三笘薫と旧日本軍将校の写真にアジアで批判 ブライトンの謝罪は十分か
プレミアリーグのブライトンが、日本代表の三笘薫選手と少年選手が第二次世界大戦中の旧日本軍将校・小野田寛郎の写真カードを掲げる画像をXに投稿したことをきっかけに、アジア各地で反発と議論が広がり続けています。投稿からしばらくたった今も、2025年12月現在、SNS上では批判のコメントが相次ぎ、クラブの対応や歴史認識をめぐる議論が続いています。
何が問題の写真だったのか
問題となったのは、ブライトン・アンド・ホーヴ・アルビオンのアカデミーがXに11月27日に投稿した写真です。プレミアリーグの教育プログラムで優勝したU12(12歳以下)チームを称え、ベルギーで行われるクリスマス・トルース・トーナメントへの遠征を祝う内容でした。
写真には、日本代表の三笘薫選手と少年選手が、それぞれ旧日本軍の将校・小野田寛郎の軍服姿の肖像が印刷されたカードを掲げる様子が写っていました。
投稿後、Xのコメント欄には批判が殺到し、クラブは写真を削除。アカデミーの公式アカウントは土曜日、中国のファンに向けて中国で不快な思いをさせてしまったことを謝罪し、中国のファンを非常に大切にしており決して害意はなかったと説明しました。
ブライトン側は、問題の画像が誤りによって投稿されたものであり、クラブもプレミアリーグも写真に写っている人物について事前に把握していなかったとしています。
写真に写っていた小野田寛郎とは
写真に使われた小野田寛郎は、第二次世界大戦中の旧日本軍の情報将校です。1944年にフィリピンのルバング島に派遣され、終戦後も投降命令を受け入れず、ジャングルに潜伏してゲリラ活動を続けました。
日本の敗戦から約30年後の1974年になってようやく武装解除し、当時最後まで戦い続けた日本兵として世界的に注目を集めました。
BBCの報道によると、小野田は潜伏中に30人の民間人を殺害したとされます。その後、フィリピン政府から恩赦を受けて日本に帰国し、いわゆる英雄的精神の象徴として称賛される一方で、アジアでの戦時加害の記憶とも結びつく、評価の分かれる存在となっています。
中国・韓国・フィリピン…広がる反発
ブライトンの投稿に対しては、特にアジアのファンから強い批判が寄せられました。X上では三笘選手を軍国主義者になぞらえる声や、クラブをファシズムと結びつけて非難する書き込みも見られました。
あるユーザーは「ファシストのクラブだ。アジアの人々に心から謝罪すべきだ」と投稿し、別のユーザーは「軍国主義的な三笘薫は追放されるべきだ」と主張しました。
批判は中国にとどまらず、韓国の新聞・朝鮮日報もこの写真投稿を取り上げ、かつて日本が朝鮮半島を長期にわたって植民地支配した歴史を踏まえ、韓国のファンにも謝罪すべきだと指摘しました。
フィリピンのSNSユーザーからも、まずフィリピンに謝るべきではないかといった声が上がり、戦争の舞台となった国々の人々にとって、小野田のイメージが今も重い意味を持つことが浮き彫りになりました。
今回の騒動は、同じ人物や写真でも、日本とアジア各国とでは受け止め方が大きく異なりうることを改めて示したと言えます。
教育プログラムと歴史認識のギャップ
問題の写真は、プレミアリーグの教育プログラムの一環として行われるクリスマス・トルース・トーナメントへの参加を祝う文脈で使われました。この大会は、第一次世界大戦中の1914年に英独の兵士が戦闘を一時停止し、サッカーをともに楽しんだクリスマス休戦にちなんで名付けられています。
プレミアリーグは、このイベントを、ヨーロッパのトップアカデミー同士が競い合うと同時に、重要な歴史的出来事について学ぶ機会と位置づけています。本来は平和や歴史教育を重視した取り組みのはずでした。
しかし、戦後も武装を続け、民間人の犠牲を出した旧日本軍将校の写真が、そうした教育的イベントの象徴のように使われたことで、多くの人が学ぶべき歴史と持ち上げられている人物の間に大きなねじれを感じたと言えます。
グローバルクラブに求められる歴史への感度
今回のケースは、世界中にファンを持つクラブが歴史に関わる表象を扱うとき、どれほど慎重さが求められるかを示しています。とくに、第二次世界大戦や植民地支配の記憶は、アジアの人々にとって今も身近な問題です。
ブライトンは中国のファンに向けて謝罪しましたが、韓国やフィリピンのファンからは、自分たちへの言及がないことへの疑問の声も出ています。誰に、どう謝るのか。その線引き自体が、歴史認識の難しさを映し出しているように見えます。
また、三笘選手が写真の人物の背景をどこまで認識していたのかは明らかではなく、クラブの広報担当者の判断ミスという側面もありそうです。一方で、SNS上では個人に対する激しい非難やレッテル貼りも見られ、歴史をめぐる正当な批判と人格攻撃との境界線をどう守るかという問題も浮かび上がっています。
日本語でニュースを読む私たちにとっての問い
小野田寛郎は、日本国内では不屈の精神の象徴として語られてきた側面もありますが、アジアの国々では、民間人を含む戦時被害と結びついた存在として記憶されてきました。今回の騒動は、そのギャップがインターネット空間で一気に可視化された事例だとも言えるでしょう。
グローバルに発信するスポーツクラブや企業にとって、歴史をどう扱うべきなのか。そして、私たち一人ひとりは、SNS上で炎上を目にしたとき、どのように事実関係を確かめ、どのような言葉で意見を表明するのか。三笘選手の写真をめぐる今回の出来事は、そんな問いを静かに突きつけています。
Reference(s):
Mitoma photo with WWII officer's image continues spark backlash
cgtn.com








