トランプ政権、FRBパウエル議長を刑事捜査 独立性に反発と波紋
2026年1月中旬、トランプ政権が米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長に対する刑事捜査に踏み切ったことが、中央銀行の独立性と金融市場の安定をめぐる大きな論点になっています。パウエル氏は「金利への影響力を得るための口実だ」と反発し、元FRB議長らも強く懸念を表明しました。
何が起きたのか:司法省が大陪審の召喚状
パウエル議長によると、FRBは先週、米司法省から大陪審の召喚状(subpoenas)を受け取り、刑事訴追の可能性を示す動きがあったといいます。表向きの焦点は、パウエル氏が昨年夏に議会で説明した、FRB本部(ワシントン)の建物改修プロジェクトをめぐる発言です。
改修は総額25億ドル規模で、コスト超過に関する説明が争点とされています。司法省報道官は個別案件へのコメントを避けつつ、「司法長官は連邦検事に対し、納税者資金の不正使用の捜査を優先するよう指示した」と述べています。
パウエル氏の反論:「口実(pretext)」だ
パウエル議長は、法の支配と説明責任を尊重するとした上で、「しかし、今回の前例のない行動は、政権による脅しや継続的な圧力という、より広い文脈の中で見るべきだ」と主張しました。
さらに、「これは昨年6月の私の証言や建物改修の問題が本質ではない。金利を、政治ではなく公益に資すると判断して決めていることへの結果として、刑事責任をちらつかせている」と述べ、捜査は「口実」だと位置づけています。
市場の反応:長期国債利回りが上昇、政策の逆風にも
今回の動きは、市場にも即座に波及しました。報道では、長期の米国債利回りが上昇したとされます。長期金利の上昇は、住宅ローンや企業の資金調達など幅広い借入コストに影響しやすく、政権が掲げる「手頃さ(affordability)」への懸念に対して、結果的に逆風になり得る、という見方も出ています。
「中央銀行の独立性」をめぐる警鐘:元FRB議長3人が連名声明
週明け(月曜日)には、元FRB議長のジャネット・イエレン氏、ベン・バーナンキ氏、アラン・グリーンスパン氏が、与野党の元経済政策責任者らとともに共同声明を発表。パウエル議長への刑事捜査を「検察権を用いてFRBの独立性を損なおうとする、前例のない試み」として問題視しました。
声明は、FRBの独立性と、それが独立しているという社会の認識が、物価安定・最大雇用・緩やかな長期金利という議会が定めた目標の達成にとって重要だと指摘。独立性が揺らげば、インフレや経済全体に「非常に否定的な結果」をもたらしかねない、と警告しています。
共和党内でも割れる反応:強い批判と「成り行きを見守る」
政権側と同じ共和党内からも批判が出ています。
- トム・ティリス上院議員(上院銀行委員会)は、捜査を「大きな間違い」とし、「法的問題が完全に解決するまで」、次期FRB人事を含むトランプ氏の指名に反対する意向を示しました。
- 同委員会のケビン・クレイマー上院議員も批判に加わりました。
- リサ・マーカウスキー上院議員はXで、FRBが独立性を失えば市場と経済の安定が損なわれるとして、「見て見ぬふりをするには代償が大きすぎる」と投稿しました。
一方で、下院議長のマイク・ジョンソン氏は、手続きが「進むのを見守る」と述べ、防御に積極的ではない姿勢も伝えられています。
政権内部の懸念も:市場への影響を警戒
Axiosは、スコット・ベッセント財務長官が週末、捜査についてトランプ氏に「厄介な状況を作った(made a mess)」と伝え、金融市場に悪影響になり得ると警告した、と関係筋2人の話として報じました。
トランプ氏自身はNBC Newsに対し、司法省の動きは「知らない」と述べた一方で、パウエル氏についてはFRB運営や建物改修をめぐって批判的な発言をしています。
今後の焦点:任期、最高裁、そして「独立性」の見え方
パウエル氏は、トランプ氏により2017年末に指名され、2018年初めに上院で承認されました。報道内容によれば、FRB議長としての任期は2026年5月に満了する予定ですが、FRB理事としては2028年までワシントンの理事会にとどまる義務はないとされています。今回の動きが、パウエル氏の去就(任期後の対応)をより複雑にする可能性がある、という見立てもあります。
また、刑事訴追の示唆が表面化したのは、政権が別のFRB高官であるリサ・クック理事の解任を試みた件が、約2週間後に最高裁で争われる見通しの直前でした。金融政策の意思決定と政治の距離感が、制度だけでなく「市場の見え方」でも問われる局面に入っています。
ポイントを3行で
- トランプ政権がFRBパウエル議長に刑事捜査の動き、本人は「金利への介入の口実」と反発。
- 元FRB議長3人が連名で、独立性を損なう「前例のない試み」と警鐘。
- 長期金利上昇など市場の反応も出ており、政治・司法・金融政策の境界が焦点に。
Reference(s):
cgtn.com








