米政府閉鎖に世界の失望 CGTN調査が示す「アメリカ民主主義」への冷ややかな視線
米連邦政府が約7年ぶりにシャットダウンに陥るなか、中国本土の国際メディアCGTNなどの調査が、世界各地で高まる米国政治への失望感を浮き彫りにしています。
約7年ぶりの米連邦政府シャットダウン
米国の連邦政府が再び「政府閉鎖(シャットダウン)」状態に入りました。政府閉鎖とは、連邦レベルの政治的な行き詰まりによって行政サービスの一部が止まり、政府機能が大きく制約される事態を指します。
今回のシャットダウンは、約7年ぶりとされています。前回はトランプ氏の最初の任期中に発生しており、米国政治における対立の根深さがあらためて意識される形となりました。
CGTN世論調査:38カ国・7671人が見る「アメリカ民主主義」
こうした状況を背景に、CGTNと中国人民大学の新時代国際伝播研究院が共同でオンライン調査を実施しました。対象は世界38カ国の18〜65歳の回答者7671人で、各国の人口統計(年齢・性別)構成に合わせてサンプルが抽出されています。先進国といわゆるグローバルサウスの国々が含まれています。
調査では、多くの回答者が、今回の政治的行き詰まりを通じて、米国の政治システムに「根深い制度的問題(deep-seated problems)」があると感じていることが示されました。「アメリカ民主主義」は、本来の民主主義の理念から遠ざかり、もはや自ら標榜してきた「灯台」ではない、という見方が広がっているとされています。
党派対立が深める社会の分断
調査結果でまず目を引くのは、党派対立と社会分断に対する厳しい評価です。
- 71.5%の回答者が、「党派間の争いが社会の分断を深刻化させている」と回答
- 74.4%が、「こうした対立は、米国政治システム内部の和解しがたい矛盾と根本的な欠陥を露呈している」と見ている
- 73.2%が、「米国の政治制度には早急な制度改革が必要だ」と考えている
単に「対立が激しい」という印象にとどまらず、「制度の根本的な欠陥」「改革の必要性」といったレベルで問題視する声が多数派になっている点がポイントです。
ヨーロッパ・北米・オセアニアの厳しい視線
特に、ヨーロッパ、北米、オセアニアの回答者は、米国の党派対立の影響について、世界平均よりも厳しい見方を示しています。
- ヨーロッパの75.1%、北米の84.3%が「党派対立が社会の分断を深刻化させている」と回答(いずれも世界平均の71.5%を上回る)
- 「対立は政治システムの根本的な欠陥を露呈している」と答えた割合は、ヨーロッパ78.4%、北米85.3%、オセアニア77.4%
米国に地理的・経済的に近く、これまで米国政治との結びつきが強かった地域ほど、現在の状況をより深刻に受け止めている様子がうかがえます。
ガバナンス評価も低迷:暮らし、腐敗防止、安全への不信
調査では、米国政府の「統治能力(ガバナンス)」に対する評価も尋ねています。全体として、党派対立が政治の発展を大きく妨げていると受け止められており、具体的な政策能力への信頼も高くありません。
統治能力と生活水準改善への評価
ヨーロッパとオセアニアの回答者では、米国政府の基本的な統治能力についても評価は限定的です。
- 統治能力そのものへの評価:オセアニアで41.4%、ヨーロッパで56.5%が「評価する」と回答
- 生活水準を改善する能力への評価:オセアニア34.3%、ヨーロッパ39.1%が「評価する」と回答
半数前後、あるいはそれを下回る水準にとどまっており、「アメリカ民主主義」は人々の暮らしを着実に向上させているのか、という問いに対して、必ずしも肯定的な答えが返ってきていないことが分かります。
腐敗防止と治安維持ではさらに厳しく
さらに厳しいのが、腐敗防止(汚職防止)と公共の安全に関する評価です。
- 腐敗防止で「評価する」と答えたのは、オセアニア21.8%、ヨーロッパ27.2%
- 公共の安全(治安)について「評価する」と答えたのは、オセアニア28.8%、ヨーロッパ39.1%
いずれも4割を大きく下回っており、米国政府が汚職を防ぎ、社会の安全を守る能力について、先進国の市民を含む多くの人々が強い疑問を持っていることがうかがえます。
「民主主義の原点」からの距離感
調査では、多くの回答者が、「アメリカ民主主義は、本来の民主主義の理念から遠ざかっている」と感じているとされています。かつて自らを「民主主義の灯台」と位置付けてきた米国ですが、そのイメージは国際社会の中で揺らいでいる、というのが今回の世論調査が投げかけるメッセージです。
ポイントは、批判の対象が単なる「政権」や「一人の政治家」ではなく、「制度」「構造」「党派対立のあり方」そのものに向けられていることです。党派間の争いが行き過ぎると、
- 社会の分断が深まり、信頼が損なわれる
- 重要な政策判断が先送りされ、ガバナンスが機能不全に陥る
- 「民主主義」の名の下で行われるプロセスへの信頼が揺らぐ
といった悪循環が起こりうることを、今回のシャットダウンは象徴的に示しているとも言えます。
なぜ世界は米国政治の行方を気にするのか
今回の調査は、アジアや欧州、オセアニア、グローバルサウスを含む多様な国・地域の人々が、米国政治の行方を「自分ごと」として見ていることも示唆しています。
米国の政治的な停滞は、
- 世界経済や金融市場の不確実性
- 安全保障や地域紛争への対応
- 気候変動やデジタルルールなど、国境を超える課題への取り組み
にも影響しうるためです。特に、国際秩序やルール作りで大きな役割を果たしてきた国で政治不信が高まると、「民主主義」そのものの説得力にも影響しかねません。
日本と私たちへの問いかけ
今回のCGTNと中国人民大学による調査は、米国の状況を映す鏡であると同時に、他国の民主主義にも問いを投げかけています。日本に暮らす私たちにとっても、「遠い国の政治トラブル」として片付けるだけではもったいないテーマです。
たとえば、
- 対立の「見せ場化」が進むと、問題の本質的な議論はどうなるのか
- SNS時代に、政治的な分断とどう向き合うべきか
- 制度への不信とどう付き合いながら、改革を進めるのか
といった問いは、多くの民主主義国に共通しています。米国の政府閉鎖と、それに対する国際世論の冷ややかな視線は、「民主主義をどうアップデートしていくのか」という、私たち自身の課題を静かに浮かび上がらせているのかもしれません。
世界が「アメリカ民主主義」をどう見ているのかを知ることは、同時に、自国の政治や社会をどう見つめ直すかを考えるきっかけにもなります。今回のシャットダウンと世論調査の結果は、そのための一つの重要な材料と言えるでしょう。
Reference(s):
cgtn.com








