中国が科学技術普及法を初改正へ 科学リテラシー向上をねらう動き
中国の全国人民代表大会常務委員会で、科学技術普及法の改正案が初めて審議されています。2002年制定の基本法を見直し、国民の科学リテラシー向上とイノベーション強化をめざす動きです。本記事では、この国際ニュースのポイントを日本語で整理し、背景と狙いを解説します。
中国が科学技術普及法の改正案を審議
科学技術普及法は、科学技術に関する知識を社会全体に広めるための基本法で、2002年に制定されました。今回の改正案は制定以来初の本格的な見直しで、月曜日に全国人民代表大会常務委員会に提出され、第一回審議に入っています。
改正のねらいは、科学と技術に関する知識への公共のアクセスを高め、より多くの人が科学的なものの見方を身につけられるようにすることです。中国本土が制度面を更新することで、これまでの取り組みを一段と強化しようとしているといえます。
背景にある数字 科学リテラシーとイノベーション指標
中国本土では、この20年あまりで科学リテラシーが大きく伸びています。第13回中国公民科学素養調査によると、科学的な理解力が高いとされる市民の割合は、2003年の1.98パーセントから、2023年には14.14パーセントへと増加しました。
世界知的所有権機関が公表する2024年グローバル・イノベーション・インデックスでも、中国本土の順位は2012年の34位から2024年には11位へと大きく上昇しています。科学技術の普及と、特許や新産業の創出に代表されるイノベーションとの間に、好循環が生まれつつあることが数字から見えてきます。
それでも残る課題 尹弘軍部長が指摘
一方で、科学技術の普及には依然として課題も残っています。科学技術部の尹弘軍部長は、科学普及の重要性に対する社会全体の認識が十分ではないこと、高品質な科学コンテンツがまだ不足していること、インフラや人材が十分に整備されていないことなどを課題として挙げています。
こうした課題に対応し、新しい時代のニーズに合わせて制度を整えるために、法律の改正が必要だと強調しています。今回の改正案は、現状を自覚したうえで、より体系的な枠組みに進化させようとする試みといえます。
改正案のポイント 三つの視点で整理
公表されている情報から、科学技術普及法改正案の特徴を三つの視点で整理してみます。
1 条文と章構成の大幅拡充
現行法は6章34条で構成されていますが、改正案では8章60条へと大幅に拡充されます。特に、科学技術普及の活動と人材に関する二つの章が新たに設けられ、現場で科学を伝える取り組みと、それを担う人々を支えるための枠組みが前面に出てきました。
これにより、単に理念を示すだけでなく、実際にどのような活動を行い、どのように人材を育成するのかについて、より具体的な方向性が示されることになります。
2 学校と教育現場の役割強化
改正案は、学校や教育機関の責任をはっきりさせ、科学技術普及の重要な担い手として位置づけています。授業だけでなく、課外活動や地域との連携を通じて、子どもや若者が科学に触れる機会を増やすことが重視されています。
初等・中等教育の段階から科学的なものの見方を育てることは、長期的に見ればイノベーション人材の裾野を広げることにつながります。教育現場への期待が法律のレベルで示されることで、学校の取り組みにも後押しとなりそうです。
3 科学普及を担う人材への支援
改正案では、新たに設けられる章を通じて、科学技術普及に関わる人材への支援を強調しています。ここには、科学館や博物館の職員、研究者、教育者、メディア関係者など、科学を社会に伝える幅広い担い手が含まれます。
具体的な支援策の中身は、これからの審議のなかでさらに詰められていきますが、科学普及を専門的な活動として位置づけ、その活動環境や評価の在り方を整えていくことが、今後の議論の焦点になっていきそうです。
日本や世界にとっての意味
国際ニュースとしてこの動きを見ると、いくつかの示唆が見えてきます。科学技術分野での競争は、研究費や論文数だけでなく、社会全体の科学リテラシーや、新しい技術を理解し受け入れる力にも左右されるようになっています。
中国本土が科学技術普及法というかたちで制度面を強化しようとしていることは、アジアの他の国や地域にとっても参考となる動きです。日本でも、科学館やテレビ、オンラインメディアなどが科学コミュニケーションを担っていますが、長期的な視点から人材やインフラをどう支えていくかという問いは共通しています。
2025年現在、生成AIやバイオテクノロジー、気候変動対策など、日常生活と密接に関わる科学技術が次々に登場しています。こうしたなかで、誰もが基礎的な科学リテラシーを持ち、政策や技術の選択を自分の頭で考えられる社会をどうつくるのか。科学技術普及法の改正に向けた今回の動きは、その問いをあらためて私たちに投げかけています。
Reference(s):
China proposes law revision on science and technology popularization
cgtn.com








