ロシアとアラスカを結ぶ「プーチン・トランプ・トンネル」構想とは
ロシアとアメリカをベーリング海峡のトンネルで結ぶという大胆な構想をめぐり、ドナルド・トランプ米大統領は「興味深い」としつつ慎重な姿勢を見せる一方、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は明確に反対の意向を示しました。国際ニュースとしても象徴性の高いこの構想は、どのような狙いと課題を抱えているのでしょうか。
このニュースのポイント
- ロシアとアラスカを結ぶ「プーチン・トランプ・トンネル」構想が浮上
- トランプ米大統領は「興味深い」としつつ、検討が必要と発言
- ワシントンを訪問中のウクライナのゼレンスキー大統領は「満足していない」と表明
- ロシア大統領の投資特使ドミトリエフ氏が提案、総事業費は約八十億ドルを想定
- ベーリング海峡の下に全長約百十二キロの鉄道と貨物専用トンネルを八年弱で建設する構想
提案されたベーリング海峡トンネル構想とは
いわゆる「プーチン・トランプ・トンネル」構想は、ロシアの主権資本基金であるロシア直接投資基金のトップで、ウラジーミル・プーチン大統領の投資特使を務めるキリル・ドミトリエフ氏が提案したものです。
構想では、ロシアとアメリカがベーリング海峡の海底に鉄道と貨物専用のトンネルを建設し、両国を物理的に接続するとしています。事業費はモスクワと国際的なパートナーが負担する八十億ドル規模と見込まれ、全長百十二キロの路線を八年未満で完成させるイメージです。
ドミトリエフ氏は、このトンネルが両国の資源開発の共同推進を可能にし、さらに「団結の象徴」となると強調しています。米国とロシアの関係改善を目指す取り組みの一環として、この案を提示した形です。
施工については、イーロン・マスク氏が率いる米国のトンネル建設企業「ボーリング・カンパニー」が担う可能性に言及しましたが、現時点でマスク氏側から公の反応は出ていません。
トランプ氏は「興味深い」、ゼレンスキー氏は難色
トランプ大統領は木曜日、ワシントンのホワイトハウスで行われた会合の場で記者団に問われ、この構想について「興味深い提案だ。これから考えなければならない」と述べ、前向きとも慎重とも取れる姿勢を示しました。
一方、ロシアとの三年に及ぶ紛争の終結策を協議するためワシントンを訪れていたウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、同じく記者の質問に対し「この構想には満足していない」と明確に否定的な回答をしました。
ロシアとの紛争が続く中で、ロシアとアメリカの大規模なインフラ協力を象徴するプロジェクトが持ち上がることに対し、ウクライナ側が複雑な感情を抱いていることがうかがえます。
ドミトリエフ氏の狙いと米ロ関係の行方
ドミトリエフ氏は、米ロ関係の再活性化を狙ったロシア側のイメージ改善と関係構築の取り組みを主導してきた人物です。今回のトンネル構想も、その延長線上にあると見ることができます。
プーチン大統領がトランプ大統領と電話会談を行い、ウクライナでの紛争の収束に向けた道筋を探るため、ブダペストで会談することで合意した直後、ドミトリエフ氏はこのトンネル構想を打ち出しました。
ロシアとアメリカを直接結ぶインフラは、資源開発や物流の面だけでなく、政治的な「象徴」としても大きな意味を持ち得ます。ドミトリエフ氏が「団結」をキーワードに掲げていることからも、このプロジェクトには経済と外交の両方をてこにしようとする意図が読み取れます。
ベーリング海峡トンネルは現実的か
ベーリング海峡は、最も狭い部分で幅八十二キロとされています。ロシア側のチュクチ半島とアラスカを隔てるこの海峡を横断する構想は、過去少なくとも百五十年にわたり何度も浮上してきましたが、実現には至っていません。
今回の案は、全長百十二キロの鉄道および貨物トンネルを八年弱で建設するという壮大なものです。費用や工期の面で野心的であるだけでなく、技術、環境、安全保障など多方面での課題が予想されます。
- 資金負担をロシアと国際的なパートナーがどのように分担するのか
- ウクライナでの紛争が続く中で、米ロの経済協力をどう位置付けるのか
- 軍事や安全保障上のリスクをどのように管理するのか
- 環境への影響や周辺地域の人々の生活にどのような影響を与えるのか
こうした論点が整理されなければ、構想が具体的な計画に進むことは難しいと考えられます。
インフラは平和の架け橋になり得るか
ドミトリエフ氏は、ベーリング海峡トンネルを「団結の象徴」として位置付けています。国家間の対立が続く時期に、あえて巨大なインフラを掲げる発想は、国際政治において繰り返し見られてきたパターンでもあります。
一方で、ウクライナのゼレンスキー大統領が「満足していない」と即座に反対したことは、現実の紛争や安全保障上の懸念を置き去りにしたまま象徴的なプロジェクトだけが先行することへの警戒感を映し出しているとも言えます。
ロシアとアメリカを物理的につなぐトンネルは、平和へ向けた「架け橋」となるのか、それとも対立が残る中で象徴だけが先行するのか。国際ニュースとしてこの構想を追い掛けることは、インフラと外交、経済と安全保障の関係を考え直す手掛かりにもなりそうです。
Reference(s):
A tunnel from Russia to Alaska? Trump calls proposal 'interesting'
cgtn.com








