キップ・ソーン氏が語る、中国本土の重力波観測計画と宇宙研究の転換点 video poster
2017年のノーベル物理学賞受賞者キップ・ソーン氏が、中国南西部の成都で開かれた科学と芸術のサロンで、中国本土が計画する2つの宇宙重力波検出器について「私たちに計り知れない洞察をもたらす」と高く評価しました。重力波観測は、この先の宇宙研究の「次の転換点」になりうると、氏は見ています。
ノーベル賞物理学者が語る「次の転換点」
ソーン氏は、ブラックホールや中性子星の研究で知られ、2017年に重力波の初検出に貢献したことでノーベル賞を受賞しました。そんな氏がいま注目しているのが、「次の転換点」としての新しい重力波観測です。
重力波とは、巨大な天体がぶつかり合うときなどに生じる、時空のさざ波のような現象です。光では見えない現象をとらえる「耳」のような役割を果たし、宇宙のこれまで見えなかった側面を明らかにしてきました。
中国本土の宇宙重力波検出器に寄せられる期待
今回ソーン氏が言及したのは、中国本土が計画している2つの宇宙空間に配置される重力波検出器です。詳細な仕様や打ち上げ時期は今後明らかになっていきますが、氏はこれらの計画が宇宙の理解を大きく前進させると見ています。
地上の観測施設と比べ、宇宙空間にある検出器には次のような利点があります。
- 地球の揺れや雑音の影響を受けにくく、より微弱な重力波をとらえやすい
- 地上からは観測しにくい、周波数の低い重力波を観測できる
- 複数の検出器を組み合わせることで、宇宙のさまざまな方向から信号を測定できる
ソーン氏が「計り知れない洞察」と表現したのは、こうした宇宙ベースの観測が、初期宇宙の姿や超大質量ブラックホールの成り立ちなど、まだほとんど分かっていない領域に光を当てうるからだと考えられます。
重力波観測が開く新しい宇宙像
重力波天文学は、まだ誕生して間もない分野です。しかし短期間のうちに、ブラックホール同士の合体や中性子星の衝突など、教科書を書き換えるような発見を次々にもたらしてきました。
今後、宇宙空間の検出器が本格的に動き出せば、次のようなテーマに、これまでとは別の角度から迫ることが期待されています。
- ビッグバン直後の宇宙のゆらぎ
- 銀河中心に潜む巨大ブラックホールの成長
- 未知の物理法則の手がかり
国際協力の中で高まる中国本土の存在感
重力波観測は、もともと国際協力で発展してきた分野です。観測装置が世界のさまざまな場所や軌道に分散するほど、得られるデータは豊かになり、解析の精度も高まります。
中国本土の2つの計画が実現すれば、既存の観測網に新たな「目」と「耳」が加わることになります。ソーン氏の発言は、そうした国際的な観測体制の広がりに対する期待の表れともいえます。
私たちの生活と「宇宙の転換点」
重力波そのものは、私たちの日常生活からは遠い話に聞こえるかもしれません。しかし、かつては「純粋な宇宙研究」だと思われていた技術が、いまでは通信や測位などのインフラとして欠かせない存在になっています。
また、宇宙観の変化は、哲学や芸術、ポップカルチャーにも大きな影響を与えてきました。重力波によって広がる新しい宇宙像も、長い時間軸で見れば社会や文化のあり方に静かに波紋を広げていくはずです。
重力波観測の「次の転換点」はどこから訪れるのか。中国本土の宇宙重力波検出器計画に寄せられたキップ・ソーン氏の期待は、これからの10年で宇宙研究が大きく動く可能性を示しています。今後の進展を、ニュースとして追いかけるだけでなく、自分なりの問いを持って見ていきたいテーマです。
Reference(s):
Kip Thorne: China's gravitational wave detectors set for key discovery
cgtn.com








