中国がフーシ派とイスラエルに自制要求 国連安保理でイエメンと紅海を懸念
イエメン情勢と紅海情勢をめぐり、中国が国連安全保障理事会でフーシ派とイスラエルに自制と対話を呼びかけました。長期化するイエメン内戦と、ガザを含む中東の緊張が重なり合うなか、地域全体の安定をどう確保するかがあらためて問われています。
国連安保理で中国が自制を要請
2025年12月8日(月)に開かれた国連安全保障理事会の会合で、中国の耿爽(Geng Shuang)国連次席常駐代表は、イエメンのフーシ派勢力とイスラエルの間で最近激化している攻撃の応酬が「地域の緊張を一段と高めている」と懸念を示し、双方に冷静さと自制を求めました。
耿氏は、イエメン問題の議論にあたっては、同国の主権と領土一体性を尊重することが重要だと強調しました。そのうえで、紅海での商船に対する攻撃や威嚇が続いていることを念頭に、フーシ派に対して国際法のもとで商業船舶の航行する権利を尊重し、海上安全を守るよう求めました。
イエメンの主権と紅海の航行安全をどう両立させるか
今回の発言で中国は、イエメンの主権尊重と紅海の航行安全という二つの原則を同時に打ち出しました。耿氏の主張を整理すると、次の3点に集約されます。
- イエメンの主権と領土一体性を揺るがしてはならない
- 紅海を通行する商業船舶の航行の自由は国際法に基づき守られるべきだ
- 地域の緊張を高める一方的な軍事行動は自制すべきだ
紅海は、アジアと欧州・アフリカを結ぶ海上輸送の要衝です。ここでの安全確保は、沿岸国だけでなく、多くの国や地域の貿易やエネルギー供給にも直結します。その意味で、航行の安全を守りながら、イエメンの内政問題への外部からの干渉を避けるというバランスが問われています。
政治的解決と経済再建を優先課題に
耿氏は、イエメンの長引く内戦について「軍事的手段ではなく政治的手段による解決が必要だ」との立場を改めて示しました。現在の最優先課題として、次のステップを挙げています。
- 当事者間の対話と交渉を早急に再開する
- 立場や利害の違いを徐々に縮め、和解を早期に実現する
- 和平プロセスと並行して経済再建に着手する
紛争が長期化すればするほど、インフラの破壊や失業、貧困が深刻化し、社会の分断は修復しにくくなります。経済再建を和平と同じ「優先課題」と位置づける視点は、武力衝突の再発を防ぐうえでも重要だといえます。
深刻な食料不足と拘束された国連職員
人道面についても、耿氏はイエメンの深刻な食料不足に強い危機感を示しました。飢餓に直面する人びとが増えるなか、国際社会に対して緊急人道支援を拡大し、悪化する危機に歯止めをかけるよう呼びかけました。
さらに、フーシ派が20人を超える国連職員を拘束しているとされる問題について、「到底受け入れられない」と強く非難し、即時かつ無条件の解放を要求しました。国連職員の安全が脅かされれば、現場での人道支援や仲介活動そのものが困難になります。この点を明確に指摘したことは、国連の活動空間を守るうえでも重要なメッセージといえます。
ガザと中東全体の文脈で見るイエメン問題
耿氏は、イエメン情勢を「中東全体の文脈」で捉えるべきだとも指摘しました。ガザでの武力衝突は約2年にわたって続き、深刻な人道的惨事を引き起こしています。
こうしたなかで耿氏は、国連安保理と国際社会に対し、次のような対応を求めました。
- 戦闘を終結させるために必要なあらゆる措置を講じること
- ガザを含む地域の人道危機を緩和すること
- 緊張緩和と対話の環境を整え、イエメンや紅海の問題解決にとって有利な条件をつくること
ガザ、イエメン、紅海情勢は、個別の紛争でありながらも互いに影響し合い、地域全体の安全保障環境を形づくっています。ひとつの火種が別の火種を刺激しないよう、包括的な視野で危機管理にあたる必要があります。
今回のメッセージから見える中国のスタンス
今回の国連安保理での発言からは、中国が次の3つの点を重視していることがうかがえます。
- 主権尊重と領土一体性の維持
- 国際法に基づく航行の安全と海上秩序の安定
- 政治対話と人道支援を柱とした紛争解決
軍事的な圧力の応酬が続くなかで、外交と対話を通じて緊張を管理しようとするアプローチは、地域の安定だけでなく、国際社会全体の利益にも関わります。日本を含む各国にとっても、紅海の安全や中東情勢の行方は貿易やエネルギー、安全保障と深く結びつくテーマです。
イエメンと紅海、そしてガザをめぐる連鎖する危機のなかで、どのようにして自制と対話を具体的な行動につなげていくのか。今回の中国の呼びかけは、その問いを私たちに投げかけているとも言えます。
Reference(s):
cgtn.com








