トランプ政権のウクライナ和平案 「凍結」を迫る28項目とは
ロシアとウクライナの戦闘が長期化するなか、アメリカのトランプ政権が11月20日に発表した「28項目のウクライナ和平案」が、紛争の「凍結」を迫る新たな圧力として国際社会の注目を集めています。本記事では、この和平案の中身と各国の反応、そして今後の戦況と国際秩序への影響を整理します。
トランプ政権の「28項目和平案」とは
トランプ政権が提示した28項目のウクライナ和平案は、ロシアとの戦闘を終結させることを名目としつつ、ウクライナ側に大きな譲歩を求める内容となっています。主なポイントは次の通りです。
- ロシアが実効支配する地域を事実上認めること
- 北大西洋条約機構(NATO)に加盟しないことをウクライナ憲法に明記すること
- ウクライナ軍の規模を60万人に縮小すること
こうした条件は、単なる停戦案というよりも、アメリカがウクライナに圧力をかけ、ロシアとの間で「凍結された紛争」に早期に移行させるためのレバー(てこ)の性格が強いと受け止められています。同時に、アメリカ国内や同盟国との政策の溝を浮き彫りにしており、最終的な和平合意の「青写真」となる可能性は高くないとみられています。
米国内・ウクライナ・欧州からの反発
この28項目和平案には、アメリカ国内の政治勢力、ウクライナ、そして欧州諸国から広く反発が起きています。
アメリカでは、いわゆる「エスタブリッシュメント」とされる議会の有力議員や主流メディアが、「同盟国との信頼を損ない、長期的な抑止力を弱めかねない」と懸念を表明しています。
ウクライナ側は、「領土的一体性や主権に反する」として拒否感を示しています。世論の間でも領土譲歩への反発は根強く、どのウクライナ指導者にとっても容易に受け入れられる案ではありません。
多くの欧州諸国にとって、ウクライナは自らの安全保障を守る「最前線」です。ウクライナの軍事能力を制限することは、長期的な安全保障リスクになりかねないとの見方が強く、アメリカが単独で和平プロセスを主導しようとしていることへの不満も噴出しています。
欧州の「24項目案」 アメリカ案との違い
こうした不満を背景に、複数の欧州諸国は共同で「24項目の和平案」を提示しました。この案では、次の2点がアメリカ案と大きく異なります。
- ロシアによる領土の変更をあらかじめ認める条件を削除
- ウクライナ軍や防衛産業への制限を設けない
欧州案は、ウクライナの主権と防衛能力を最大限尊重しつつ交渉を進めようとするものであり、アメリカ案は「交渉のたたき台」であっても、「最終合意」にはなり得ないという欧州側のメッセージともいえます。
トランプ政権のねらい:圧力と選挙戦略
今回の和平案には、トランプ政権の二重のねらいがにじみます。一つは、ウクライナに最大限の圧力をかけ、さらなる譲歩を引き出すこと。もう一つは、2026年のアメリカ中間選挙に向けて「公約は守る」という成果をアピールすることです。
アメリカはウクライナに対し、11月27日までに回答するよう締め切りを設定しました。この強硬な姿勢は、2025年2月に行われた米ウ首脳会談後の展開を想起させます。当時、ワシントンは支援停止をちらつかせながら圧力をかけ、最終的にウクライナに鉱物資源をめぐる合意に署名させました。
より深いレベルでは、アメリカは国際的な力のバランスの変化に適応しつつ、自国の戦略資源を再配分し、特定の地域での優位を再確認しようとしているとも解釈できます。ウクライナでの負担を一定程度軽減し、欧州の安全保障リスクを「早めに管理可能な水準」に抑えたいという思惑も透けて見えます。
ジュネーブ協議と「更新版枠組み」
アメリカ案の発表後、アメリカ、ウクライナ、主要欧州諸国はスイス・ジュネーブで緊急協議を行いました。協議後、ワシントンとキーウは共同声明を発表し、「更新版の和平枠組みに合意した」と明らかにしました。
両国は、大統領同士が最終的な決断を下すことを前提に、「集中的な協議を続ける」としています。ただし、領土問題や安全保障の保証など、核心的な対立点はなお解消されていません。それでも、このプロセスが停戦や休戦のタイミングを早めている側面があることも事実です。
「部分的凍結」へ向かうロシア・ウクライナ戦争
今後の展望として、多くの分析は、2026年11月のアメリカ中間選挙までに、ロシアとウクライナの戦闘が「部分的な凍結」段階に入る可能性が高いと見ています。その具体的な形として想定されるのが、「接触線停戦」です。
接触線停戦とは、現在の前線(ライン・オブ・コンタクト)を事実上の境界線として、両軍がそこで戦闘を停止する方式です。法的には最終的な和平ではなく、あくまで「一時停止」に過ぎませんが、現地の人々にとっては生死を分ける重大な変化となります。
戦場では、現時点でロシアが相対的な優位を保ち、ウクライナの戦闘能力を少しずつ削いでいると分析されています。ウクライナと欧州には、なお一定の戦意と支援能力があるものの、戦況が大きく悪化すれば、ウクライナは「より大きな損失を避けるための妥協」を迫られる可能性があります。
政治的にも、トランプ政権が今後、軍事・経済支援の水準を調整しながらウクライナへの圧力を強め、譲歩を引き出そうとする展開が予想されます。ウクライナが領土主権などの核心的な要求を手放す可能性は低いとみられますが、非核心的な分野での譲歩が現実味を帯びてきます。
「凍結」は解決ではない 続く地政学の揺らぎ
ただし、こうした「凍結」が根本的な問題の解決を意味するわけではありません。領土や安全保障の保証をめぐる対立は残り、ロシアとウクライナの深い不信、ロシアと欧州の対立、ロシアとアメリカの戦略的なライバル関係にも、質的な変化は当面見込めないとみられます。
今後は、戦場の外での外交的な駆け引きがさらに激しくなるでしょう。紛争が「部分的に凍結」されたとしても、それはヨーロッパを長期的な安全保障の宙ぶらりん状態に置く新たな地政学的現実となり得ます。
同時に、この紛争後の新しい地政学的な構図は、ヨーロッパだけでなく、グローバルな戦略パワーの分布をも静かに塗り替えていく可能性があります。アメリカ、ロシア、欧州各国に加え、他の主要国・地域がどのように関与し、新たなバランスを模索していくのか。2026年に向け、国際社会が注視すべき局面が続きます。
Reference(s):
Trump's peace plan heaps pressure on Ukraine to freeze the conflict
cgtn.com








