2025年APEC首脳会議in韓国・慶州 注目ポイントを整理
2025年10月31日から11月1日にかけて、韓国南東部の歴史都市・慶州でAPEC経済首脳会議が予定されていました。貿易、AI、クリーンエネルギーなど、アジア太平洋の行方を左右する議題が並ぶと見込まれていたこの会議について、押さえておきたいポイントを整理します。
APECとは?21のエコノミーが集う枠組み
APECは、アジア太平洋地域の21のエコノミーが参加し、自由貿易と経済協力の促進を目的とする枠組みです。
参加メンバーには、中国、アメリカ、日本、韓国、オーストラリア、インドネシアなどの主要エコノミーに加え、太平洋や中南米の比較的小さなエコノミーも含まれます。
APECメンバーを合計すると、世界人口の約4割、世界貿易の約半分、世界の国内総生産(GDP)の6割超を占めるとされています。
APEC経済首脳会議は、APECの制度的枠組みの中でも最上位レベルの会合です。1993年にアメリカ・シアトルで初めて非公式な首脳会合が開かれて以来、毎年開催されてきました。
1989年から2023年の間に、アジア太平洋域内の財の貿易額は約3兆ドルから14兆ドルへと拡大し、平均関税率は10%超から5%未満まで下がりました。こうした数字は、APECが過去30年以上にわたり、地域の開放と繁栄を後押ししてきたことを示しています。
なぜ2025年の会議が注目されたのか
2025年のAPEC経済首脳会議は、世界経済の不透明感が高まる中で行われると想定されていました。背景には、次のような要因があります。
- サプライチェーン(供給網)の混乱や分断リスク
- 人工知能(AI)など新技術のルールづくりを巡る議論
- 気候変動への対応やエネルギー転換をめぐる圧力の高まり
こうした中で掲げられたテーマが、英語で『Building a Sustainable Tomorrow: Connect, Innovate and Prosper』というスローガンでした。貿易、テクノロジー、気候行動を一体的に進めるという、野心的な方向性を示しています。
三つの柱:Connect・Innovate・Prosper
Connect:貿易ネットワークとサプライチェーンの強化
「Connect」の柱では、アジア太平洋地域の貿易ネットワークとサプライチェーンをどう強靭にするかが焦点とされました。APECメンバーは、次のような論点を議論すると見込まれていました。
- 世界貿易機関(WTO)改革への支持と具体的な貢献の方向性
- アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)構想を前進させるための協議
保護主義の高まりや地政学的な緊張が続く中で、域内の貿易ルールをどのような形で維持・発展させるかは、APECにとって避けて通れないテーマでした。
Innovate:デジタル変革とAIの包摂性
「Innovate」は、急速に進むデジタル変革を誰も取り残さない形で進めるにはどうすべきか、という視点が中心でした。AIや自動化の進展が経済を押し上げる一方で、その恩恵が一部の国や大企業に偏る懸念も指摘されています。
- デジタル技術にアクセスしづらい小規模な経済や脆弱なグループへの支援
- AIや自動化への適応を支える人材育成やルールづくり
APECの場を通じて、デジタル経済のルールや標準づくりに関する共通認識をどこまで形成できるかが、重要な論点となると見られていました。
Prosper:クリーンエネルギーと包摂的な成長
「Prosper」は、持続可能な成長、とくにクリーンエネルギー、食料安全保障、グリーン投資に焦点を当てる柱でした。
- 再生可能エネルギーや水素などへの投資を通じたエネルギー転換の加速
- 紛争や気候変動、貿易の混乱で不安定化した食料供給網の強化
- 女性や若者、中小企業を包摂的な繁栄の担い手としてどう支えるか
クリーンエネルギーと社会の包摂性をセットで議論することで、「成長」と「持続可能性」を両立させる道筋が問われていました。
誰が参加したのか:21エコノミーのリーダー
慶州でのAPEC経済首脳会議には、21のAPECメンバーから首脳または上級代表が参加すると見込まれていました。
なかでも、アメリカ、中国、日本は、会議全体のトーンや合意内容を左右する主要プレーヤーと見られていました。一方で、ベトナム、インドネシア、チリなどの新興経済は、より包摂的で実務的な成果を求める声を強めると予想されていました。
首脳会議の直前には、企業経営者が集うAPEC CEOサミットも開催される予定で、アジア太平洋各地から数百人規模のビジネスリーダーが参加すると見込まれていました。
半導体とAI分野をけん引するNVIDIAのジェンスン・フアンCEOや、短編動画プラットフォームを運営するTikTokのショウ・ジー・チューCEOなど、テック企業のトップも参加リストに名を連ねるとされていました。
どんな成果が期待されていたのか
APECの経済首脳会議は、法的拘束力のある条約をまとめる場というよりも、アジア太平洋の経済協力の方向性を共有する場として機能してきました。
慶州での会議について、専門家や観測筋は次のような点に注目していました。
- 貿易とデジタル分野での協力をうたう首脳共同宣言がまとまるか
- クリーンエネルギー転換と気候目標に関するコミットメントが打ち出されるか
- WTO改革やFTAAP議論の具体的な前進が示されるか
- デジタル包摂やAIガバナンス(AIのルールづくり)に関する新たなイニシアチブが立ち上がるか
これらの成果は、必ずしも直ちに数値目標や拘束力ある約束につながるとは限りませんが、今後数年の地域協力の「空気感」や優先順位を決めるうえで大きな意味を持つと見られていました。
アジア太平洋のこれからを読むために
2025年のAPEC経済首脳会議をめぐる議題や期待は、アジア太平洋地域が直面する課題と可能性をそのまま映し出しています。貿易、デジタル技術、気候変動という三つの軸をどうつなぎ、どのようなルールと協力の枠組みをつくるのかが問われていました。
会議の公式文書や各エコノミーの発表を丁寧にたどることは、今後の国際経済の流れや地域のパワーバランスの変化を読み解く手がかりになります。日本にいる私たちにとっても、APECの議論はビジネスや暮らしにじわりと影響していくテーマと言えるでしょう。
Reference(s):
cgtn.com








