トランプ米大統領が、中央情報局(CIA)に対しベネズエラでの秘密作戦を承認したと明らかにしました。麻薬取引と移民問題を名目としたこの動きは、軍事的エスカレーションと中南米情勢への影響が懸念される国際ニュースです。
トランプ氏が明かした「CIA秘密作戦」の中身
今週、水曜日のホワイトハウスでの記者団とのやり取りで、トランプ大統領はCIAにベネズエラでの秘密作戦を行う権限を与えたと発言しました。これは、これまで水面下で行われがちだった情報機関の活動について、現職大統領が公に認めた形となります。
米紙ザ・ニューヨーク・タイムズ(NYT)によると、新たな承認はベネズエラおよびカリブ海地域での致死的な任務をCIAに認めるもので、同地域での米軍のより広範な作戦と連携する内容だとされています。
「刑務所と精神医療施設を空にした」との主張
トランプ氏は、カラカス(ベネズエラ政府)が受刑者や精神医療施設の入所者を解放し、米国への不法入国を促していると非難しました。また、大量の麻薬がベネズエラ経由で米国に持ち込まれているとも述べました。
同氏は「彼らは刑務所を空にしてアメリカ合衆国に送り込んだ」「何千何万もの受刑者や精神医療施設の人々を許可した」と強い表現で批判しましたが、その場で裏付けとなる証拠は示さなかったとされています。
マドゥロ氏暗殺の可能性は「ノーコメント」
記者から、CIAに対してマドゥロ大統領を殺害するような作戦まで承認したのかと問われると、トランプ氏は直接の回答を避け、「ベネズエラは今、熱さを感じていると思う」とだけ述べました。
明言を避けつつも圧力を誇示するようなこの発言は、対ベネズエラ政策が単なるレトリックを超え、情報機関や軍事力を伴う実行段階に入っているというメッセージとして受け止められています。
ベネズエラ側の反応と地域情勢
トランプ氏の発言を受け、ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領は、メディア報道によれば「CIAが画策するクーデターだ」と強く非難しました。マドゥロ氏はこれまでも一貫して、ワシントンの動きを自国政権の転覆と中南米での軍事的影響力拡大を狙ったものだと批判してきました。
歴史的に、CIAは中南米各地でのクーデターや秘密工作に関与してきたとされ、その記憶は今も地域の政治意識に大きな影響を与えています。今回の発言は、そうした文脈の上に重ねて受け止められている点が重要です。
カリブ海に展開する米軍と「麻薬戦争」
NYTによると、現在カリブ海には約1万人の米軍兵士が展開し、8隻の軍艦と1隻の潜水艦が配置されています。これらの多くはプエルトリコを拠点としているとされています。CIAの新たな権限は、こうした軍事力との連携を前提にしているとみられます。
ホワイトハウスは今年9月以降、ベネズエラ近海の公海上で、麻薬密輸船とされる船舶5隻を攻撃して撃沈し、計27人が死亡したと発表しています。これらの攻撃はすべて対麻薬作戦の一環だと説明されています。
「非国際的武力紛争」という新しい枠組み
今月上旬、ホワイトハウスは議会に対し、テロ組織に指定された麻薬カルテルとの関係について、米国が「非国際的武力紛争」の状態にあると通知しました。どのカルテルを指すのかは明らかにされていません。
「非国際的武力紛争」とは、国家間の戦争ではないものの、国家と非国家主体(武装組織など)の間で一定以上の規模と継続性を持つ戦闘が行われている状況を意味する国際法の概念です。この枠組みが用いられると、軍事力の使用や拘束、情報機関の活動に、戦時に近い法的根拠が与えられる可能性があります。
一方、米麻薬取締局(DEA)の2020年の報告書によれば、南米産コカインの一部はベネズエラ経由で出ているものの、同国は米国向け麻薬の主な供給源ではないとされています。それにもかかわらず、マドゥロ政権は繰り返し、ワシントンの対ベネズエラ政策を「政権交代と軍事的拡大を狙ったもの」と位置づけてきました。
なぜ今回の発言が重いのか
今回のトランプ氏の発言が重く受け止められている背景には、いくつかのポイントがあります。
- 現職大統領が、CIAによるベネズエラでの秘密作戦の存在と承認を公然と示したこと
- ベネズエラへの「陸上での攻撃」を検討していると述べ、海上作戦からの拡大を示唆したこと
- 中南米でのCIAの歴史的な関与が、現在の行動への不信や警戒感を高めていること
- 対麻薬作戦が、「非国際的武力紛争」という戦争に近い枠組みの中で語られ始めていること
これらが組み合わさることで、単なる対麻薬作戦の域を超え、ベネズエラ国家そのものとの緊張が一段と高まるのではないかという懸念が国内外で広がっています。
日本の読者が考えたい3つの視点
日本からこのニュースを読むとき、次のような点が論点になりそうです。
- 情報機関と民主的統制
秘密作戦が拡大するなかで、議会や司法によるチェックはどこまで機能しているのか。民主主義国家における情報機関の位置づけを改めて考えさせられます。 - 対麻薬作戦と人権・法の支配
麻薬対策を名目とした致死的な作戦が、どのような基準と手続きで行われているのかは、人権や法の支配の観点から重要です。国境を越えた作戦であればなおさら、その透明性と説明責任が問われます。 - 中南米の安定と国際秩序
一国の政権交代を外部から後押ししようとする動きは、国際秩序や地域の安定にどのような影響を与えるのか。中南米の政治と安全保障をめぐる力学が、今後どう変化していくのかにも注目が集まります。
トランプ政権のベネズエラ政策は、麻薬、移民、安全保障、民主主義といったテーマが複雑に絡み合う国際ニュースです。日本語で丁寧に追いかけながら、自分なりの問いや視点を深めていくことが求められています。
Reference(s):
Trump says CIA authorized to conduct covert operations in Venezuela
cgtn.com








