米ホワイトハウス、麻薬容疑船へのダブルタップ攻撃指示を認める
米ホワイトハウスは8日、カリブ海で行われた対麻薬作戦で、最初の攻撃で生存した人々を狙う二度目の空爆、いわゆるダブルタップ攻撃を米軍提督が命じていたことを認めました。攻撃の合法性や戦争犯罪に当たる可能性を巡り、アメリカ国内の政治や国際社会で議論が一段と高まっています。
麻薬容疑船への二度目の攻撃を認める
国際ニュースとして注目されているのは、今年9月初めに行われた対麻薬軍事作戦です。ホワイトハウスによると、国防長官ピート・ヘグセット氏の権限のもと、米特殊作戦軍トップのフランク・ブラッドリー提督が、麻薬密輸容疑の船を標的とした二度目の攻撃を命じました。
この作戦では、9月2日の初回攻撃で損傷したとされる船に対し、生存者が残っている可能性がある状況で再度の攻撃が行われました。二つの攻撃で計11人が死亡し、その後数カ月にわたって続いた作戦全体では、これまでに80人以上が命を落としているとされています。
トランプ政権は、これらの標的を麻薬テロリストと位置づけ、カリブ海や太平洋の公海上で軍事力を用いた対処を進めてきました。ホワイトハウスのカロライン・レヴィット報道官は、ブラッドリー提督は船を完全に破壊し、アメリカへの脅威を排除するため、権限と法律の範囲内で行動したと説明しました。
ダブルタップは戦争犯罪か、米政界で高まる懸念
一方で、この二度目の攻撃はいわゆるダブルタップ戦術として批判を浴びています。ダブルタップとは、最初の攻撃で負傷した人や救助に駆け付けた人を標的に、追撃を行う手法を指します。民間人や戦闘不能となった人を意図的に狙った場合、国際人道法に反する可能性があるとされます。
アメリカ国防総省のロウ・オブ・ウォー・マニュアル(戦時法規マニュアル)には、難破して救助を待つ船員への射撃命令は明白に違法だとの記述があり、今回のケースがこの指針に抵触するのではないかとの指摘が出ています。
民主党のジャッキー・ローゼン上院議員とクリス・バン・ホーレン上院議員は、9月2日の攻撃は戦争犯罪に該当する可能性があると表明。元戦闘機パイロットで宇宙飛行士でもあるマーク・ケリー上院議員も、損傷した船にしがみつく生存者がいたと報じられている点について「一線を越えている可能性がある」と懸念を示し、議会による調査を求めました。
クリス・マーフィー上院議員は、ヘグセット氏が責任をブラッドリー提督に押し付けているとして批判し、与野党の議員の間で違法で極めて非道徳的な行為だったとの見方が広がっていると述べました。
国防総省とホワイトハウスは合法と主張
こうした批判に対し、ヘグセット国防長官はSNSのXで、9月2日の任務を含めブラッドリー提督の戦闘判断を全面的に支持すると投稿し、同提督をアメリカの英雄と称えました。一方で、ダブルタップの決定そのものは提督の判断だったことを強調し、自身の責任回避だとの批判も招いています。
レヴィット報道官は、ヘグセット氏がブラッドリー提督に武力攻撃を許可したうえで、提督は権限の範囲内で行動したと説明しました。国防総省のショーン・パーネル報道官も、9月2日の初弾で生き残った2人をヘグセット氏の命令を満たすために殺害したとする一部報道について、物語全体が誤りだと否定しています。
ヘグセット氏自身も、これまでの攻撃はすべて国際法と武力紛争法に従って実施されており、軍と文民の法律顧問の審査を経ていると強調しています。ただし、二度目の攻撃の詳細や意思決定の経緯について、議会はまだ十分な説明を受けていないとされています。
下院軍事委員会に所属する共和党のマイク・ターナー下院議員は、議員らはダブルタップ攻撃について正式な説明を受けておらず、これらの攻撃がどのように運用されているのかについて強い懸念があると述べました。
軍と政治の関係にも波紋、違法命令を巡る議論
今回の問題は、軍事作戦そのものに加え、軍人が違法な命令にどう向き合うべきかという議論にもつながっています。ケリー議員を含む6人の議員は先月、違法な命令は拒否できると呼びかける動画を公開しました。
この動画はトランプ氏の強い反発を招き、国防総省は発言が潜在的に違法なコメントに該当するかどうか調査を開始しました。文民統制と軍の独立性、そして将兵にとっての命令への忠誠と法の順守のバランスが改めて問われています。
カリブ海の軍事的緊張と地域への影響
トランプ政権は、今回の対麻薬作戦の一環として、世界最大級の航空母艦を含む大規模な軍事資産をカリブ海に展開しています。表向きの目的は麻薬取引の取り締まりとされていますが、周辺地域の緊張は高まりつつあります。
ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領は、ワシントンが麻薬取引を口実に、カラカスでの体制転換を図ろうとしていると非難しました。アメリカの軍事力行使が、麻薬対策を超えて政権交代を目的とした圧力ではないかという疑念が、地域の国々に広がる可能性があります。
これから何が焦点になるのか
今回のダブルタップ攻撃を巡っては、今後いくつかの点が注目されます。
- アメリカ議会がどの範囲まで事実関係を調査し、公聴会などを通じて情報公開を進めるか
- 国防総省が自らの戦時法規マニュアルとの整合性について、どのような説明を行うか
- 対麻薬作戦が、軍事力ではなく司法や警察の枠組みで扱うべき事案ではないかという議論が広がるか
- カリブ海や太平洋での軍事的緊張が、周辺諸国との関係や国際法の議論にどう影響するか
軍事力を用いた麻薬対策は、一見厳しい姿勢に映る一方で、国際法や人権の観点から多くの疑問を投げかけます。今回のアメリカのケースは、テロ対策や麻薬対策の名の下でどこまで武力行使が許されるのか、そしてそれを誰がチェックするのかという、私たち自身にも返ってくる問いを浮かび上がらせています。
日本からこの国際ニュースを見守る私たちにとっても、同盟国であるアメリカの軍事行動とそのルール作りが、将来の安全保障政策や国際秩序にどのような影響を与えうるのか、冷静に考えておく必要がありそうです。
Reference(s):
White House confirms admiral ordered 2nd strike on alleged drug boat
cgtn.com








