BBC会長「トランプ大統領の巨額提訴と戦う」編集問題が国際論争に
BBC(英国放送協会)のサミル・シャー会長が、トランプ米大統領から予告されている名誉毀損訴訟について「徹底的に戦う決意だ」と社内向けメールで示したことが、英国メディアの報道で分かりました。最大で50億ドル規模ともされる法的争いは、国際ニュースとメディアの編集手法のあり方をめぐる大きな論点になりつつあります。
1月6日演説を扱ったドキュメンタリーが火種に
今回の対立の発端となったのは、BBCが制作したトランプ大統領の2021年1月6日の演説を扱うドキュメンタリー番組です。番組では、この演説の別々の部分をつなぎ合わせる編集が行われました。
批判の矛先が向けられているのは、その編集によって、トランプ大統領が支持者に対し米連邦議会議事堂(キャピトル)へ行進し、「fight like hell(死に物狂いで戦え)」と呼びかけたかのような、誤解を招く印象が生まれたとされている点です。
トランプ大統領側「10億〜50億ドルを請求」
報道によると、トランプ大統領はこの番組を名誉毀損にあたると主張し、BBCを相手取って10億〜50億ドルの損害賠償を求める訴訟を起こす意向を示しています。
トランプ大統領側の弁護士が11月9日付でBBCに送付した書簡では、次のような要求が示されたとされています。
- ドキュメンタリーの「完全かつ公正な撤回」
- トランプ大統領に対する謝罪
- 生じたとされる損害への「適切な補償」
書簡は、これらに応じない場合、少なくとも10億ドルの損害賠償を求めて法的措置に踏み切ると警告しています。
BBC会長「名誉毀損の根拠はない」
こうした動きを受け、シャー会長は社員に送ったメールの中で、「法的措置の可能性や費用、和解の可能性について多くの憶測が飛び交っている」と認めつつも、「名誉毀損の訴えには根拠がなく、私たちはこれと戦う決意だ」と強調しました。
BBCはすでに木曜日、番組の編集方法について謝罪していますが、トランプ大統領側が求める金銭的な補償には応じない姿勢を示しました。また、問題となった番組は今後再放送しないとしています。
争点は「編集」と「印象操作」の線引き
今回のケースの中心にあるのは、ニュースやドキュメンタリーの編集がどこまで許されるのか、という古くて新しい問いです。映像の一部を切り取り、順番を入れ替えることは、テレビ報道では日常的に行われています。
一方で、その結果として本人の発言や意図が大きく歪められた場合、名誉を傷つけたと受け止められる可能性があります。名誉毀損をめぐる訴訟では、
- 編集によって事実とは異なる印象が生じたか
- その印象が本人の社会的評価を不当に下げたか
- 放送局側にどこまで注意義務があったか
といった点が重要な争点になっていきます。
グローバルメディアと巨大訴訟のインパクト
10億〜50億ドルという規模の訴訟は、金額の大きさだけでなく、他の国際メディアにも影響を与えうる動きです。もし高額の賠償リスクが現実味を帯びれば、政治家や有力者を批判的に扱う番組の制作に慎重さが増し、「自己検閲」が強まるのではないかという懸念も出てきます。
一方で、視聴者側にとっても、編集された映像をどのように受け止めるかが改めて問われています。SNS上で短いクリップだけが拡散される時代だからこそ、
- 元の発言や文脈を確認できるか
- 編集によって強調されている点は何か
- 他のメディアはどう報じているか
といった視点を持つことが、情報との付き合い方としてますます重要になりそうです。
トランプ大統領側が実際に訴訟を起こすのか、そしてBBCがどのように応じていくのか。今回の動きは、国際ニュースをめぐるメディアと政治の緊張関係を映す一件として、今後もしばらく注目を集めそうです。
Reference(s):
cgtn.com







