米国、ベネズエラへの新作戦と航空便停止 高まる軍事緊張
米国がベネズエラをめぐる新たな作戦段階に入ろうとしているなか、ベネズエラ上空の安全リスクを理由に複数の国際線が運航停止に踏み切り、地域の緊張が一段と高まっています。
本記事では、2025年12月時点で伝えられている米国の動きとベネズエラ側の対応、そして国際航空への影響を、日本語で整理して解説します。
米国、「マドゥロ政権」への新作戦段階を準備
米政府関係者によりますと、米国はニコラス・マドゥロ大統領が率いるベネズエラ政府を主な対象とした、新たなベネズエラ関連作戦の開始を準備しています。具体的な開始時期や規模は明らかになっていませんが、近く実行に移される可能性があるとされています。
第一歩は「秘密工作」の可能性
複数の米政府高官は、この新たな対ベネズエラ作戦の第一段階として、表に出ない形で行われる秘密工作が想定されていると語っています。さらに、選択肢からは「マドゥロ政権の打倒」も排除していないとしています。
ある米政府高官によれば、トランプ米大統領は「米国への麻薬流入を止め、責任者を裁くために、あらゆる形態の米国の力を行使する用意がある」としており、軍事力を含む広範な選択肢を検討していることが示唆されています。ただし、トランプ大統領が最終決定を下したかどうかは不明です。
麻薬対策とテロ指定:新たな「法的ツール」
ペテ・ヘグセス米国防長官は、マドゥロ氏と米国がみなす麻薬カルテルとの関係をめぐり、同組織を外国テロ組織として指定したことが、米国の行動に新たな手段を与えると述べました。
トランプ政権は、マドゥロ氏が「カルテル・デ・ロス・ソレス」と呼ばれる麻薬組織を主導していると非難していますが、マドゥロ氏はこれを否定しています。
マルコ・ルビオ米国務長官は、このテロ指定により、組織への物資や資金などの支援を提供する行為が犯罪となると説明しました。マドゥロ氏の資産やインフラを攻撃することが可能になるのかとの質問に対し、トランプ大統領は「それを可能にする」としながらも、「実際にそうするとは言っていない」と述べ、含みを持たせています。
カリブ海で進む米軍の増強
米ベネズエラ関係は悪化が続いており、ここ数週間で、米軍はカリブ海周辺への兵力増強を進めています。報道によれば、米海軍の最大級の空母に加え、少なくとも8隻の軍艦、さらにF35戦闘機がこの地域に展開しているとされています。
米軍は、カリブ海と太平洋で薬物の密輸に使われているとされる船舶に対し、少なくとも21回の攻撃を実施し、少なくとも83人が死亡したとされています。これらの作戦が、今後予定されている新たな対ベネズエラ作戦とどのように結びつくのかは、現時点では不透明です。
対話を模索する米国、警戒を強めるマドゥロ政権
トランプ大統領は、マドゥロ氏との対話の可能性は依然として開かれているとの姿勢を示してきました。一方でマドゥロ政権は、米軍の増強は自らを権力の座から追放するための準備だと主張し、強い警戒感を示しています。
マドゥロ氏は、米国がベネズエラに対する軍事行動の口実として麻薬取引疑惑などの「攻撃的なレトリック」を強めていると非難しています。両者の間で、圧力と対話のメッセージが交錯している状況です。
航空各社がベネズエラ便を停止 安全リスクが拡大
緊張の高まりは、民間航空にも影響を与えています。米連邦航空局(FAA)は、ベネズエラ上空での軍事活動が増加しているとして、同国上空を飛行するリスクが高まっていると航空各社に警告しました。
これを受けて、ベネズエラ航空協会によると、以下の6社がベネズエラ発着便を一時停止しました。
- ブラジルのGOL
- コロンビアのアビアンカ(Avianca)
- チリのラタム航空(LATAM)
- スペインのイベリア航空(Iberia)
- ポルトガルのTAPポルトガル航空
- トリニダード・トバゴのカリビアン航空
運航停止の期間は明らかになっておらず、ベネズエラと南米・欧州を結ぶ航空ネットワークには少なからぬ影響が出る可能性があります。日本から南米を訪れる旅行者にとっても、欧州や中南米経由の乗り継ぎルートに変更や遅延が生じる恐れがあります。
マドゥロ政権の「長期抵抗」戦略
米国の圧力に対し、マドゥロ政権は「米軍が侵攻した場合の長期抵抗」を想定した防衛戦略の検討を進めているとされています。
マドゥロ氏はここ数カ月、国民に対し民兵組織への参加を繰り返し呼びかけてきました。8月末には、全国で800万人以上が民兵部隊やボリバル国家軍の予備役に参加したと表明しています。
さらに11月には、「包括防衛司令部法」に署名し、民間人と軍人、政府関係者からなる統合防衛司令部の設置を命じました。これは、将来の「武力紛争」に備えた体制づくりの一環と位置づけられています。
何が見えてきているのか:日本の読者への視点
今回の一連の動きからは、いくつかの重要なポイントが浮かび上がります。
- 麻薬対策と政権交代の境界のあいまいさ:米国は麻薬取り締まりを前面に出しつつ、選択肢から「政権打倒」を排除していません。治安対策と政治目的の線引きが問われています。
- 軍事力の段階的なエスカレーション:空母や戦闘機の展開、海上での攻撃回数の増加など、「少しずつ」緊張が高まることで、偶発的な衝突や誤算のリスクが増すおそれがあります。
- 民間航空と一般市民への影響:軍事的な緊張が高まると、真っ先に影響を受けるのは民間機や一般の旅行者です。今回の運航停止は、その一端と言えます。
今後注視すべきなのは、
- 米軍の追加展開や新たな作戦発表の有無
- マドゥロ政権による国内動員や防衛体制強化の動き
- 周辺諸国や国際機関による仲介や対話の試み
- 航空会社による運航再開か、さらなる制限拡大か
ベネズエラ情勢は、エネルギー市場や地域の安定、そして国際秩序にも影響しうるテーマです。距離のある日本からこそ、感情的な二項対立ではなく、関係国それぞれの思惑と、一般市民の安全や生活への影響に目を向けておくことが求められているのではないでしょうか。
※本記事は、報道機関の伝える内容をもとに情報を整理したものです。
Reference(s):
U.S. launches new Venezuela operations as airlines suspend flights
cgtn.com








