国際ニュース 米中AI協力を強化せよ 北京フォーラムで専門家が警鐘
人工知能(AI)をめぐる競争が激しくなるなか、昨年北京大学で開かれた北京フォーラム2024で、米国は中国とのAI協力を強化すべきだという専門家の声が相次ぎました。この国際ニュースは、AIリスクと安全性に関する対話をどう維持し、医療などの恩恵を世界で広く共有するかという課題を浮き彫りにしています。
本記事では、日本語ニュースとして、その議論のポイントを分かりやすく整理します。
北京フォーラム2024で浮かび上がった協力の必要性
北京フォーラム2024は、北京大学で開催される国際的な学術イベントで、昨年のテーマのひとつは「デジタル化と知識人:AI時代における学際的収斂」でした。3日間の会期には、30以上の国と地域から500人を超える専門家や研究者が参加し、AIがもたらす変化と国際協力の在り方が議論されました。
パネルディスカッションでは、中国と米国が世界を代表するAI大国として、対立ではなく協働の枠組みをどう築くかが焦点となりました。
完全なデカップリングは効率とイノベーションの損失
スタンフォード大学の研究者グラハム・ウェブスター氏は、中国と米国はいずれも高度なAI研究所や大規模言語モデルを有し、国際的に突出した存在だと指摘しました。そのうえで、両国がAI分野で完全に分断される「デカップリング」が進めば、世界全体にとって大きなマイナスになると警告しました。
ウェブスター氏は、デカップリングが進めば、研究開発の効率低下や技術革新の停滞につながるとし、政府間によるAIリスク・安全性の対話を維持しつつ、多様な国や地域の研究者や、市民社会とも協力していくべきだと訴えました。
また、医療分野の進歩などAIがもたらす恩恵は、中国や米国だけでなく、世界の人々に広く行き渡るように設計されるべきだと強調しました。
中国のダイナミックなAIエコシステムに世界が注目
イェール大学ポール・ツァイ・チャイナ・センターの研究員カーマン・ルセロ氏は、中国の急速なAI発展に対する国際社会の関心が高まっていると説明しました。多様な企業や研究機関がひしめく中国のAIエコシステムからは、技術開発だけでなく、規制や倫理の面でも多くの示唆が得られるといいます。
ルセロ氏は、米国と中国の間で課題を乗り越え、相互理解を深めるためには、政府間対話に加えて、人と人との交流が不可欠だと指摘しました。研究者、学生、技術者の往来や共同研究など、草の根のレベルでの接点が信頼醸成の基盤になるという見方です。
制限と対話が並行する米中AI関係
ここ数年、米国政府はAIを含む先端技術分野で、中国との協力や輸出を制限する措置を講じてきました。一方で、対立のリスクを抑えるための対話も進められています。
これまでに、スイスのジュネーブでは中国と米国による初の政府間AI会合が開催され、AI技術のリスクやグローバル・ガバナンス(国際的なルールづくり)など、双方の共通関心事項が話し合われました。その後、北京では第2回の米中トラック1.5対話(政府関係者と有識者が参加する対話)が開かれ、AI分野での協力を深める方向性を確認しました。
北京大学国際関係学院の雷少華(レイ・シャオホア)准教授は、技術格差が経済の分断を生まないようにすることが重要だと訴えました。そのための鍵として、大学、シンクタンク、政府系研究機関、AI企業などが連携する「ボトムアップ型」の協力を提案しています。
こうした草の根の協力が、米中関係全体を安定させるセーフティーネットとして機能し得るというのが雷氏の見立てです。
なぜ米中AI協力が世界の個人にも関係するのか
AIは、医療、教育、気候変動対策、金融など、私たちの日常生活や仕事のあり方を大きく変えつつあります。中国と米国のような主要国が協力するか対立するかによって、その変化の速度や方向性も大きく変わってきます。
もし協力よりも分断が進めば、
- AI研究の重複投資が増え、イノベーションのスピードが落ちる
- 共通のルール作りが難しくなり、安全性や倫理に関する基準がバラバラになる
- 医療AIや気候テックなど、世界全体が恩恵を受ける分野への応用が遅れる
といったリスクが指摘されています。
一方で、競争の健全な部分は残しつつ、AIの安全性や国際ルールづくり、医療・環境への応用など、人類共通の課題では協力する余地も大きいといえます。北京フォーラムで示されたメッセージは、米中両国だけでなく、AIの未来を見つめる世界の人々に向けた問いかけでもあります。
SNSで議論が交わされる今だからこそ、米中AI協力のあり方を、自分ごととして考えてみるタイミングに来ているのかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








