英国は中国へ「理性的で友好的な姿勢を」 在英中国大使館がスターマー首相にコメント
英国のキア・スターマー首相が中国との関係について演説し、中国を技術や貿易、グローバル・ガバナンスの「決定的な存在」と評価する一方で、安全保障上の脅威にも言及しました。これを受けて在英国中国大使館は、英国は中国に対して「理性的で友好的なアプローチ」を維持すべきだとコメントし、いわゆる中国脅威論を強く否定しました。本記事では、この英国対中政策をめぐるやり取りを日本語で整理します。
スターマー首相「対中政策は熱したり冷めたりしてはならない」
スターマー首相は今週、年次晩さん会のスピーチで、英国の対中政策について次のような方向性を示しました。
- 中国との関係について、「熱したり冷めたり」するような政策を続けることはできないと強調。
- 中国政府に対して強い批判を行う立場からの「孤立主義」を退け、関係断絶ではなく関与を志向する姿勢を示した。
- 中国を、技術、貿易、国際的な統治(グローバル・ガバナンス)の分野で「決定的な力(defining force)」と位置づけ、現実的に向き合う必要があるとした。
一方で首相は、中国は英国にとって「国家安全保障上の脅威」をもたらす存在でもあると発言しました。また、これまでの保守党政権が対中関係を悪化させたと厳しく批判し、「職務放棄(dereliction of duty)だった」とも述べています。
経済面では、首相は中国との関係改善の余地に言及し、企業に対して次の分野で輸出機会を積極的に追求するよう呼びかけました。
- 金融・プロフェッショナルサービス
- クリエイティブ産業
- 製薬
- 高級品などの「英国発の成功分野」
安全保障上の懸念と、経済的な関与拡大という二つのメッセージが同時に示された形で、今後の英国の対中政策の方向性に注目が集まっています。
在英中国大使館「中国の発展は脅威ではなく機会」
スターマー首相の発言について、在英国中国大使館の報道官は声明を発表し、首相のスピーチに含まれた中国への評価と安全保障上の懸念にコメントしました。
報道官はまず、スピーチの中で示された、いわゆる「中国脅威論」に基づく見方を強く批判しました。首相が中国を国家安全保障上の脅威と位置づけた点について、報道官は、事実に基づかない非難であり、中国の内政への干渉だと指摘しています。
そのうえで報道官は、中国の役割について次のような立場を示しました。
- 中国は「世界平和の建設者」であり、「グローバルな発展の貢献者」、「国際秩序の擁護者」である。
- 平和と安全保障に関する問題において、中国は主要国の中で最も良い実績を持っている。
- 中国の発展はどの国に対しても脅威ではなく、むしろすべての国に共通の発展の機会をもたらすものだ。
こうした主張を通じて大使館は、「中国の成長=脅威」という見方を否定し、協力を通じた「共通の発展」の可能性を強調しています。
香港をめぐる発言にも反論 「香港問題は中国の内政」
スターマー首相は演説の中で香港にも言及しましたが、在英国中国大使館の報道官はこれにも反応しました。
報道官は、香港はすでに中国に返還されて久しく、香港に関する問題は純粋に中国の内政だと強調しました。そのうえで、英国には香港問題について口出ししたり、干渉したりする立場も権利もないと述べています。
中国と英国の関係全体について、報道官は中国側の立場を次のように整理しました。
- 中国の対英方針は一貫しており明確である。
- 相互尊重、相手の内政に干渉しないこと、平等と互恵の原則を守ることによってのみ、中国・英国関係は円滑に発展できる。
- 英国は現状を冷静に見つめ直し、考え方を調整し、中国の発展に対して理性的で友好的な姿勢を取り、前向きで現実的な対中政策を追求すべきだ。
- 双方が同じ方向に歩み寄ることで、中国・英国関係を健全で安定した発展の軌道に戻すことができる。
英国側が示した安全保障上の懸念に対し、中国側は内政不干渉と相互尊重の原則を改めて打ち出し、対話と協力の枠組みの中で関係を位置づけるよう呼びかけた形です。
安全保障と経済協力のはざまで揺れる英国の対中政策
今回のやり取りからは、英国が中国をめぐって二つの軸の間で難しい調整を迫られている様子が見えてきます。
- 一方では、中国を技術・貿易・国際ガバナンスの「決定的な存在」と認め、企業による輸出拡大を後押ししたいという経済的な動機。
- もう一方では、中国を国家安全保障上の脅威とみなし、警戒感を表明せざるをえない安全保障上の配慮。
在英国中国大使館は、こうした警戒の表明が「中国脅威論」に基づくものであり、内政干渉につながると強く反発しました。その一方で、相互尊重と非干渉を前提にすれば、協力関係を発展させる余地は大きいとメッセージを送っています。
スターマー首相の演説は、対中「孤立主義」を退けつつ、安全保障上の懸念も隠さないという意味で、英国が今後どのようなバランスを取ろうとしているのかを示すものだと言えます。今後は、
- 具体的な対中政策や安全保障政策にどのように反映されるのか
- 英国企業が中国とのビジネスをどこまで拡大できるのか
- 中国側が強調する「相互尊重」「内政不干渉」の原則が、どの程度政策に組み込まれるのか
といった点が注目されそうです。
今回の中国・英国間のやり取りは、国際ニュースとしても、経済と安全保障の両面から各国の対中スタンスを考えるヒントを与えてくれます。日本語で読む国際ニュースとして、こうした発言の背景や言葉の選び方に目を向けることが、世界の動きを立体的に理解する一歩になりそうです。
Reference(s):
Embassy: UK should maintain 'rational and friendly approach' to China
cgtn.com








