イスラエル軍参謀総長「イエローラインはガザの新たな境界」発言の意味
イスラエル軍のエヤル・ザミール参謀総長が、ガザ地区内部に設定された「イエローライン」を「新たな境界線」だと位置づける発言をしました。2023年10月に始まったイスラエルとハマスの衝突から2年以上が過ぎた今(2025年12月時点)、停戦合意の下でもガザの地図と人々の生活は大きく揺れ動き続けています。
ガザ内部に引かれた「新たな境界線」
ザミール参謀総長は今週日曜、ガザ地区北部のベイトハヌーンとジャバリヤを訪れ、現地で師団長らと会談しました。その場で言及したのが、軍が「イエローライン」と呼ぶ線です。
このイエローラインは、10月10日に発効した停戦合意の枠組みの一部として設定されたものとされ、ガザ地区内でイスラエル軍が撤収していない区域を示す線だと説明されています。
ザミール氏は、この線について次のように述べました。
- イエローラインは「新たな境界線」である
- イスラエルのコミュニティを守る「前方防御ライン」として機能している
- 同時に、軍の作戦活動ラインでもある
つまり軍の見方では、ガザ地区の内部に新たな「前線」が引かれ、その内側が軍事的な活動空間として継続している構図が浮かび上がります。
停戦合意下でも続く「実効支配」
ザミール氏は、イスラエル軍がガザ地区の「広範な地域」に対して作戦上のコントロールを確立したと述べています。さらに、軍はそうした地域に「とどまり続ける」と明言しました。
10月10日に停戦合意が発効して以降も、ガザ地区の内部においてイスラエル軍の展開が続いていることを示す発言です。イエローラインは、単なる一時的な停戦ラインではなく、軍の運用を前提とした「固定化されつつある線」として扱われているように見えます。
「ハマスの再建は許さない」多年度計画の一部に
ザミール氏は、ハマスについて「再び勢力を立て直すことは許さない」と強調しました。そのうえで、軍は「奇襲攻撃シナリオ」への備えを進めているとし、これが今後の「多年度計画」の柱になると説明しました。
多年度計画とは、複数年にわたる軍の中長期的な運用や装備、体制を定める計画を指すものです。ザミール氏の発言からは、ガザ地区での展開が短期的な一時措置ではなく、数年単位の構想の中に組み込まれていることがうかがえます。
人質問題「最後の1人」をめぐる発言
今回の発言で、ザミール氏は人質問題にも言及しました。ガザに残されているとされる最後の死亡した人質、警察官のラン・グヴィリ氏の遺体が帰還するまで、任務は完了しないと述べています。
ハマス側は、残っていた20人の生存者全員と、27人の死亡した人質の遺体を引き渡したとされていますが、グヴィリ氏の遺体のみが戻っていない状況だと説明されています。
停戦合意が続く一方で、人質問題がなお軍事的・政治的な意味を持ち続けていることがうかがえます。
イエローライン越境で死亡例が相次ぐ
イスラエル軍は、イエローラインを越えた人物を「容疑者」とみなし発砲したケースについて、「越境した疑いがある人物を射殺した」と説明しています。
報道によると、10月11日以降、こうした事案でイスラエル軍の発砲により死亡したパレスチナ人は数十人規模にのぼります。累計では370人以上が命を落としたとされています。
さらにガザの保健当局の集計では、2023年10月に始まったイスラエルとハマスの衝突以来のパレスチナ側の死者数は、今回の事案も含めて少なくとも70,360人に達したとされています。衝突開始から2年以上を経ても、犠牲者数はなお増え続けています。
境界線が変わるとき、何が変わるのか
ザミール氏が「新たな境界線」と呼ぶイエローラインは、地図上の線であると同時に、ガザ地区の人々の移動や生活、そして今後の政治交渉の前提にもなりかねない線です。
- イスラエル側から見れば、コミュニティを防衛するための前方ライン
- ガザ側から見れば、軍がとどまり続ける地域とそうでない地域を分ける線
- 停戦合意の下で事実上の「境界」として機能し得る新たな区分
停戦という言葉が使われていても、現地では軍事活動と統制が続き、境界線の意味づけも変化し続けています。イエローラインがどこまで恒常的なラインとして定着するのか、それとも今後の交渉で再び動くのかは、ガザの将来像を左右する重要な焦点になっていきそうです。
数字や線で語られる状況の裏側には、それぞれの地域で生活を続ける人々の日常があります。前線として引かれた一本の線が、どのように人の流れや安全、そして政治の風景を塗り替えていくのか。ガザをめぐるニュースを追うとき、その線の意味合いの変化を静かに見つめていく必要がありそうです。
Reference(s):
Israeli army chief claims 'yellow line' is new border inside Gaza
cgtn.com







