ウクライナ和平進展なければ対ロシア制裁も トランプ大統領が再び警告
米国のトランプ大統領が、ウクライナでの和平合意が進まない場合、ロシアに対する「大規模な制裁」や関税を2週間以内に決断すると警告しました。2025年8月15日のアラスカ会談から約1週間後に出た発言で、ロシアへのいらだちと、ウクライナ戦争の行方をめぐる駆け引きが改めて浮き彫りになっています。
トランプ大統領、「2週間以内に判断」と強硬姿勢
トランプ大統領は、アラスカ州でのプーチン大統領との首脳会談から約1週間後の金曜日、記者団に対し、ウクライナ和平に進展がなければ対ロシア制裁を検討すると述べました。内容は、ロシアに対する「大規模な制裁」や「大規模な関税」、あるいはその両方を科すか、それとも「何もしない」かを含む重要な決断になると説明しています。
この発言は、ウクライナでの戦闘が長期化するなか、「2週間以内に」何らかの判断を下すと公に区切りをつけた点で、ロシア側への圧力を強める狙いがあるとみられます。
アラスカ会談では制裁カードを一時棚上げ
トランプ大統領は、8月15日にアラスカ・アンカレッジで行われたプーチン大統領との会談に向けて、事前に制裁カードを「テーブルから外す」と表明していました。会談後、大統領はプーチン氏について「状況次第では近く米国を訪問するかもしれない」とも語り、関係改善への期待感をにじませていました。
しかし、その約1週間後には再び制裁と関税をちらつかせる形となり、米ロ関係は「対話」と「圧力」が同時に進む不安定な局面にあります。
プーチン・ゼレンスキー会談をめぐる思惑
トランプ大統領は、アラスカ会談後の月曜日にプーチン大統領と電話会談を行い、その中でウクライナのゼレンスキー大統領との首脳会談の調整を始めたと説明しています。米国が、ロシアとウクライナ双方のトップ会談を後押しする構図です。
同じ金曜日、ウクライナのゼレンスキー大統領は首都キーウで、NATO(北大西洋条約機構)のマルク・ルッテ事務総長と共同記者会見を行いました。その場でゼレンスキー氏は、ロシアがプーチン・ゼレンスキー会談の実現を阻もうとしていると主張し、「首脳会談は戦争を終わらせるための要素の一つだ。終戦を望んでいない側は、会談を避ける理由を探すだろう」と述べました。
ロシア側は「議題が整っていない」と説明
一方、ロシアのラブロフ外相は米メディアのインタビューで、アラスカ会談でトランプ大統領から提示された論点について「柔軟に対応する用意がある」と述べました。ただし、プーチン・ゼレンスキー会談そのものについては「まだ日程は決まっていない」とし、議題が固まり次第、プーチン大統領は対話に応じる用意があると強調しています。
トランプ大統領はこうしたロシア側の発言について問われると、「プーチンとゼレンスキーが協力できるかどうか見ていく。両者の関係は『油と酢』のようなものだ」と述べ、相性の悪さをにじませました。
領土と停戦条件をめぐる深い溝
ロシアはこれまで一貫して、ウクライナ東部2地域でウクライナ側がなお保持している領土の放棄を求めてきました。そのうえで、自らが完全に支配すると主張する南部2地域では前線を凍結し、その他の占領地の一部をウクライナ側に戻す可能性を示唆しています。
こうした案は、事実上、ロシアが実効支配する地域の併合を前提としたものであり、ウクライナ側にとっては受け入れ難い内容だと考えられます。
ゼレンスキー氏、停戦の前提条件を緩和
ゼレンスキー大統領はこれまで、首脳会談に入る前に長期の停戦を確保することを条件としてきましたが、足元ではこの前提条件を取り下げています。ただし、「銃口を突きつけられた状態では交渉できない」とも繰り返し述べており、安全な環境での対話を重視する姿勢は崩していません。
NATO第5条に近い「安全保障の約束」を模索
キーウでの会見では、ウクライナの安全保障体制も大きなテーマとなりました。ゼレンスキー大統領は、NATO条約第5条に類似した「第5条のような」安全保障の約束を目指していると説明しました。
NATO条約第5条は、加盟国の一国が攻撃された場合、他の加盟国全体への攻撃とみなし、集団的に防衛するという原則を定めた条項です。ゼレンスキー氏は、ウクライナが同様の仕組みを、欧州諸国や米国との間で確保することを重視しているとし、その具体的な中身については、ウクライナ、欧州、米国の間で協議が続いていると述べました。
武器供与と「優先要求リスト」
ゼレンスキー大統領とルッテ事務総長はまた、NATOと米国が提案した「ウクライナ優先要求リスト」に基づき、ウクライナへの兵器供与を調整していることも明らかにしました。この枠組みは、ウクライナ側の軍事的なニーズを整理し、どの国がどの装備を提供するかを調整するためのものです。
両者は、こうした支援と安全保障の約束を組み合わせることで、ロシア・ウクライナ間の戦争を終結に向かわせることを目指すと強調しました。
今回の動きから見える3つのポイント
今回の一連の発言や動きから、少なくとも次の3点が浮かび上がります。
- 米ロ関係は「対話」と「圧力」の同時進行:プーチン大統領はアラスカ会談後、トランプ政権発足以降、両国関係に「トンネルの先に光が見えてきた」と述べ、「関係完全回復への始まり」だと語りました。一方で、トランプ大統領は制裁や関税という圧力のカードをちらつかせており、関係改善と牽制が同時に進んでいます。
- 和平交渉は依然として領土問題で行き詰まり:ロシアが求める領土放棄と前線凍結の案と、ウクライナ側の主権と安全を重視する立場の差は大きく、首脳会談の開催そのものにもハードルがあります。
- ウクライナの「戦後安全保障」をどう設計するか:ゼレンスキー大統領が第5条型の安全保障を求めていることは、単なる停戦だけでなく、その後の長期的な安全保障枠組みが不可欠だという認識を示しています。
日本を含む国際社会にとっても、経済制裁や安全保障の枠組みが紛争の行方にどう影響するのかを考えることは重要です。トランプ政権の対ロシア政策と、ウクライナが求める安全保障の形が今後どのように折り合いをつけていくのか、引き続き注視する必要があります。
Reference(s):
With no Ukraine peace deal, Trump again threatens Russia sanctions
cgtn.com








