第20回東アジアサミットで李強首相が演説 中国のグローバル・ガバナンス構想とは
2025年10月27日、マレーシアのクアラルンプールで開かれた第20回東アジアサミットで、中国の李強首相が演説し、新たな国際秩序づくりに向けた中国の考え方を示しました。本稿では、そのスピーチのポイントを日本語で分かりやすく整理します。
第20回東アジアサミットという舞台
東アジアサミットは、東アジア地域の国々や関係国の首脳が集まり、地域と世界の平和や発展について話し合う場です。20年前、最初のサミットが同じくクアラルンプールで開かれ、今回がちょうど20回目の節目となりました。
李強首相は、初回サミットの宣言を振り返りながら、東アジアサミットの原点として次のような目的を挙げました。
- 平等とパートナーシップの精神で協力を進めること
- 国連憲章や国際法の原則を守ること
- 多国間の仕組みを機能させること
- 人々の生活向上を図ること
この20年間、地域の安定と発展に東アジアサミットが建設的な役割を果たしてきたと評価したうえで、李首相は「創設時の使命を実行してきたことが、その背景にある」と強調しました。
キーワードはグローバル・ガバナンス・イニシアティブ
現在の国際情勢について、李首相は「世界は新たな混乱と変革の時期にあり、平和と発展に新しいリスクと課題が生じている」と述べました。そのうえで習近平国家主席が正式に打ち出したとするグローバル・ガバナンス・イニシアティブ(GGI)を紹介し、今日の世界にとって大きな意義があると位置付けました。
李首相によると、このイニシアティブは次のような原則を強調しています。
- 国家の主権の平等を重んじること
- 国際法の支配を守ること
- 多国間主義を実践すること
- 人々を中心に据える考え方を取ること
- 実際の行動に重点を置くこと
李首相は、この考え方が東アジアサミットの創設時の使命と「完全に一致している」と述べ、中国として各国と連携しながら、このイニシアティブを通じて地域と世界の平和と発展を後押ししていく姿勢を示しました。
李強首相が示した3つの行動方向
スピーチの中で、李首相は今後の協力の方向性として、大きく3つの柱を提示しました。
1. 広範なコンセンサスを築く
まず強調されたのは「広範なコンセンサス(共通認識)づくり」です。李首相は、基本的な点について共通理解がなければ、対話も協力も前に進みにくいと指摘しました。
そのうえで、人類が長い歴史の中で育んできた価値として、相互尊重、平等、公平、正義などを挙げ、これらが人と人、国家と国家の関係を支える基盤だと位置づけました。
さらに、今後の世界の行方については、次のような点をはっきりと認識する必要があると述べています。
- 経済のグローバル化と多極化に向かう流れは後戻りしないこと
- 強い国が弱い国を支配する「弱肉強食」の状態に世界を戻してはならないこと
こうした歴史の流れと人類共通の価値観を踏まえたうえで、現在の「岐路」に立つ世界が正しい方向に進む判断をすることが重要だと訴えました。
2. 顕著な課題に集中する
2つ目の柱は、目の前の顕著な課題に集中することです。李首相は、近年さまざまな形で保護主義が台頭し、国際的な経済・貿易協力を損ない、とりわけ多くの途上国に大きな打撃を与えていると指摘しました。
東アジア地域には多くの途上国があり、経済成長と人々の生活向上が最優先の課題となっています。その意味で、保護主義の影響を乗り越え、地域の内生的な成長力を高めることが差し迫った課題だと位置付けました。
李首相は、そのために次のような方向を提案しました。
- 自由貿易体制を一層しっかりと守ること
- 高水準の地域自由貿易ネットワークを構築すること
- 地域統合を力強く、効率的に進めること
- 人々の福利向上にもっと取り組み、すべての国が包摂的な発展を実現できるようにすること
経済と貿易を通じて相互に利益を得る「ウィンウィン」の関係を広げることが、地域全体の安定にもつながるというメッセージといえます。
3. 規範とルールのシステムを改革・改善する
3つ目の柱は、国際社会を支える規範・ルールのシステムを改革し、改善していくことです。李首相は、世界で混乱や不安定さが増している背景の一つとして、「国際規範のシステムが侵食されていること」を挙げました。
そのうえで、世界が不安定なときこそ、国際法の権威を守ることが一層重要になると強調しました。具体的には次の点を挙げています。
- すべての国がルールを守ること
- 国連を中心とする国際システムを共同で守ること
- 地域協力の枠組みにおいて、ASEANの中心的役割を支持すること
同時に、より公正で公平なグローバル・ガバナンスの仕組みをつくるために、積極的な改革も必要だと述べました。これは、すべての国の利益をよりよく守る仕組みづくりを目指すものだと説明しています。
東アジアと日本にとっての含意
今回のスピーチは、中国の外交スタンスを示すと同時に、東アジア全体の協力の方向性を議論するための材料にもなります。日本を含む地域の国々にとって、次のような論点が浮かび上がります。
- 保護主義が広がる中で、自由貿易と地域統合をどう具体的に進めていくのか
- 国連や多国間の枠組みを支える国際法秩序を、どのような形で強化し、改革していくのか
- ASEANの中心性を尊重しつつ、東アジア全体として包摂的な発展をどう実現するか
各国の立場や優先順位は異なりますが、共通の利益や価値をどこに見出すかが、今後の東アジア協力の鍵となります。
これからの東アジア協力を考える視点
李強首相はスピーチの最後で、「進むべき方向が明確であれば、どれほど遠くても目的地に到達できる」と述べ、中国として地域と世界の平和・発展・繁栄のために、各国と実務的な協力を進めていく意欲を示しました。
東アジアには、経済格差、技術競争、安全保障上の懸念など、多くの現実的な課題があります。その一方で、貿易や投資、人の往来を通じて、相互依存も深まっています。
今回示されたメッセージは、次のような問いを各国や私たちに投げかけているとも言えます。
- どのような国際ルールと価値観を共有しながら、地域の安定を守るのか
- 経済成長と人々の生活向上を両立させるために、どのような協力が可能か
- 東アジアが世界の中で、どのような役割を果たしていくべきか
東アジアサミットは、こうした大きなテーマを首脳レベルで話し合う場です。今回の李強首相の演説は、その中で中国が何を重視しているのかを知る手がかりとなります。日本や地域の読者としても、自国の立場だけでなく、各国の視点を踏まえながら、これからの東アジアのあり方を考えるきっかけにしていきたいところです。
Reference(s):
Full text: Address by Premier Li Qiang at the 20th East Asia Summit
cgtn.com








