北京で第1回世界クラシックス会議 古典文明が現代に問いかけるもの
昨年2024年11月、北京で第1回「世界クラシックス会議」が開かれました。世界30以上の国と地域から485人の研究者が集まり、古典文明を手がかりに、現代の課題と人類の未来を考える場となりました。
北京発の新たな国際ニュース:世界クラシックス会議とは
この第1回世界クラシックス会議は、北京で11月6日から8日まで開催されました。古典研究(クラシックス)に携わる専門家が一堂に会する国際会議で、国際ニュースとしても注目されました。
会議には、30以上の国と地域から合計485人の学者が参加し、そのうち186人が海外からの参加者でした。規模としても、本格的な国際学術プラットフォームが新たに立ち上がった形です。
主催は以下の機関です。
- 中国社会科学院
- 中国教育部(教育省に相当)
- 中国文化・観光部
- ギリシャ文化省
- アテネ・アカデミー
中国とギリシャという、東西それぞれの古典文明を代表する国の機関が共同で主催している点が、この会議の性格をよく表しています。
アテネに「中国古典文明研究所」設立 中・ギリシャ連携の新拠点
今回の会議で特に大きなトピックとなったのが、アテネに設立される「中国古典文明研究所」の発表です。これは、中国とギリシャの学術・文化交流の新たな拠点となることを目指した研究機関です。
会議では、中国社会科学院の高翔院長と、ギリシャ文化相リナ・メンドーニ氏が、研究所の設立に関する文書を交換し、正式な設立が発表されました。この動きは、中国とギリシャの古典文明研究を結びつける、象徴的な一歩といえます。
古代ギリシャの哲学・文学・芸術と、中国の古典思想・歴史・文献研究をつなぎ合わせることで、
- 異なる文明の共通点と相違点を浮かび上がらせる
- 長期的な研究交流や共同プロジェクトを進める
- 学生や若手研究者の往来を促し、人材ネットワークを広げる
といった効果が期待されています。
世界各地の学者が語る「古典」と「対話」
開幕式では、ギリシャ、ドイツ、ロシア、イギリス、アメリカ、中国などから参加した著名な学者が、それぞれの立場から古典研究の意義について講演しました。
テーマは、古代哲学や歴史、文学だけでなく、古典テキストの解釈方法、考古学の成果、文明間の比較研究など多岐にわたりました。これにより、欧米、ユーラシア、中国など、異なる学術伝統が対話する場が生まれています。
一方向の発信ではなく、複数の文明・地域が対等に議論に参加することは、現代の国際社会における知的交流のあり方を示す試みともいえます。
現地視察と展示で伝える「中国文明の開放性」
会議の前には、海外からの参加者が山東省、河南省、四川省を訪問しました。現地では、歴史に関わるさまざまな場所を巡り、中国文明の開放性や包容力に触れる機会が設けられました。
また、会議に合わせて次のような特別展示も開かれました。
- 考古学や古典研究の成果を紹介する展示
- 大学などで行われている古典研究や教育活動の紹介
これにより、会議場での議論だけでなく、視覚的・体験的な形で古典文明の姿が示されたことになります。会議期間中には、複数の分科会(サブフォーラム)も開催され、参加者同士の専門的な議論が続けられました。
テーマは「古典文明と現代世界」 何を目指す会議だったのか
第1回世界クラシックス会議のテーマは『古典文明と現代世界』でした。このキーワードに、主催者側の問題意識が集約されています。
会議が掲げた目的は、主に次のようなものです。
- 人類の思想の源流をたどり、古典文明に宿る知恵を整理する
- 歴史の経験から、現代の世界が抱える課題に向き合う視点を探る
- 文明間の交流を支える学術基盤を強化する
- 人類全体の発展に資するアイデアを共有し、「人類共同の未来」を模索する
気候変動、格差、紛争、デジタル技術の急速な進展など、今日の国際社会が直面する課題は複雑です。その中で、短期的な解決策ではなく、長い時間軸で人類の知恵を見直そうとする姿勢が、この会議の背景にあります。
なぜ今、「クラシックス」が注目されるのか
デジタル技術とAIが急速に進む2020年代に、なぜ古典文明やクラシックスが話題になるのでしょうか。今回の会議からは、次のようなポイントが読み取れます。
1. 「長い時間軸」で世界を見るために
SNSやニュースのタイムラインは、どうしても「いま起きていること」に関心を集中させます。その一方で、古典文明の研究は数百年、数千年という時間の広がりの中で人類をとらえます。この対照が、現代人の視野を広げるヒントになります。
2. 「多様な文明」の視点を組み合わせる
古典研究というと、古代ギリシャ・ローマをイメージしがちですが、今回の会議には中国をはじめ、さまざまな地域の古典文明が含まれています。ある文明だけを基準にするのではなく、複数の文明を並べて比較し、互いに学び合う視点が重視されています。
3. 政治や経済を超えた「ソフトなつながり」
国際関係が不透明さを増すなかで、文化や学術を通じた交流は、政治や経済の対立を超えて続けやすい側面があります。古典文明を題材とする対話は、対立ではなく「共通のテーマ」を共有する場になりやすいという特徴があります。
今回の会議から見える、これからの論点
忙しい読者向けに、今回の世界クラシックス会議から見えてくる論点を整理すると、次のようになります。
- 国際協力の新しい形:中国とギリシャが共同で研究所を設立し、古典文明を軸にした長期的な協力枠組みを構築しようとしている。
- 学術と社会課題の接続:古典研究を、単に過去を知る学問ではなく、現代の問題解決に役立つ知恵の源泉として位置づけている。
- 東西の知の対話:ギリシャや欧州、ロシア、アメリカ、中国など、多様な学術伝統のあいだで対話を深める試みが進んでいる。
- 現地体験の重視:中国各地の訪問や展示を通じて、机上の議論だけでなく、現場に根ざした理解を深めようとしている。
SNSでどう語り合う? 読者への問いかけ
newstomo.com の読者の多くは、日々スマートフォンで国際ニュースを追いながら、自分なりの視点や意見をアップデートしている方たちです。今回の世界クラシックス会議をきっかけに、例えば次のような問いを考えてみることもできます。
- 自分の仕事や研究、日常生活に、古典からの視点を取り入れるとしたら何ができるか
- 日本の古典や東アジアの伝統は、世界の古典文明の議論の中でどう位置づけられるのか
- 国際ニュースで見聞きする対立や分断を、より長い歴史の文脈で見ると何が変わるのか
昨年の第1回世界クラシックス会議は、古典文明をめぐる国際的な対話のスタートラインにすぎません。今後、アテネの研究所や次回以降の会議がどのような成果を生み出していくのか、引き続き注目していきたいテーマです。
Reference(s):
Global scholars gather in Beijing for 1st World Conference of Classics
cgtn.com








