トランプ氏、「戦争省」復活へ 国防総省の名称変更を指示
アメリカの国際ニュースとして注目を集めているのが、ドナルド・トランプ米大統領が国防総省に対して「戦争省(Department of War)」の名称を復活させる大統領令に署名したという動きです。1940年代後半に使われなくなった名称が、2025年のいま再び表舞台に戻ろうとしています。
何が起きたのか:国防総省に「戦争省」の名称復活を許可
ホワイトハウスの発表によると、トランプ大統領は金曜日、大統領令に署名し、アメリカ国防総省(Department of Defense)が公式文書や公のコミュニケーションで、「戦争省(Department of War)」「戦争長官(Secretary of War)」「戦争副長官(Deputy Secretary of War)」といった名称を「副次的な肩書き」として使用することを認めました。
この大統領令は、名称そのものを直ちに法的に変更するものではありませんが、国防総省と国防長官、その部下の高官が、対外的な発信や文書でこれらの呼称を使えるようにする内容です。
さらに、大統領令は国防総省トップのピート・ヘグセット氏に対し、名称変更を恒久化するために必要な「立法措置」や「追加の大統領令」などの提案をまとめるよう指示しています。完全な法的変更には、アメリカ議会の承認が必要になる見通しです。
トランプ氏の説明:「Defenseは守りに聞こえすぎる」
トランプ大統領は先月、ホワイトハウスの大統領執務室で、この名称変更の考え方について次のように語ったとされています。
「Defense is too defensive. And we want to be defensive, but we want to be offensive too if we have to be. So, it just sounded to me like a better name.」
日本語にすれば「ディフェンス(防衛)という言葉は守りに寄りすぎている。もちろん守りたいが、必要なら攻めにも出る。その意味で、戦争省という名前のほうがしっくりくる」というニュアンスです。
言葉の選び方を通じて、「防衛」よりも「戦う意志」や「攻勢に出る姿勢」を前面に出したいというメッセージとも受け取れる発言であり、2025年のアメリカ安全保障政策のイメージをどう描き直そうとしているのかが問われています。
ヘグセット氏「戦士の精神」 批判派は「コストと本質的課題への逸脱」懸念
ヘグセット氏は、この名称変更について「単なる言葉の問題ではなく、戦士の精神を示すものだ」と主張しています。軍の「戦う組織」としての性格を明確に打ち出したい、という立場です。
一方で批判的な声も少なくありません。批判派は、名称変更に伴うロゴや看板、文書、システム変更などに多額のコストが発生する可能性を指摘し、「現実の安全保障上の優先課題から注意をそらすだけだ」と懸念を示しています。
米上院議員のアンディ・キム氏は、英BBCの報道によると、この構想を「子どもじみたアイデア」と呼び、「アメリカの人々が望んでいるのは戦争を防ぐことであり、戦争を誇示することではない」と批判しました。
言葉の選択が、戦争と平和に対する価値観をどう映し出すのか。トランプ政権の支持層と批判層の間で、象徴的な争点になりつつあります。
「戦争省」という名前の歴史的背景
今回のニュースを理解するためには、「戦争省」という名称がアメリカの歴史のなかで果たしてきた役割を押さえておく必要があります。
- 戦争省は1789年に設置され、アメリカ陸軍を統括しました。
- 第1次・第2次世界大戦を含む長い期間、同国の軍事行動を指揮してきました。
- 1940年代後半、軍の組織再編の一環として、戦争省は国防総省に統合され、名称もDepartment of Defenseへと改められました。
つまり、「戦争省」という名前は、アメリカが世界大戦を戦った時代のイメージと強く結びついています。その名称を2025年に再び用いることは、国内外に対して象徴的なメッセージを送ることにもなります。
なぜ名称がこれほど議論になるのか
名称変更をめぐる今回の議論は、単にラベルを変えるだけの話ではありません。言葉は、政治や安全保障の方向性を映し出す「鏡」にもなりうるからです。
「国防総省(Defense)」という名称は、冷戦期以降のアメリカが「防衛」を前面に出しつつも海外で軍事行動を続けてきた歴史と重なってきました。一方、「戦争省(War)」という名称は、よりストレートに軍事力行使の側面を強調します。
そのため、
- 対外的には、アメリカが軍事力の行使により積極的になるのではないか、という印象を与えかねない
- 国内的には、戦争に対する心理的な「ブレーキ」を弱めるのではないか、という懸念を生む
といった点が議論の焦点になっています。一方で、支持派は「現実に軍は戦う組織であり、その実態に即した名称にするべきだ」と主張しています。
今後の焦点:議会承認とアメリカ政治への影響
今回の大統領令は、「副次的な肩書き」として戦争省の名称使用を認める段階にとどまっています。国防総省そのものの正式名称を完全に「戦争省」に変更するには、アメリカ議会による法改正が必要になるとされています。
今後の主なポイントとしては、
- ヘグセット氏がどのような具体的提案をまとめ、ホワイトハウスに提示するのか
- 議会内で、与野党がこの名称変更にどう反応するのか
- 2025年以降のアメリカの安全保障政策や国際的なイメージに、どの程度影響が出るのか
といった点が挙げられます。
名称は象徴にすぎない、という見方もあれば、象徴が政策や世論を動かす引き金になる、という見方もあります。アメリカが自らの軍事力をどう位置づけ、世界にどう見せていくのか。その一端を映す問題として、今後も注視が必要です。
日本と世界にとっての意味合い
日本を含む同盟国・パートナー国にとって、アメリカ国防政策の変化は安全保障環境に直結します。今回の動きは、現時点では名前に関する象徴的な変更にとどまっていますが、アメリカが自国の軍事力をどう語るのか、そしてその語り方が政策や行動にどこまで結びつくのかは、今後の重要なウォッチポイントです。
名称という一見ささいに見える変化だからこそ、その背後にある考え方や価値観をていねいに読み解くことが、国際ニュースをフォローするうえでの大事な視点になっていきます。
Reference(s):
cgtn.com








