ガザ市周辺でイスラエル軍が新攻勢 国連安保理は飢饉を警告
イスラエル軍がガザ市周辺で新たな地上作戦を進める一方、国連安全保障理事会の多くの理事国がガザの飢饉を「人為的危機」と位置づけ、即時停戦と大規模な人道支援を求めています。
イスラエル軍、ガザ市縁辺部で攻勢強化
目撃証言によると、イスラエル軍の戦車部隊は夜間、ガザ市の縁辺部にある新たな地域へ進軍し、住宅を破壊したため、多くの住民が避難を余儀なくされました。
イスラエル側は、ガザ市をイスラム組織ハマスの「最後の拠点」と位置づけており、新たな攻勢の準備を進めていると説明しています。現在、ガザの人口約200万人のうち、およそ半数がガザ市に暮らしているとされ、イスラエルは住民に対し、事前に避難を指示するとしています。
一方で、戦車部隊はその後、ガザ市の縁辺部からいったん撤収し、すでに数カ月にわたり作戦が続くジャバリア地区へ再び展開したと伝えられています。
イスラエル軍は声明で、自軍部隊がジャバリアやガザ市周辺で「武装組織の拠点を解体し、戦闘員を排除する」作戦を続けていると説明しました。さらに、ハマスの西ガザ地区における治安・情報分野の責任者とされるマフムード・アルアスワド氏を、8月22日に殺害したと主張していますが、ハマス側はこの死亡を確認していません。
拡大する死者と「ほぼ全人口」の避難
ガザ地区の保健当局によると、イスラエルの軍事作戦により、これまでに6万2千人以上のパレスチナ人が死亡したとされています。戦闘はガザ地区全域を深刻な人道危機に追い込み、ほぼ全ての住民が家を追われ、多くの地域が廃墟と化しているといいます。
同保健省は水曜日、栄養失調と飢餓によって新たに10人が死亡し、戦闘開始以降にこうした原因で亡くなった人は313人に達したと発表しました。このうち119人は子どもとされています。一方、イスラエル側は、ハマスが統治するガザの保健当局が公表する死者数に異議を唱えています。
国連安保理「人為的危機」と指摘し即時停戦を要求
国連安全保障理事会では水曜日、アメリカを除く14の理事国が共同声明を発表し、ガザで進行している飢饉を「人為的な危機」と表現しました。声明では、飢餓を戦争の手段として用いることは国際人道法で禁じられていると強調しています。
この共同声明は、次の点を求めました。
- 即時、無条件かつ恒久的な停戦
- ハマスなどに拘束されている全ての人質の解放
- ガザ全域への人道支援の大幅な拡大
- イスラエルによる支援物資搬入制限の即時・無条件の解除
一方、アメリカはこの共同声明には加わらず、安保理会合で飢饉評価を行った機関の報告内容に疑問を呈しました。
飢饉評価をめぐる食い違い
ガザの食料事情を評価したのは、国際的な飢餓指標として用いられる「統合食料安全保障段階分類(IPC)」です。IPCによると、ガザではおよそ51万4千人、つまり人口の約4分の1が飢饉に直面しており、このまま状況が悪化すれば、9月末までに64万1千人に増えるおそれがあると分析しました。
これに対しイスラエルは水曜日、IPCに対して評価の撤回を求め、報告は誤りで偏っていると主張しました。イスラエル側は、IPCがハマスから提供された部分的なデータに過度に依存しており、最近の食料の流入を十分に反映していないと批判しています。
国連安保理の会合では、アメリカのドロシー・シェイ国連代理大使が、IPC報告書の信頼性と妥当性に疑問を投げかけ、「いずれの点でも基準を満たしていない」と述べました。ガザの飢饉の深刻さや原因をめぐり、国際社会の評価が割れている構図が浮き彫りになっています。
周辺国による医療支援と避難
一方で、周辺国による医療支援の動きも続いています。ヨルダン軍は水曜日、ヨルダン・メディカル・コリドー(医療回廊)イニシアチブの一環として、ガザから重い病気を抱える子ども19人と、その家族62人をヨルダンへと避難させたと発表しました。
これで同イニシアチブによる子どもの避難は10回目となります。一行はヨルダン国内の病院で専門的な治療を受ける予定で、作戦はヨルダン保健省と世界保健機関(WHO)と連携して実施されたと説明されています。
ガザ危機をめぐる国際ニュースの焦点
イスラエル軍の作戦と、ガザの深刻な人道状況。そして、その評価をめぐる国際社会の対立。今回の動きから見えてくる論点を、国際ニュースとして整理すると次のようになります。
- 軍事作戦と民間人保護のせめぎ合い
イスラエルはハマスの武装勢力を標的にした作戦だと説明する一方で、ガザ側は多数の市民犠牲と住宅破壊を訴えています。人口が集中するガザ市周辺での新たな攻勢は、さらなる避難と被害拡大への懸念を強めています。 - 飢餓は「戦争の手段」なのか
国連安保理の多くの理事国は、飢餓を戦争の手段として利用することは国際人道法違反だと警告しました。一方、イスラエルとアメリカは飢饉評価の前提やデータに疑問を呈しており、「どこまでが意図的か」「どこまでが評価の問題か」という議論が続いています。 - 周辺国と国際機関の役割
ヨルダンによる医療回廊やWHOとの連携は、紛争地から重症患者を救い出す一つのモデルです。ただし、こうした個別の支援だけでは危機の根本的な解決には至らず、停戦や持続的な支援体制づくりが必要だという指摘も出ています。
ガザをめぐる情勢は、軍事的な動きと人道危機、そして国際社会の評価や対応が複雑に絡み合っています。日本からニュースを追う私たちにとっても、発表される数字や声明だけでなく、その背景にある人々の生活や国際法の議論に目を向けることが、状況を立体的に理解する手がかりになりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








