米政府シャットダウン危機を解説 何が問題で何が止まるのか
9月30日の予算期限を前に、米連邦政府が再び「シャットダウン」の危機に直面していました。与野党の駆け引きとホワイトハウスの強硬姿勢は、米国政治の深い対立を映し出しています。本稿では、この政府閉鎖危機の背景と仕組みを、日本語で分かりやすく整理します。
米連邦政府のシャットダウンとは何か
米国では毎年、議会が12本の歳出法案を可決し、大統領が署名することで、次の会計年度の「裁量的支出」と呼ばれる予算が成立します。これらは各省庁やさまざまな連邦プログラムの運営資金になります。
しかし、この12本の歳出法案がすべて成立せず、かつ時限的なつなぎ予算も用意されない場合、連邦政府は「シャットダウン」に陥ります。米国の法律によると、シャットダウン中は次のような状態になります。
- 「必須ではない」と分類された政府業務は、一時的に停止される
- 国の安全保障や、法律で給付が義務付けられている事業など「必須サービス」と「義務的プログラム」は継続される
前回の大きなシャットダウンは、2018年末から2019年初めにかけて35日間続きました。このときは、およそ80万人の連邦職員が一時帰休となるか、給与が支払われないまま働かざるを得ない状況に置かれました。
9月30日の期限をめぐる政治の綱引き
今回取り上げる危機は、10月1日に始まる2026会計年度の予算をめぐるものです。会計年度が始まる前日、9月30日までに必要な歳出法案がすべて上下両院を通過していなかったため、全面的な政府閉鎖のリスクが高まっていました。
連邦議会では、共和党が上院で53議席を握る多数派でした。しかし、上院の手続き上、長時間にわたる討議や採決の引き延ばしを避けるためには、共和党だけでは足りず、少なくとも7人の民主党議員の賛成が必要とされていました。
トランプ政権と議会リーダーの動き
こうした状況の中で、議会指導部とトランプ米大統領がホワイトハウスで協議する会合が月曜日に予定されていました。出席予定だったのは、次のような主要メンバーです。
- チャック・シューマー上院少数党(民主党)院内総務
- ハキーム・ジェフリーズ下院少数党(民主党)院内総務
- マイク・ジョンソン下院議長
- ジョン・スーン上院多数党(共和党)院内総務
この会合は、ジョンソン氏とスーン氏の進言を受けて、トランプ大統領が民主党指導部との木曜日の会合をキャンセルしたことを受けて設定されたものです。トランプ大統領は火曜日の時点で、民主党との会合を取りやめ、民主党側の要求を「真剣味を欠き、ばかげている」と強く批判していました。
一方で、ジェフリーズ氏とシューマー氏という民主党の二人のリーダーは、共同声明を発表し、「政府のシャットダウンを回避し、共和党が招いた医療制度の危機に対処するという決意は揺るがない。時間は残り少ない」と述べ、対決姿勢を崩さずに交渉継続の必要性を強調しました。
与野党の主張のすれ違い
両党の主張は大きくすれ違っていました。報道によると、民主党は予算案に医療保険の補助金などを組み込むよう求めていました。一方、共和党指導部は、連邦機関に対する追加の安全保障関連支出を盛り込んだ短期のつなぎ予算を優先しようとしていました。
この対立が解けない限り、9月30日の期限を過ぎて政府機能の一部が停止に追い込まれるリスクが現実味を帯びていたのです。
「新たな混乱」 解雇も視野に入れたホワイトハウス
今回の政府閉鎖の危機が、これまでと決定的に違うと指摘されたのは、ホワイトハウスが示した新たな姿勢でした。対立が解消されずシャットダウンに至った場合、単なる一時帰休ではなく、職員の解雇に踏み込む可能性が示唆されたのです。
行政管理予算局(OMB)が水曜日に出したメモによると、10月1日で予算が切れる機関や、「大統領の優先事項と一致しない」と判断されたプログラムを所管する機関は、職員への解雇通知の送付を検討するよう求められていました。
ブルッキングス研究所のダレル・ウエスト上級研究員は、トランプ政権が空威張りをしているわけではないと見ています。同氏は、トランプ政権はすでに数万人規模の連邦職員を解雇してきており、「今回も本気だと受け止めるべきだ」と指摘しました。
こうした方針の可能性が示されたことで、すでに予算削減や人員削減にさらされてきた連邦政府職員の間では、雇用の安全に対する不安がいっそう高まりました。
今回のシナリオで何が動き、何が止まると想定されていたか
万が一シャットダウンが発生した場合でも、すべての政府機能が一斉に止まるわけではありません。今回のケースでは、トランプ大統領が7月に署名した「ワン・ビッグ・ビューティフル・ビル法」により、いくつかの分野は資金面で守られると見込まれていました。
CNNの報道によると、この法律によって、移民関連業務や国境警備、防衛分野の運用は継続されるとされていました。各機関は、どの業務を続け、どの業務を停止するかについて、個別の緊急時計画を策定することになります。
OMBはメモの中で、この措置によって、大統領の国内政策パッケージを含むいくつかの中核的な優先課題が中断されることはないだけの資金が確保されると説明しました。ただし、今回OMBは、各機関の計画を中央で一括公表するのではなく、個別の機関サイトに掲載させる方針を取っていました。
それでも、多くの分野では打撃が避けられないと見込まれていました。OMBはメモの中で、「義務的支出の追加措置による資金注入の恩恵を受けていないプログラムが、シャットダウンの影響を最も強く受ける」と指摘しています。
一方で、ホワイトハウスや一部の行政府、連邦議会は、規模を縮小しながらも業務を続けるとされていました。ただし、多くのスタッフが一時帰休や、今回に限っては解雇の対象となる可能性も指摘されています。
年次予算に依存しない独立機関や政府支援の事業体は状況が異なります。連邦準備制度(FRB)や郵便事業などは、通常通りの運営を続けると見込まれていました。
「政府の機能不全」が示すもの
メリーランド大学国際安全保障研究センターの研究者クレイ・ラムジー氏は、「ホワイトハウスはこの対立で勝つこと自体を目的にしているように見える」と分析しつつ、大量解雇に踏み切れば世論の反発を招く可能性があるとも指摘しています。
2018〜19年の35日間におよぶシャットダウンに加え、今回のように解雇まで視野に入れた強硬姿勢が示されたことで、米国の予算をめぐる攻防は、一層「政府の機能不全」という印象を強めています。
予算を通すために与野党が議論を尽くすこと自体は民主主義のプロセスの一部ですが、その行き着く先が政府機能の停止や職員の生活不安であってよいのかどうかは、米国社会にとって大きな問いです。
シャットダウンが実際に起きるかどうかにかかわらず、今回の危機は、予算をめぐる対立が連邦政府という巨大な組織の運営をどこまで揺るがし得るのかを明らかにしました。米国政治の行方を見ていく上で、こうした構造的な対立がどのように解消されていくのかが、今後も重要なテーマになりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








