国連機関「ガザの飢饉は人災」 深まる食料危機と揺れる各国外交
ガザ地区で飢饉が進行していると国連の専門機関が確認し、国連幹部が相次いで「人災」だと警告しています。食料危機の深刻さに加え、イスラエルの反論やオランダ外相の辞任など、国際社会の対応も揺れています。
ガザで「飢饉」を確認 国連専門機関が警告
IPCが示した厳しい数字
2025年8月下旬、飢饉の有無を判断する役割を持つ委員会「統合食料安全保障段階分類(IPC)」は、ガザ地区で現在すでに飢饉が発生していると正式に認定しました。さらに、今後数週間のうちにデイル・アル・バラフやハーン・ユーニスといった都市にも飢饉が拡大する恐れがあると警告しています。
IPCによると、9月末までにガザの人口のほぼ3分の1にあたる64万人以上が「壊滅的な飢餓」に直面し、さらに114万人が緊急レベルの食料不足に追い込まれる可能性があります。この予測は、ガザの人々の生活がすでに限界にあることを数字で示すものです。
国連トップが相次ぎ「人災」と警告
トム・フレッチャー国連緊急援助調整官の訴え
スイス・ジュネーブでの記者会見で、国連人道問題担当事務次長で緊急援助調整官のトム・フレッチャー氏は、ガザでの飢饉確認は「集団としての恥の瞬間」だと述べました。今回の飢饉について「本来なら防ぐことができた」としたうえで、これをきっかけに世界がより緊急な行動を取るべきだと強く訴えました。
フレッチャー氏は、IPCの報告書を「悲しみと怒りをもって、最初から最後まで読んでほしい」と呼びかけ、「そこに並ぶのは単なる言葉や数字ではなく、一人ひとりの命だ」と強調しました。報告書は、現場で何が起きているのかを示す「否定しようのない証言」だと位置づけています。
さらに同氏は、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に向けて「もう十分だ。即時停戦を。ガザ北部と南部すべての検問所を開き、大量の食料や支援物資を妨げることなく搬入させてほしい」と直接名指しで求めました。
グテーレス事務総長「これは人類の失敗」
IPCの発表を受け、国連のグテーレス事務総長も強い言葉で危機感を表明しました。日本で開催されている大阪・関西万博(Expo 2025 Osaka)を訪問中に出した声明で、「ガザの生き地獄を表す言葉は出尽くしたかに見えたが、そこに新たな一語が加わった。それが飢饉だ」と述べました。
グテーレス事務総長は、この飢饉は「謎ではなく、人災であり、道義的な断罪であり、人類そのものの失敗だ」と指摘。飢饉とは単に食料が足りない状態ではなく、「人間の生存に必要な仕組みが意図的に崩壊させられた結果」だと説明しました。
また事務総長は、イスラエルは占領勢力として国際法上の明確な義務を負っており、ガザの人々に食料や医療物資を確保する責任があると強調しました。そして、この状況が「罰せられることなく続けられることは許されない」と述べています。
UNRWAトップ「設計された危機」
パレスチナ難民を支援する国連機関である国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のフィリップ・ラザリーニ事務局長も、ガザの飢饉は「意図され、つくられた人災だ」と強く批判しました。イスラエルが数カ月にわたり食料や基本的な物資の搬入を妨げ、国連の支援物資までも阻んできたと指摘しています。
イスラエルはIPC報告を全面否定
「飢餓政策はない」と反論
こうした国連側の厳しい認定と批判に対し、イスラエル政府はIPCの結論を強く退けています。ネタニヤフ首相の事務所は、IPC報告を「完全な嘘だ」と非難し、イスラエルは「飢餓を政策としているのではなく、飢餓を防ぐ政策をとっている」と反論しました。
ガザ保健当局が伝える犠牲
一方で、ガザの保健当局は、戦闘が始まって以来、飢餉や栄養失調が原因で273人が死亡し、そのうち112人が子どもだと発表しています。食料と医薬品が不足する中で、最も弱い立場に置かれた人々が犠牲になっている現状が浮かび上がります。
報道によれば、イスラエルは今年3月2日にハマスとの停戦が崩壊した後、ガザへの封鎖を一段と強化しました。これに伴い、食料や燃料、人道支援物資の搬入が大幅に制限され、危機をさらに深刻化させています。
オランダ外相辞任が映す各国外交のジレンマ
入植地製品の貿易禁止案をめぐる溝
ヨーロッパでも、ガザをめぐる政策が政権内部の対立を生んでいます。オランダのカスパル・フェルトカンプ外相は、イスラエルの入植地で生産された製品に対する貿易禁止を検討する案を議会に示したことで批判を受け、その後辞任しました。
フェルトカンプ氏は閣議後の会見で、「イスラエルに対する圧力を高めるために、十分に意味のある追加措置を取ることが自分にはできないと判断した」と説明しました。オランダは「恥じることは何もしていない」としつつも、ガザ市やヨルダン川西岸に対するより厳しい政策を求めた自身の主張には、閣内から根強い反対があったと明かしています。
一人の外相が辞任に追い込まれた背景には、イスラエルとの関係、人道上の責任、国内世論の三つの間で各国政府が揺れている現実が見え隠れします。
私たちはこのニュースから何を考えるか
今回の一連の動きは、ガザの飢饉が自然災害ではなく、政治的・軍事的な判断の積み重ねによって悪化しているという国連側の強い問題提起を浮かび上がらせました。それに対してイスラエル側は事実認定そのものを否定しており、認識のギャップは大きいままです。
同時に、オランダ外相の辞任が示すように、遠く離れた国々でも、イスラエルとの関係や対ガザ政策をめぐって政治的なコストを伴う決断が迫られています。人道危機にどう向き合うのかという問いは、特定の地域にとどまらず、世界の多くの国々が直面する課題になっています。
2025年も終わりに近づく中、ガザの飢饉をめぐる議論は、国際ニュースの一つとして消費して終わりにできる話ではありません。私たち一人ひとりが、どのような価値観と情報に基づいてこの問題を見つめ直すのかが問われています。
Reference(s):
UN agency says famine in Gaza is 'man-made' as food crisis deepens
cgtn.com








