米欧がウクライナ安全保障を協議 地上部隊派遣と米軍空支援案とは
約3年半にわたって続くウクライナの紛争をめぐり、米国と欧州の安全保障担当者が、ウクライナへの安全保障の約束をどう具体化するかについて、地上部隊派遣や米軍による空からの支援など複数の軍事オプションを検討しています。ヨーロッパで過去80年で最も多くの犠牲者を出しているとされるこの紛争は、2025年12月現在も地域と世界の大きな不安定要因となっています。
ワシントンでの会合で何が話し合われたのか
米国と複数の欧州諸国の制服組トップが木曜日まで、ワシントンで協議を行い、各国の安全保障担当者に提示するための軍事オプションを取りまとめました。対象となったのは、ウクライナに対する長期的な安全保障の保証をどのような形で提供するかという点です。
参加したのは、次の各国の統合参謀本部議長や国防軍トップです。
- アメリカ
- フィンランド
- フランス
- ドイツ
- イタリア
- イギリス
- ウクライナ
米国防総省は、米欧の計画立案担当者が、同盟国の国家安全保障担当者による検討のために複数の軍事オプションを作成したと説明しています。こうした動きは、報道機関がいち早く伝えたものの、その具体的な中身は公にはされていません。
トランプ政権のスタンス:地上部隊は派遣せず、役割は模索中
背景には、ドナルド・トランプ米大統領が、約3年半続くウクライナ紛争を終わらせる和平合意が成立する場合、その合意の一環としてウクライナの安全を守ることを支援すると約束していることがあります。
一方でトランプ大統領は、米軍の地上部隊をウクライナに派遣しない方針を繰り返し示しています。ただし、空からの支援など、その他の軍事的な関与の可能性については扉を開けたままにしているとされています。
事情に詳しい関係者によると、国務長官であり、同時に大統領の国家安全保障担当補佐官も務めるマルコ・ルビオ氏が、木曜日に欧州側のカウンターパートと電話会議を行い、これらのオプションについて協議しました。関係者は「計画作業は継続している」とした上で、ワシントンは自らの関与の範囲をなお見極めている段階だと述べています。
また、ジェイディー・バンス副大統領は水曜日、作戦コストの大部分はヨーロッパが負担すべきだと指摘しており、欧州側が人員と費用のライオンズシェア、つまり大部分を担うべきだという考えが、米政権内で共有されている様子もうかがえます。
検討されている具体的な軍事オプション
欧州部隊の地上展開案
有力な案のひとつとされているのが、欧州諸国の部隊がウクライナ国内に展開し、その部隊の指揮統制を米軍が担うという構想です。関係者によれば、実際にウクライナの地に部隊を送るのは主に欧州側であり、その中核を担う形が想定されています。
この構想については、フランスのエマニュエル・マクロン大統領と、イギリスのキア・スターマー首相が、いわゆる有志連合の一環としての部隊派遣を支持しているとされています。ドイツのフリードリヒ・メルツ首相も、自国の参加に前向きな姿勢をにじませています。
ドイツ兵士組合のトップは、欧州の北大西洋条約機構の指導者たちは、ウクライナの平和維持と安全確保のためには、長期にわたり数万人規模の部隊を派遣する現実と向き合わなければならないと発言しました。つまり、この案が実行に移されれば、短期的な派遣ではなく、年単位のコミットメントになる可能性が高いことを示唆しています。
米軍による空からの支援案
もう一つの重要な柱が、米軍による空からの支援です。想定されているオプションとしては、主に次のようなものが挙げられています。
- ウクライナへの防空システムの追加供与
- 米軍戦闘機によるノーフライゾーンの実施
ノーフライゾーンとは、特定の空域を飛行禁止区域とし、その空域への軍用機の進入を武力を用いてでも阻止する仕組みです。ウクライナ上空でこれを実施する場合、米軍機がロシア側の航空戦力と直接向き合うリスクも伴うことから、実現には慎重な判断が求められるとみられます。
欧州が担うライオンズシェアと、その重さ
関係者によると、最終的な細部はまだ調整段階にあるものの、ウクライナに対する安全保障の枠組みにおいて、実際に部隊を提供するのは欧州側がライオンズシェアを担う方向です。米国は指揮統制や空からの支援、高度な情報提供などで関与しつつ、地上部隊の派遣は避ける構図が浮かび上がります。
約80年ぶりにヨーロッパで大規模な戦争が起きているという認識は、欧州首都に強い危機感をもたらしています。自らの大陸で新たな紛争が拡大することを防ぐためにも、欧州がより大きな役割と負担を引き受けるべきだという見方が強まっていると言えます。
一方で、トランプ大統領が紛争の早期終結を強く求めていることに対し、ウクライナ政府やその支援国の一部には、ロシア寄りの条件を受け入れる形で合意が押し付けられるのではないか、と懸念する声もあります。ウクライナへの安全保障の枠組みが、こうした不安をどこまで和らげられるかも重要なポイントとなりそうです。
日本の読者が注目すべきポイント
日本から見ると、ウクライナ紛争は地理的には遠くの出来事のように見えるかもしれませんが、安全保障の考え方や同盟の役割という点で多くの示唆を含んでいます。今回の米欧の動きからは、少なくとも次の点に注目する価値がありそうです。
- 安全保障の約束を「言葉」だけでなく、具体的な部隊や装備の形で裏付けるべきだという発想が強まっていること
- 米国が地上部隊派遣を避けつつ、指揮統制や空からの支援など間接的な関与を重視していること
- 欧州が自らの地域の紛争について、費用とリスクの大部分を引き受ける方向にかじを切りつつあること
今後、米欧がどのような形でウクライナへの安全保障の枠組みを最終決定するのかは、2025年以降の国際秩序を占う上で重要な試金石となります。日本にとっても、同盟国との役割分担や地域安全保障のあり方を考えるうえで、注視すべき動きだと言えるでしょう。
Reference(s):
U.S., European security advisers discuss Ukraine military options
cgtn.com








