東アジア経済の「奇跡はこれから」 李強首相がASEANプラス3で強調
2025年10月27日、マレーシアで開かれた第28回ASEANプラス3首脳会議で、中国の李強首相が東アジア経済の将来について演説しました。世界経済の重心がアジアへ移るとされるなか、開放と協力をキーワードに、東アジアの次の成長ストーリーを描いた形です。
ASEANプラス3首脳会議の背景
ASEANプラス3首脳会議は、ASEAN加盟国と中国、日本、韓国(ROK)の首脳が集まり、地域の経済や協力の在り方について議論する場です。第28回会合はマレーシアで行われ、議長国が掲げたテーマは Inclusivity and Sustainability(包摂性と持続可能性)でした。
李強首相は、ティモール・レステのASEAN正式参加を祝福したうえで、東アジア経済が「全体として堅調な勢いを保っている」と評価しつつ、高関税などによる国際経済・貿易構造の変化により、「困難や挑戦が増し、不安定性と不確実性が高まっている」と問題意識を示しました。
「奇跡の時代」は終わっていない
スピーチの前半で李首相が振り返ったのは、1950年代以降の東アジアの歩みです。日本の高度成長、「四つのアジアの虎」と呼ばれた地域経済の台頭、そして中国の改革開放後の急成長まで、東アジアは世界で最も高い成長を続けてきました。
李首相は、こうした「東アジアの奇跡」は過去のものではなく、「これから現実のものとなっていく」とし、世界経済の重心がアジアへ、そしてアジアの中でも東アジアへと移りつつあると強調しました。そのうえで、成功の背景には一貫して開放と協力があったと指摘しました。
- 社会制度などの違いを越え、経済の基本原理に基づく分業と協力を進めてきたこと
- 経済・貿易問題を政治・安全保障の障害にしないよう、対話とコミュニケーションで管理してきたこと
- 地域内の連結性を高め、大きな市場として成長機会を分かち合ってきたこと
この開放と協力を、東アジア経済の「競争力の源泉」として今後も維持すべきだと訴えています。
李強首相が示した3つの柱
スピーチの後半では、ASEANと中国、日本、韓国が今後どのように協力を深めるべきか、3つの柱に整理して提案しました。
1. 平和と自由貿易で「発展に優しい環境」をつくる
第一の柱は、地域の平和と安定、そして自由貿易の維持です。李首相は、世界各地で対立や衝突が続くなか、東アジアが享受してきた平和と安定は「容易に得られたものではない」として、次のような行動を呼びかけました。
- 対立や違いは対話と交渉を通じて適切に解決すること
- 外部からの干渉に反対し、緊張や衝突を生まないようにすること
- 自由貿易と多角的な貿易体制を共同で擁護し、あらゆる形の保護主義に反対すること
- 地域経済統合のプロセスをさらに前に進めること
経済協力の場で、保護主義と外部からの干渉に対して明確に反対を表明した点は、今後の地域協議でも一つの基準になりそうです。
2. サプライチェーン協力で内発的な成長力を高める
第二の柱として李首相が強調したのは、産業・サプライチェーン(供給網)の連携強化です。東アジアは設計・研究開発から素材加工、スマート製造、市場販売まで、産業の全工程で強みを持ち、それぞれの経済が補完関係にあると分析しました。
そのうえで、ASEANプラス3として次の方向性を示しました。
- 各国の強みを持ち寄り、分業と協力のレベルをさらに高める
- 人・モノ・資金・技術といった生産要素の流れをより効率的にする
- 「地域経済・金融協力強化に関する声明」の採択を歓迎し、その履行を通じて金融、貿易、食料安全保障などで実務協力を拡大する
- 地域の内側から新たな成長エンジンを育て、発展の原動力を強める
サプライチェーンの分断リスクが語られることも多いなかで、李首相は分断ではなく「連携の高度化」を打ち出した形といえます。
3. AI・ロボット・クリーンエネルギー…新産業をともに育てる
第三の柱は、新たな技術と産業を東アジア全体の成長ドライバーにすることです。李首相は、AI(人工知能)、ロボット、バイオ医薬などでイノベーションが急速に進んでいると指摘し、10+3各国が科学技術イノベーションと共同研究への支援を強めるよう提案しました。
- ゼロから1を生み出す基礎的なブレイクスルーの力を高める
- それを1からNへと効率的に拡大し、社会や産業に普及させる
- デジタル経済、電気自動車(EV)、クリーンエネルギーなどの分野で協力を深める
イノベーションを「東アジアの新しい成長エンジン」にするというメッセージは、日本を含む地域の産業戦略にも直結するテーマです。
日本と東アジアにとっての問い
李強首相は、ASEANプラス3各国が協力を強めれば、東アジアのより明るい未来をつくり、世界の平和、繁栄、安定にもより大きく貢献できると締めくくりました。
2025年も残りわずかとなるなか、このスピーチは日本や東アジアの政策議論に次のような問いを投げかけています。
- 保護主義的な動きが続くなかで、どこまで自由貿易と多角的な貿易体制を守れるのか
- サプライチェーンの見直しが進むなかで、東アジアの補完関係をどう生かしていくのか
- AIやクリーンエネルギーといった新分野で、どのような協力やルールの枠組みを構築していくべきか
マレーシアでの第28回ASEANプラス3首脳会議で語られた「開放と協力」というキーワードは、東アジアの次の10年を考えるうえで、引き続き重要な軸になりそうです。
Reference(s):
Full text: Remarks by Premier Li Qiang at 28th ASEAN Plus Three Summit
cgtn.com








