UNICEF「恐怖と逃避と葬儀の街」ガザ市で子どもたちに迫る危機
ガザ市が、子どもたちにとって「恐怖と逃避と葬儀の街」になりつつある――国連児童基金(UNICEF)の担当者がそう警告しました。北部ガザ地区の最後の避難先となっているこの街で、約100万人の人々、とりわけ子どもたちの命が、軍事攻撃と飢餓の二重の危機にさらされています。
UNICEF「ガザ市はもはや子ども時代が生き延びられない場所」
UNICEF中東・北アフリカ地域事務所のコミュニケーション担当マネージャー、テス・イングラム氏は、ガザ地区からのビデオ会見を通じて、米ニューヨークの国連本部で行われた記者会見に参加しました。
イングラム氏は、ガザ市について「恐怖と逃避と葬儀の街」だと表現し、特に子どもたちの状況が限界に達しつつあると訴えました。ガザ市は、北部ガザ地区で避難先を失った家族にとって「最後の拠りどころ」となってきましたが、その安全すら揺らいでいるといいます。
世界各地で、ガザ市への軍事攻撃が一段と強まれば何が起きるのかについて、危機感が高まっています。イングラム氏は、ガザ市に今なお残る人々は約100万人に上るとしたうえで、これ以上の攻撃は「想像を絶する悲劇」になり得ると警告しました。
繰り返し避難を強いられる家族と、引き裂かれる子どもたち
イングラム氏は、直近9日間にわたりガザ市で多くの家族と面会したといいます。その多くは、自宅からの避難を余儀なくされ、すでに一度避難していたにもかかわらず、再び逃れざるを得なくなった人たちです。身につけている衣服以外、ほとんど何も持たないまま、度重なる移動を続けているといいます。
避難の混乱の中で、親と子が離れ離れになるケースも起きています。イングラム氏は、混乱のなかで両親とはぐれた子どもたちや、すでに子どもを飢餓で亡くした母親、そして今いる子どもたちも同じ運命をたどるのではないかとおびえる母親たちの姿を伝えました。
病院では、破片による傷で体を切り裂かれた子どもたちがベッドに横たわっているといいます。武力攻撃による負傷と、食料や栄養の不足という二重の危機が、ガザの子どもたちの命と日常を追い詰めています。
栄養支援の拠点も半数以上が機能停止
子どもたちを飢餓から守る最後の砦となるべき栄養治療拠点も、十分に機能していません。イングラム氏によると、UNICEFが支援するガザ市内の外来栄養治療センター92カ所のうち、現在稼働しているのは44カ所だけです。
これは、ほぼ半数以上の施設が機能を停止していることを意味します。その結果、栄養失調に苦しむ多くの子どもたちが、必要な治療や栄養補助を受けられない状況に追い込まれています。飢餓や重い栄養失調は、子どもの成長に取り返しのつかない影響を及ぼすだけでなく、命を奪うリスクも高めます。
イングラム氏は、UNICEFの現地チームは「持てるすべての力」で支援を続けているとしつつも、活動が大きく制限されていると強調しました。必要な規模で現地活動が可能になり、十分な資金と支援物資が確保されれば、「ここにいるすべての子どもに手を差し伸べることができる」と訴えています。
「パレスチナの生活が解体されつつある」
イングラム氏は、「ここでパレスチナの生活が解体されつつある」と表現し、ガザ地区の子どもたちが直面している苦しみは偶然ではなく、「一連の選択の結果」だと指摘しました。
ガザ市を含むガザ地区全体が、人々の生活があらゆる角度から攻撃されている場所になっている、とイングラム氏は述べています。これは、日々の武力攻撃だけでなく、水・食料・医療・電力といった基本的な生活基盤へのアクセスが断たれている現状を指しています。
UNICEFが各当事者と国際社会に求めていること
UNICEFは、ガザの子どもたちを守るために、紛争当事者と国際社会に対して具体的な行動を求めています。そのポイントは次の通りです。
- イスラエルに対して:国際人道法に基づき子どもの保護を確保するため、交戦規則の見直しを行うこと。また、ガザ地区に十分な人道支援物資が入るよう、支援ルートの拡充と安全なアクセスを認めるよう求めています。
- ハマスなどの武装組織に対して:残るすべての人質の解放を行うこと。
- 双方の当事者に対して:民間人と病院や給水設備などの重要インフラを守ること。そして停止していた停戦を回復させること。
- 国際社会に対して:現在の壊滅的な状況を終わらせるため、各国が持つ影響力を総動員すること。
こうした呼びかけの背景には、「子どもはどのような状況でも守られるべき存在だ」という国際人道法の根本原則があります。UNICEFは、子どもの安全と権利を紛争の論理よりも優先させるよう、改めて強く求めています。
軍事状況:ガザ市の約4割をイスラエル軍が掌握と説明
軍事面では、イスラエル軍の報道担当者が、イスラエルがガザ市の40%を掌握していると説明しています。部隊は市の外縁部から市街地に進軍しており、市中心部まで数キロの地点に達しているとされています。
一方、ガザ地区の保健当局は、木曜日にガザ地区全体で少なくとも53人がイスラエル側の攻撃により死亡したと発表しました。その大半はガザ市での犠牲者だとされています。
こうした報告は、すでに過酷な状況に置かれている一般市民、とりわけ子どもたちに対するリスクが、日々高まっていることを示しています。
私たちはこのニュースから何を考えられるか
ガザ市の状況は、遠く離れた日本から見ると、どこか別世界の出来事のように感じられるかもしれません。しかし、UNICEFが伝えるのは、戦闘の「ニュース」だけではなく、そこで暮らす人々、とりわけ子どもたちの「日常が奪われていくプロセス」です。
今回の国際ニュースから、次のような問いを持つことができそうです。
- 紛争地域で暮らす子どもたちを守るために、国際社会はどこまで責任を負うべきか。
- 軍事行動の是非だけでなく、「どのように人道スペースを確保するか」という視点は十分に議論されているか。
- 自分たちが接するニュースやSNSの情報は、子どもや市民の視点を十分に伝えているか。
ガザの情勢は今も流動的で、状況は刻々と変化しています。数字や地図だけでは見えにくい「子どもの目線」からの現実を、今回のUNICEFの証言は伝えようとしています。
国際ニュースを追うとき、「誰の視点が含まれていて、誰の視点が欠けているのか」を意識してみることが、私たちのものの見方を静かにアップデートしてくれるかもしれません。
Reference(s):
Gaza City has become 'city of fear, flight and funerals': UN official
cgtn.com








