ガザ危機と英国政治の右傾化 SOAS学長が語る「人類への断罪」
2023年10月7日のハマスによるイスラエルへの攻撃と、それに続くイスラエル軍のガザへの報復攻撃からおよそ2年。死者は約7万人にのぼり、負傷者は数えきれないとされています。ロンドン大学・東洋アフリカ研究学院(SOAS)のアダム・ハビブ学長がCGTNのインタビューで語ったガザ情勢と英国政治の右傾化についての見方は、国際ニュースを日本語で追う私たちに多くの問いを投げかけます。
約2年続くガザ危機と「人類への断罪」
ガザでは、2023年10月7日のハマスによる攻撃と、それに続くイスラエル軍の大規模な空爆や地上作戦により、これまでに約7万人が死亡したとされています。ハビブ氏は、このイスラエルの行動をジェノサイド(集団虐殺)的だと厳しく批判しました。
さらに、こうした殺りくを国際社会が止められない現状そのものを「人類全体への断罪」と見なしています。紛争当事者だけでなく、それを止められない世界の政治・世論・制度のあり方が問われているという認識です。
「政治的に仕組まれた飢餓」とテレビで中継される暴力
ハビブ氏がとくに強調したのは、ガザで起きているのは単なる人道危機ではなく、「政治的に仕組まれた飢餓」だという点です。食料や水、医療など、基本的な生活インフラが意図的に締め上げられていると指摘しました。
同時に、彼は次のような趣旨で語っています。
- これほどの規模の殺りくがテレビやオンラインを通じて世界中にリアルタイムで流れていること
- それにもかかわらず、暴力の連鎖を止める具体的な政治行動が十分に起きていないこと
- そのギャップこそが、現代の国際社会の深刻な歪みを示していること
「これほどの規模の殺りくがテレビで放送されていることは、到底受け入れられない」との言葉には、映像時代のガザ危機をどう見るかという根源的な問いが含まれています。画面越しに「知っている」のに、なぜ止められないのか――ハビブ氏は、まさにそこに問題の核心を見ていると言えます。
イスラエルを縛る「右派的ショービニズム」
ハビブ氏はまた、イスラエルの現在の政治状況を「右派的ショービニズム(排外的な民族主義)」に支配されていると表現しました。こうした政治が政府の構成や意思決定に強く反映されており、それがガザでの軍事行動をより過激な方向へと押し進めていると見ています。
彼は、イスラエルがこのような路線を続けることは、長期的には自らの利益をも傷つけると警告しました。ガザでの破壊や死者の映像は、今後数十年にわたってイスラエルのイメージに影を落とし、地域社会や国際社会との関係にも重くのしかかるという見立てです。
英国政治の右傾化と国際世論の空気
今回のインタビューは、ガザ情勢だけでなく、英国政治の右傾化というテーマも射程に収めています。治安や移民、外交政策をめぐる議論が全体として右寄りの方向に流れるなかで、軍事力の行使や強硬な安全保障政策を支持する声が相対的に強まりやすくなっているという問題意識です。
ハビブ氏の発言は、ガザでの暴力が単に中東の問題ではなく、英国を含む各国の政治環境や世論の変化とも結びついていることを示唆しています。国内政治が右傾化し、人権や国際法よりも「力」や「抑止」が優先される空気が強まるとき、遠く離れた紛争地での民間人被害に対しても、より鈍感になってしまう危険があります。
日本の読者に突きつけられる問い
国際ニュースを日本語で追う私たちにとって、ハビブ氏の発言は次のような問いを投げかけています。
- ガザで続く暴力と人道危機を、「遠い国の出来事」として受け流していないか
- 映像やニュースで「知っている」つもりになりながら、その意味を深く考える時間を持てているか
- 自国を含む各国政治の右傾化が、国際社会の対応や世論のあり方にどう影響しているのか
ハビブ氏が語る「人類への断罪」という言葉は重いものです。しかしその重さゆえに、ガザ情勢や英国政治の動きを、日本にいる私たち自身の社会や政治と切り離さずに考えるきっかけにもなります。
ガザとロンドン、そして東京。一見遠く離れた場所で起きている出来事のあいだに、どのようなつながりを見いだすのか。その問いを共有すること自体が、国際ニュースを読む意味の一つだと言えるのではないでしょうか。
Reference(s):
SOAS vice chancellor on Gaza and UK politics' rightward shift
cgtn.com








