トランプ氏「ウクライナは全土奪還も可能」 国連総会で発言、ロシアと欧州が反応
トランプ米大統領が国連総会に合わせてウクライナのゼレンスキー大統領と会談し、欧州とNATOの支援があればウクライナは国土全てを取り戻せると述べました。ロシアとの戦争の行方や欧州の安全保障を左右しかねない発言として、各国の反応が広がっています。
今回のポイント
- トランプ氏がウクライナの全土奪還は可能と明言し、これまでの停戦重視の姿勢からトーンが変化
- ウクライナは米欧の継続的な軍事・経済支援と対ロ制裁強化に期待
- ロシアは発言に反発しつつ、米ロ対話と欧州安全保障での自国の役割を強調
- ドイツ政府は西側の対ロ圧力維持・強化という自国の方針と基本的なトーンは一致と評価
トランプ発言: 停戦重視から勝利の可能性強調へ
国際ニュースとして注目されたのは、トランプ米大統領のウクライナ情勢をめぐる発言です。ニューヨークで開かれている国連総会の場で、トランプ氏はウクライナのゼレンスキー大統領と会談しました。
会談後、トランプ氏は欧州と北大西洋条約機構(NATO)の支援があれば、キーウはウクライナ本来の姿を取り戻すために戦い、勝利する立場にあると強調しました。自身のSNSであるトゥルース・ソーシャルへの投稿でも、ロシアとの軍事・経済状況を詳しく理解した結果として、ロシア経済が苦境にあるとの見方を示し、同様の主張を繰り返しています。
トランプ氏はこれまで、ウクライナはロシアとの交渉で有利なカードを持っていないとして、停戦合意を優先しウクライナ側に譲歩を促す発言を続けてきました。そのため、今回の発言はホワイトハウスの対ウクライナ姿勢が大きく転換したことを示すものとなりました。
ウクライナ: 米欧の最後までの支援に期待
ウクライナの国営通信ウクルインフォルムによると、ゼレンスキー大統領はトランプ氏の発言を非常に前向きなシグナルと歓迎しました。米国がロシアとの戦争が終わるまでウクライナを支援し続けるとのメッセージだと受け止めているためです。
ゼレンスキー大統領は会談で、ロシアのエネルギー網や金融・銀行システムに対する圧力のかけ方について協議したと説明しました。ウクライナ側は、米国によるさらなる対ロ制裁にも期待を寄せています。
ウクライナにとって、戦況を左右するのは武器供与だけでなく、ロシア経済への圧力をどこまで高められるかという点です。エネルギー輸出や金融取引を制限する制裁は、ロシアの戦費調達能力に影響を与える可能性があるため、キーウは米欧と歩調を合わせて圧力強化を模索しています。
ロシア: 発言に反発しつつ、対米対話も強調
一方、クレムリンはトランプ氏の発言に即座に反応しました。ペスコフ報道官はロシアのラジオ番組のインタビューで、ウクライナ問題をめぐる議論は、米ロ関係全体の協議と並行して進めるのが、自国と米国双方の利益にかなうと述べました。
ペスコフ氏は、ウクライナの安全保障の在り方や今後の欧州の安全保障構造など、主要な論点については米国の参加が不可欠だと指摘。そのうえで、トランプ氏はゼレンスキー大統領からの説明に影響を受けており、ロシアとしてはすべてに同意することはできないと述べました。
クレムリン側は、対ロ制裁による問題はあるもののロシア経済は安定していると強調。ウクライナでの軍事行動についても、前線でのゆっくりとした前進は意図された戦略の一部であり、守勢に立たされているのはキーウ側だと主張しました。
またペスコフ氏は、ロシアの立場は外相のラブロフ氏から米側に直接伝えられると述べました。ラブロフ外相は国連総会の傍らで、米国の国務長官との会談を予定しているとしています。
さらにペスコフ氏は、ロシアは欧州の安全保障の不可欠な一部であり、ロシア抜き、あるいはロシアの利益を損なう形で安全保障を語ることは根拠がなく、ロシアにとって危険で受け入れられないと主張しました。ロシアが7月にウクライナとの間で提案した三つの作業部会の設置についても、キーウ側からは返答がないとしています。
ドイツ: 対ロ圧力強化の後押しと評価
欧州側からは、トランプ氏の発言を歓迎する声も出ています。ドイツ政府の報道官は、トランプ氏の発言の基本的なトーンは、ロシアに対する西側の圧力を維持し、さらに高めようとしてきたドイツ政府の政治目標と一致すると述べました。
ドイツ政府はここ数か月、ロシアに対する制裁の抜け穴を塞ぐとともに、欧州連合(EU)や同盟国と連携して追加制裁を検討してきました。報道官は、トランプ氏の発言によって、対ロ制裁の一層の強化について、より集中的に議論できる余地が広がったとの見方を示しています。
何が変わりつつあるのか: 3つの視点
今回の一連の動きは、ロシアとウクライナの戦争をめぐる国際環境に、いくつかの変化の兆しを示しています。日本語で国際ニュースを追う読者にとって、押さえておきたいポイントは次の三つです。
1. 米国メッセージの変化: 停戦から勝利へ
これまでトランプ政権は、ウクライナに一定の譲歩を求めて停戦合意を目指す姿勢をにじませてきました。しかし今回、ウクライナが全土を取り戻すことを公然と支持する発言を行ったことで、政治的メッセージは大きく変わりました。
ウクライナ側から見ると、米国が妥協ではなく勝利を視野に入れた支援を続けるのかどうかは、戦略計画や国民への説明にも影響する重要な要素です。
2. ロシアは安定を強調しつつ米国の席を求める
ロシアは自国経済の安定と戦場での着実な前進を強調し、トランプ氏の見立てに異議を唱えています。同時に、安全保障上の大きな論点では、米国抜きの議論は成り立たないと主張し、米ロ対話の場を確保しようとしています。
これは、軍事的緊張が続く一方で、欧州の安全保障枠組みをどのように再設計するかという、より長期的な議題でもロシアが発言権を維持したいという思惑の表れともいえます。
3. 欧州の制裁姿勢と足並み
ドイツ政府がトランプ氏の基本的なトーンを歓迎したことは、欧州の主要国が対ロ制裁の維持・強化で米国と足並みをそろえる可能性を示しています。制裁の強化は、エネルギー価格や景気に影響を与えるため、欧州各国の国内政治とも密接に結びつきます。
それでもドイツ政府が圧力を高める方向性を改めて確認したことは、短期的なコストを負ってでも、ロシアに戦略的なコストを支払わせるべきだという考えを重視していることを意味します。
これからの注目点
ロシアとウクライナの戦争と欧州の安全保障をめぐる国際ニュースは、今後も流動的な展開が予想されます。今回のトランプ発言と各国の反応を踏まえ、今後注目したいポイントを整理します。
- 米国がウクライナへの軍事・経済支援をどの水準で、どのくらいの期間続けるのか
- 対ロ制裁がエネルギーや金融など、どの分野でさらに強化されるのか
- ロシアと米国・欧州が、戦闘の現場とは別に安全保障秩序をめぐる対話の場を持てるのか
- ウクライナが提案された作業部会など、外交ルートをどのように活用していくのか
戦況の推移だけでなく、こうした外交と経済制裁の動きがどのようにつながっていくのかを追うことで、ニュースの点と線が見えやすくなります。引き続き、変化のサインを丁寧に追っていくことが求められています。
Reference(s):
Trump claims Ukraine in position to 'win all of Ukraine back'
cgtn.com








