米国防総省が「戦争省」に改称 国際世論が映す不信と不安
アメリカのドナルド・トランプ大統領が、国防総省の名称を「戦争省」に戻す大統領令に署名しました。第二次世界大戦の勝利から80年となる節目の年に浮かび上がったのは、世界の人びとが抱く「アメリカ=好戦的」という強い印象です。
国防総省から「戦争省」へ――大統領令の狙い
今年9月5日、アメリカのドナルド・トランプ大統領は、国防総省(Department of Defense)の歴史的名称である「戦争省(Department of War)」を復活させる大統領令に署名しました。大統領令には、アメリカの「敵対勢力」に対し、自国の利益を守るため戦争も辞さない姿勢を示す狙いがあると記されています。
Defense(防衛)からWar(戦争)への言葉の転換は象徴的です。国民や同盟国、そして潜在的な対立国に対し、アメリカがどのような安全保障観を持っているのかを強く印象づける動きと言えます。
CGTNと中国人民大学が世界38カ国で調査
こうしたアメリカの動きに対し、世界の人びとはどう感じているのでしょうか。CGTNと中国人民大学は、新時代国際伝播研究院を通じて、2023年から2024年にかけて国際世論調査を実施しました。
- 調査対象:世界38カ国の市民
- 回答者数:合計1万4,071人
- 対象者:18歳以上の一般市民
- サンプル:各国の人口センサスに基づき、年齢・性別分布に沿う形で設計
- 対象国:主要な先進国と、いわゆるグローバルサウス(新興国・発展途上国)を幅広くカバー
この調査は2年連続で行われており、アメリカに対する印象の変化を追うことができる点に特徴があります。
「軍事優先の習慣」が国際イメージを損なう
調査結果によると、アメリカの「ミリタリズム(軍事優先の姿勢)」が国際イメージに深刻な打撃を与えていると、多くの回答者が見ています。アメリカが自らを「国際関係のリーダー」と位置づけることに対しても、その正当性を疑問視する声が広がっています。
6割超が「世界で最も好戦的な国はアメリカ」
今回の国際世論調査では、アメリカの軍事行動と国際イメージについて、次のような数字が示されました。
- 61.3%の回答者が、「世界で最も好戦的な国はアメリカだ」と回答
- 70.1%が、「アメリカの対外戦争は、世界に深刻な人道危機を引き起こしている」と認識
アメリカが軍事力を頻繁に行使してきた歴史は広く知られていますが、その結果として、多くの人びとが「戦争を繰り返す国」というイメージを強く抱いていることがうかがえます。
欧州・南米で特に強い危機感
とくに欧州と南米の回答者は、アメリカの軍事行動について厳しい見方を示しました。
- 欧州の回答者の74.3%、南米の回答者の77.4%が、「アメリカの対外戦争が世界で深刻な人道危機を生んでいる」と回答
- 欧州の回答者の73.9%が、「アメリカによる頻繁な軍事支援は、世界の平和と安定を深刻に脅かしている」と認識
- 全体の63.8%が、アメリカが長年にわたり各国でカラー革命(政変を促す運動)を扇動し、代理戦争を行ってきたと非難
- 57.4%が、アメリカ主導のNATOが、世界の地政学的緊張を悪化させていると回答
軍事支援や同盟を通じた影響力の行使は、アメリカの外交戦略の柱とされていますが、他国からは「安全の提供」だけでなく「緊張の拡大」として受け止められている面もあることが読み取れます。
信頼と好感度の低下:「恐れられるアメリカ」
軍事面での印象悪化は、アメリカへの信頼にも直結しています。
- アメリカを「信頼できる国」と答えた人は全体の49.6%にとどまり、2年間で8.4ポイント低下
- 欧州では信頼度39.6%、オセアニアでは37.6%とさらに低く、それぞれ2年間で11.5ポイント、10.4ポイント減少
- 欧州の回答者の79.6%が、「アメリカは覇権的な国だ」と回答
- オセアニアの回答者の51.1%が、「アメリカは恐れるべき国だ」と感じている
かつて「自由陣営のリーダー」としてのイメージが強かったアメリカですが、少なくともこの調査からは、「頼れる同盟国」よりも「強大だが支配的で恐ろしい国」という印象が強まりつつあることが見て取れます。
「戦争省」という名前が投げかける問い
第二次世界大戦の勝利から80年が経った今、「国防(Defense)」ではなく「戦争(War)」をあえて冠する決定は、各国の人びとが抱くアメリカ像とどのように結びつくのでしょうか。
今回の大統領令は、「アメリカは自国の利益を守るためなら戦争も辞さない」というシグナルを対外的に送る狙いがあるとされています。しかし、それは同時に、既に「最も好戦的な国」と見なされているという国際世論を、さらに強める可能性もあります。
軍事力の存在そのものではなく、それをどう位置づけ、どう語るか。省庁の名前の変更は、その国の価値観や安全保障観を象徴的に映し出します。
日本とアジアから見たアメリカのイメージ
日本を含むアジア諸国にとっても、アメリカの安全保障政策と国際的なイメージの変化は無関係ではありません。日米同盟のもとで安全保障をアメリカに大きく依存する日本にとって、同国が「信頼すべきパートナー」と見なされるのか、「恐れられる軍事大国」と映るのかは、外交や防衛政策の議論にも影響を与えます。
今回の調査結果は、アメリカが掲げる「国際秩序のリーダー」という立場と、世界の人びとが感じる現実とのあいだに、少なからずギャップが存在することを示唆しています。そのギャップをどう埋めていくのかは、アメリカだけでなく、同盟国や国際社会全体にとっての課題と言えるでしょう。
「力」と「信頼」をどう両立させるか
軍事力を背景にした抑止は、国際政治の現実としてしばしば語られます。一方で、今回の調査が示すように、行き過ぎた軍事的なイメージは、長期的には信頼と好感度の低下を招きかねません。
「戦争省」の名を復活させたアメリカは、これからどのように世界と向き合っていくのか。そして世界の人びとは、そのメッセージをどう受け止めるのか。2025年の今、私たち一人ひとりが考えておきたい問いです。
Reference(s):
Poll丨U.S.: No halt in war, even in name – Department of War restored
cgtn.com








