主要な同盟国の多くは、ガザ市への大規模攻勢がさらなる避難や人道危機を引き起こすと懸念し、作戦計画の再考を呼びかけています。しかし国内では、一部の極右勢力などから一時的な停戦に反対し、戦闘継続や領土の併合を主張する声もあり、ネタニヤフ首相は国際社会と国内政治の双方から強い圧力を受けています。
トンネルからの奇襲攻撃 現場では激しい近接戦闘
地上戦の現場では、依然として激しい戦闘が続いています。イスラエル軍によると、水曜日、ガザ南部カーンユニス近郊で、トンネルの出入口から姿を現した15人以上のハマス戦闘員と交戦しました。戦闘員らは銃撃や対戦車ミサイルで攻撃し、イスラエル兵1人が重傷、2人が軽傷を負ったとされています。
ハマスの軍事部門「イッズッディーン・アルカッサム旅団」も声明を出し、カーンユニス南東でイスラエル軍への襲撃を行い、至近距離で交戦したと主張しました。また、戦闘員の1人が自爆攻撃を行い、複数の兵士に被害を与えたとも述べています。こうした報告は、ガザ地区の戦闘がいまもなお危険な近接戦闘とトンネル網を伴う消耗戦であることを物語っています。
軍事攻勢と停戦交渉 問われる「市民保護」
イスラエル軍のガザ市への攻勢は、多くの住民のさらなる避難や生活基盤の破壊を招く可能性があるとして、国際的な懸念が高まっています。軍事作戦を優先するのか、停戦と人質解放の枠組みを具体化するのか。イスラエルとハマス、そして仲介に入る各国は、難しい選択を迫られています。
都市部での戦闘が続くなか、どのようにして民間人の被害を最小限に抑え、国際人道法を守るのかは、国際社会全体に突きつけられた課題でもあります。ガザ市をめぐる軍事と外交の綱引きは、今後の中東情勢だけでなく、「戦争と市民保護」をどう両立させるのかという普遍的な問いを投げかけています。
Reference(s):
cgtn.com








