中国の李首相、RCEP拡大の加速を提案 多国間貿易体制の維持を強調
2025年12月8日、中国の李強首相(国務院総理)はマレーシアのクアラルンプールで開かれた第5回地域的な包括的経済連携(RCEP)首脳会議で演説し、多国間貿易体制を守る決意と、RCEPの拡大・高度化を加速する考えを示しました。世界経済の減速や保護主義の台頭が続く中で、中国が掲げる多国間主義の方向性が改めて打ち出された形です。
RCEP首脳会議で何が語られたのか
李首相は演説の冒頭で、中国が多国間貿易体制を「より強い決意」で守り抜くと強調し、各国とともに真の多国間主義を堅持する用意があると述べました。今回の発言は、世界的に一国主義や保護主義が強まる中で、地域レベルの協力をどう維持・発展させるかという問題意識に根ざしています。
また李首相は、習近平国家主席がかつて示した「開放性、包摂性、ウィンウィンの協力こそ人類の正しい前進の道だ」との考え方をあらためて紹介し、RCEPをその具体的な実践の場として位置づけました。
発効から3年余り、RCEPの役割をどう評価したか
RCEP協定は発効から3年以上が経ちました。この間、世界経済の勢いが全体として弱い中でも、加盟する地域経済は比較的高い成長を維持してきたと李首相は評価しました。
李首相は、RCEPが果たしてきた役割として、主に次の3点を挙げました。
- 加盟メンバー間の共同発展の空間を広げたこと
- 経済安全保障を守るための仕組みを提供してきたこと
- イノベーション協力を進めるためのプラットフォームとなったこと
弱い世界経済という逆風の中で、地域の枠組みが成長と安定を支えてきたというメッセージです。
RCEP拡大と高度化の中身
現在の国際経済・貿易の構図は複雑な変化のただ中にあり、一国主義や保護主義の高まりが地域に大きなリスクをもたらしていると、李首相は危機感を示しました。そのうえで、RCEPをより開かれた地域市場へと発展させるために、加盟メンバーに対し具体的な行動を呼びかけました。
加盟の拡大:香港の参加を支持
李首相は、域内市場の結びつきを強め、地域経済統合を一段と進める必要があると指摘しました。その一環として、RCEPの拡大プロセスを加速させるべきだとし、応募を表明している中国の香港特別行政区(香港)などの参加を支持する考えを示しました。
協定への新たな参加者が増えれば、貿易や投資の流れが広がるだけでなく、協力分野も多様化する可能性があります。李首相の発言は、RCEPを開かれた枠組みとして発展させていくべきだという方向性を打ち出したものと言えます。
協定の高度化:デジタル・グリーン・サプライチェーン
李首相は、RCEPの「拡大」だけでなく「高度化」にも言及しました。すべてのメンバーが協定上の約束を高い水準で履行し、より高い国際的な経済・貿易ルールと積極的に整合させていくべきだと訴えました。
そのうえで、次のような分野でさらなる協力や突破口を探るよう呼びかけています。
- 市場アクセス(関税や非関税障壁の見直しなど)
- 政府調達
- デジタル分野
- グリーン分野(環境・脱炭素への対応など)
- 産業・サプライチェーン
デジタルやグリーン分野、サプライチェーンといったテーマは、地域の経済安全保障や新たな成長源とも直結しています。RCEPの枠組みの中で、こうした分野のルールづくりや協力を深めていこうというのが李首相の提案です。
保護主義の台頭と「真の多国間主義」
李首相は、現在の国際経済・貿易環境をめぐり、一国主義や保護主義が広がっていることを率直に指摘しました。こうした動きは、地域の成長や安定に大きなリスクをもたらす可能性があります。
そのうえで李首相は、RCEPのメンバーがより緊密に連携し、共通の挑戦にともに向き合い、協力して発展を進める必要があると呼びかけました。ここで強調された「真の多国間主義」とは、特定の国だけが利益を得るのではなく、開放性と包摂性を重視し、ウィンウィンの協力を追求する姿勢を指していると言えます。
ASEAN中心性と地域秩序
李首相はまた、中国がこれからも東南アジア諸国連合(ASEAN)の中心性を支持し、各国とともに地域の多国間貿易体制の安定を守っていくと表明しました。
ASEAN中心性を尊重しながらRCEPを運営していくことは、地域の国と地域の間で信頼を育み、協力の枠組みを長期的に維持するうえでも重要な視点です。中国としても、ASEANとの連携を軸に地域協力を強化していく姿勢を示した形となりました。
日本と地域の読者にとっての意味
RCEPは、すでに加盟する国と地域の間で、経済・貿易協力を深めるための重要な枠組みとして機能してきました。今後、香港をはじめとする新たな参加や、デジタル・グリーン分野での協力の高度化が進めば、日本を含む域内の企業や消費者にも少なからぬ影響が及ぶと考えられます。
サプライチェーンの安定、デジタル取引のルールづくり、環境と成長の両立といったテーマは、日本社会にとっても避けて通れない課題です。今回のRCEP首脳会議で示された方向性を、自国の政策やビジネス戦略、キャリアや生活にどう結びつけて考えるのか。読者一人ひとりにとっても、地域の多国間主義の行方を自分ごととして捉えるきっかけとなりそうです。
李首相が示したように、知恵と力を持ち寄り、実務的な成果を積み重ねていけるかどうか。RCEPをめぐる今後の議論と具体的な動きが注目されます。
Reference(s):
cgtn.com








