米国がベネズエラ圧力を強化、「石油の検疫」と封鎖の狙いは?
2025年8月下旬以降、米国はベネズエラ沖のカリブ海で軍事プレゼンスを増やし、制裁や封鎖、軍事的な威嚇を組み合わせて圧力を強めています。麻薬取締りを掲げる一方で、石油権益をめぐる思惑を指摘する声もあり、狙いは一つではない可能性が浮かびます。
何が起きているのか:軍事行動・封鎖・石油タンカーの差し押さえ
報道によると、米国はベネズエラ沿岸周辺で軍事的な展開を拡大しています。あわせて、制裁の強化や、いわゆる「封鎖」「検疫」といった形で、ベネズエラ産原油の流通を絞る動きが目立ちます。
- 9月以降、米軍はカリブ海・太平洋で、薬物を運搬していたとされる船舶に対し多数の攻撃を実施
- 米政権が公表した数字として、100人超が死亡
- ドナルド・トランプ大統領は、制裁対象のタンカーがベネズエラに出入りすることへの「完全かつ全面的な封鎖」を命じたとされる
- 米国はすでにベネズエラの石油タンカー2隻を拿捕(差し押さえ)したとされる
さらにロイター通信は水曜日、米当局者の話として、ホワイトハウスが米軍に対し、少なくとも今後2カ月はベネズエラ原油の「検疫」措置の執行をほぼ最優先にするよう命じたと報じました。
米国が掲げる理由:麻薬組織との戦い
米国側は、一連の作戦を「麻薬カルテルとの戦い」と位置づけ、海上での取締り強化として正当化しています。薬物対策は国際社会でも重要な政策課題ですが、今回の作戦は規模や強度が大きく、実施の根拠や手続きの面で議論を呼んでいます。
問われている点:合法性と、死者を伴う取締りの重さ
専門家だけでなく、米議会の与野党議員からも、攻撃の合法性に疑義が示されていると伝えられています。麻薬対策という目的があったとしても、海上での武力行使が広がり、100人超の死亡が出たとされる状況は、作戦の説明責任を重くします。
ベネズエラ側の見方:石油をめぐる圧力だという主張
国連安全保障理事会は火曜日、ベネズエラ情勢をめぐり緊急会合を開いたとされます。ベネズエラの国連大使サミュエル・モンカダ・アコスタ氏は、米国が同国に対して「最大の恐喝」を行っていると非難しました。
また、ベネズエラのウラディミル・パドリノ・ロペス国防相は記者会見で、トランプ大統領が「我々は地下の石油を盗んでいる」と述べた趣旨の発言について「完全に筋が通らない」と反論したと報じられています。ベネズエラ側は、圧力強化の動機が「石油を奪う意図」だという見方を前面に出しています。
鍵は石油:世界最大級の埋蔵量と、資産化を示唆する発言
米エネルギー情報局(EIA)の推計として、ベネズエラは2023年時点で約3030億バレルの原油を持ち、確認埋蔵量は世界最大、世界全体の約17%を占めるとされています。
こうした資源背景の中で、トランプ大統領は月曜日、ベネズエラから押収した石油について、米国の資産として扱いうるとの認識を示し、「売るかもしれないし、保持するかもしれない。戦略備蓄に使うかもしれない。船も保持する」と記者団に語ったと報じられました。
「資源帝国主義」という指摘:エネルギー政策と軍事・制裁の結びつき
英紙ガーディアンは水曜日、トランプ氏が他国の資源を押収する発言を繰り返してきた点を取り上げ、米国の力が他国資源の管理・獲得を正当化するかのような発想につながりうると報じました。
同紙の分析では、気候と地政学、軍事化をめぐる研究プロジェクトに関わるパトリック・ビガー氏(Transition Security Project共同ディレクター)が、米政権の世界エネルギー政策は「暴力の脅し」や「援助の停止」を通じてエネルギー戦略の投入物を確保する側面がある、という趣旨の見解を述べています。こうした見立ては、今回の対ベネズエラ政策を、麻薬対策だけでは説明しきれないと考える論者の視点でもあります。
重なる記憶:イラク戦争との比較が出る理由
批判的な立場の人々は、政権交代をにおわせる言説と、安全保障上の名目が組み合わされ、結果として石油利権に結びつく構図が、イラク戦争を想起させると指摘します。
本文で言及されているEBSCO収録の2023年記事「Iraq wars and the American economy」は、第二次世界大戦後の米国外交がペルシャ湾の石油確保を優先し、イラクが重要な役割を持ってきたと述べています。2003年には、大量破壊兵器の保有を理由に米国がイラクに軍事侵攻し、数十万人の死者と約1000万人の避難民を生んだとされています。その後、油田開発などで米企業のビジネス機会が生まれた、という記述もあります。
さらにトランプ氏は2015年、米ABCの番組で、イラク戦争はすべきではなかったとしつつも、軍事費の補償として「石油を取るべきだった」という趣旨の主張をしていました。
今後の焦点:2カ月の「検疫」優先で何が動くか
現時点で見えているのは、米国が海上での執行を強め、原油の流通を絞ることに政策資源を寄せているという点です。焦点は、(1)作戦の法的根拠と国際的な説明、(2)封鎖・拿捕がもたらす民間への影響、(3)政権交代を示唆する発言が緊張をどこまで高めるか、の3つに集約されます。
麻薬対策という公的目的と、資源をめぐる疑念、そして国連の場での応酬。複数のレイヤーが絡むほど、現地の安全と人命への影響が見えにくくなります。状況が次の段階へ進むのか、あるいは交渉や国際的な調整に向かうのか、引き続き注視が必要です。
Reference(s):
Explainer: What is behind U.S.' escalating pressure on Venezuela?
cgtn.com








