解説:公明党が自民党との連立を解消 日本政治はこれからどう動く?
公明党が、自民党との26年にわたる連立政権から離脱すると表明しました。与党の分裂は、高市早苗・自民党総裁の首相就任の行方や、日本の内政・外交にどんな影響を与えるのでしょうか。
背景:なぜいま公明党は連立離脱を決断したのか
公明党の斉藤鉄夫代表は、高市早苗自民党総裁と約1時間半にわたって会談したのち、与党連立を解消すると表明しました。理由として挙げたのは、自民党内の政治資金をめぐる不祥事への対応が不十分だという認識です。
公明党は、企業・団体からの政治献金が政策決定に与える影響を抑えるため、企業献金への厳しい規制を求めてきました。一方、自民党は企業献金の最大の受け手であり、個々の国会議員への献金に対する規制強化には慎重な姿勢を崩していません。
斉藤氏は、政治献金のあり方が公明党にとって最重要課題だと強調したうえで、自民党の対応は不十分で極めて遺憾だと批判しました。そのうえで、次期首相を選ぶ国会の首相指名選挙では、高市氏には投票しない方針を明らかにし、別の候補を支持する考えを示しています。
高市氏は10月4日の自民党総裁選で勝利し、党として初の女性総裁に就任しました。多くの観測筋は、高市氏が石破茂首相の後継として、日本初の女性首相に就く可能性が高いと見ていますが、公明党の離脱はそのプロセスに不確実性をもたらしました。
野党第1党の立憲民主党の野田佳彦代表は、自民党総裁選の期間中、候補者たちが連立拡大を盛んに語っていた一方で、長年のパートナーだった公明党をどう位置づけるかという視点が欠けていたと指摘しました。公明党にとっては、自らの存在感が薄れかねないという危機感が背景にある、という見方です。
高市早苗氏の首相就任にどう影響するか
国会で首相を選ぶ仕組み
日本の首相は、衆議院と参議院の両院で行われる首相指名選挙によって選ばれます。両院で異なる候補が指名された場合は、衆議院の決定が優先されます。
首相指名選挙は、まず各党が候補者を推薦し、第1回投票で過半数を得た候補が首相に指名されます。誰も過半数を得られなかった場合は、上位2人による決選投票となり、この場合は単純により多くの票を得た候補が首相に選ばれます。
議席数で見ると自民党は依然最大勢力
現在の国会における主な勢力は次の通りです。
- 衆議院(定数465):自民党196、公明党24
- 参議院(定数248):自民党100、公明党21
自民党単独では、衆議院の過半数に必要な233議席、参議院の125議席に届かず、公明党の離脱によって与党の安定多数は崩れます。それでも自民党は最大勢力であり、他党が結束しない限り、第1党の立場は変わりません。
首相指名選挙で野党が一枚岩になれず、どの候補も第1回投票で過半数を取れない場合、自民党総裁である高市氏は決選投票で多数を確保し、首相に選ばれる可能性が依然として高いとみられます。
野党は反自民でまとまれるか
立憲民主党は、野党が結束すれば政権交代も不可能ではないと主張します。しかし、衆議院での同党の議席は148にとどまり、公明党や日本共産党の議席をすべて加えても、自民党の議席数を上回ることはできません。
自民党を下野させるには、日本維新の会や国民民主党の協力が不可欠ですが、これらの政党は立憲民主党と安全保障や経済政策で大きく立場が異なります。そのため、野党側が反自民だけで大同団結するのは現実的には難しいとの見方が支配的です。
一方で、高市氏は国民民主党の支援を取り付ける可能性も探っているとされます。どの政党とどの程度まで歩み寄れるかが、高市氏が首相に就任できるかどうかを左右することになりそうです。
国内政治への影響:単独政権と不安定化のリスク
公明党が連立政権から抜けた場合、自民党は単独で政権を担う少数与党となるか、新たな連立相手を探す必要に迫られます。
仮に自民党が日本維新の会(衆議院35議席)と新たな連立を組んだとしても、両党を合わせた議席は過半数に届きません。この場合、重要法案ごとに他党からの協力を取り付ける必要があり、政策決定のスピードは落ち、政権運営は不安定化しやすくなります。
特に、連立解消の直接のきっかけとなった政治資金規正をめぐる法改正では、自民党が大幅な規制強化に慎重で、公明党が強く踏み込む姿勢を見せています。今後、公明党は与党から距離を置くことで、このテーマを軸に自らの存在感を高めようとする可能性もあります。
首相と総裁のねじれと政治空白
もう一つの懸念は、首相と自民党総裁のポストが一時的に分かれている状況です。慣例では、国会で新しい首相が指名される日に、内閣は総辞職します。その後、新首相が新内閣を組閣し、正式に政権移行が完了します。
報道によれば、次の首相を選ぶための臨時国会は、少なくとも10月20日までは召集されないとみられていました。10月4日の総裁選から臨時国会までの間は、高市氏が自民党総裁、石破氏が首相という首相と総裁のねじれの状態が続くことになります。
こうした政治空白の期間は、政権が大胆な政策判断を下しにくくなります。現職の首相はお別れ内閣と見なされ、新総裁もまだ正式な権限を持たないためです。その結果、経済対策や社会保障改革など、先送りできない課題への対応が遅れるリスクがあります。
外交への影響:対米関係とAPEC
国内の不安定さは、外交にも波及するおそれがあります。石破首相の後継となる新首相には、就任直後から重要な外交日程が待ち受けているとされています。
予定では、10月末にトランプ米大統領の訪日が調整されているほか、韓国ではアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議が開かれる見通しです。新首相は短時間で各国との調整を進め、日本としての立場や優先課題を整理しなければなりません。
政権移行が長引けば、こうした準備に割ける時間は限られます。首脳会談で打ち出すべきメッセージが曖昧になれば、日本の発信力や交渉力に影響が出る可能性もあります。一方で、日本の外交官や官僚機構は継続性を重視しており、トップの交代があっても一定の一貫性を保てるという見方もあります。
これからの焦点:有権者が見るべきポイント
公明党の連立離脱は、日本の政党配置を大きく動かす出来事です。ただし、すぐに政権交代や大きな路線転換につながるとは限りません。今後、次のような点に注目すると、日本政治の次の一手が見えやすくなります。
- 公明党が今後、与党側と距離を取りつつも個別法案ごとに協力するのか、それとも野党との連携を強めるのか
- 自民党と高市氏が、日本維新の会や国民民主党とどこまで政策面で接近できるのか
- 政治資金規正をめぐる法改正が、どの程度まで企業・団体献金の見直しに踏み込むのか
- トランプ米政権やアジアの国々との関係で、日本の外交方針にどの程度の継続性と変化が生まれるのか
連立の枠組みが変わる時は、政党間の数合わせばかりが注目されがちです。しかし、問われているのは最終的にどのような政策が実現し、社会にどんな影響が及ぶのかという点です。今回の公明党の決断をきっかけに、日本政治の方向性を自分なりに見直してみることが求められています。
Reference(s):
Explainer: What's next for Japan after ruling coalition splits?
cgtn.com








